35話「致命的な、あまりに致命的な」
「ハル、少し今良いかしら?」
ユウとハル、ソラとツバキがそれぞれ作業に入ってから3時間後、両手いっぱいに配線用のコードを抱えていたハルは不意にツバキに呼び止められた。
「ああ、今のところも一段落したし、大丈夫だよ」
ろくに明かりもなく、暗い中脚立に腰掛けてという危険極まりない体勢で作業をしていたハルは、足元に気をつけながら脚立を降り、ツバキに向き直り改めて用件を問うた。
「それで、何か用かな?」
「ソラが呼んでるわ、何でも相談したい事が有るんですって」
「なるほど、じゃあユウも呼んで、、、」
「ユウならソラが呼びに行っているわ、急ぎの用なようだから早く行きましょう」
「なるほど、ちょっと待ってくれ」
魔術で脚立を片付け、「じゃあ行こうか」と言うハルに軽く頷きかけてツバキがハルの前を歩き出す、先が見通せないほど暗く、細長い廊下にはハルとツバキ、2人の靴音だけがコツコツと木霊している、その情景は、洞窟を思い起こさせた。
「それにしても、色々入り組んでるね」
「これでもまだ必要最低限すら賄えていないそうよ、このまま全部完成したら最早迷路ね」
「違いない」
苦笑しながらもハルはそれを現実的な問題として考えていた、最悪艦内各所に艦内地図を設ける必要に迫られる事態になるかもしれない、しかし、それでは緊急時にはあまりにも心許ない、緊急時には当該箇所に長くても5分以内には着いていなくては。
「ソラ、ハルを連れてきたわ」
「おー、お疲れさん」
「そっちこそ、で?わざわざ呼んだ理由は?」
「あー、そうだな、発電機は完成したんだよ」
「私達で試験運転もすませたわ」ツバキがそう付け加える。
「それは良かった、少なくとも性能は保証されてそうだね」
「あー、うん、それはいいんだが、、、」
「どうしたの、なんか含みのある言い方だけど」そうユウが突っ込むと、ソラは困ったように用件の本題を口にした。
「その、、、発電機とかエンジンとか、組み立てた後どうやって艦内に入れようかと思いまして、、、」
「「「あっ、、、」」」
巨大な鋼鉄の塊から削り出すと言う特性上、扉や搬入口などは最初から作っておかねばならないということを、誰もが失念していたのだった。
「どうにかお腹を切り開いて扉を設置したけど、ソラの精神的ダメージは相当の物のようね」
コーヒーをすすりながらツバキが言う、そんな彼女の隣には机に突っ伏し、まさに轟沈といった様相のソラがいる。
「ほら、ソラ、そんなに気を落とすなよ」
「これが気を落とさずにいれるか!?少し考えれば気づいたことを気づかなかった挙げ句、大事な大事な艦体に傷をつけたんだぞ!?」
「はいはい、ステイステイ」
「とりあえず今日これ以上の作業は無理そうだね、ソラこんなんだし」
「配線系は8割終了、残りはソラが通路を完成させないと出来ないから、なるたけ早めに回復してくれよ?」
ハルがそう言うと、テーブルに顔だけ覗かせていたソラが涙目で「うー」と言いながらも頷いた。




