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残響 廻る糸車編  作者: 馬鈴薯
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33話「建造開始」

その日、4人の雰囲気は心なしか浮ついていた、ソラは目に見えてウキウキしていたし、ツバキは不安そうながらもどこか浮ついているし、ハルは普段通りのようだが足取りは軽く、ユウはいつも通り無表情ながらも少々興奮気味のようだった、設計の最終的な決定から約半年、彼らは建造に適した地を求め瀬戸内海に浮かぶ無人島に拠点を移していた、そして迎えたこの日、ついに小さいながらも起工式が執り行われようとしていた。

「おい、みんな準備できてるか?料理は?酒は?」

「ソラ、それさっきも確認してた」 

「そっ、そうか、、、」

「まあユウ、みんな興奮してるんだ、しょうがないよ、、、じゃあツバキ、そろそろお願いできるかな?」

「わっ、わかったわ、少し不安だけど、、、」

「ツバキなら大丈夫だ!」

ソラがツバキの肩を叩く、目を閉じていた彼女はやがて、覚悟を決めたように深呼吸をした。

「じゃあ、、、いくわよ」

誰もが息をのんだ、ツバキの周りに光の粒子が溢れ、まるで大量のホタルが飛び回っているかのような幻想的な光景を作り出していた、やがて光の粒子はひとところに集まりはじめ、だんだんと巨大な立方体を形成しだした。

「うわぁ、、、」

「、、、」

「すっごい、、、」

光が収まったとき、彼らの目の前には見上げるほど大きな鋼鉄の塊が鎮座していた、それこそ見たほどもないほど巨大で、その威圧感だけでクラクラするほどの大きさだ。

「ほっ、本当に出せちゃった、、、」

「すげえじゃん!ツバキ!これで建造のための第一関門クリアだ!」

ソラがツバキの手をとりぴょんぴょんと飛び回っている、当のツバキはまだ信じられないのか、放心状態であった。

「じゃあソラ、次は君の出番だよ」

「もちろんだ!任せとけ!」

「あ、でもサポートお願いな」そういいながらも塊の上の方に登り始めたソラに「わかってる」と応えながらユウとハルも準備を始めていた。

「ツバキはとりあえず休んでてくれ、疲れてるだろう?」

「うん、申し訳ないけどそうさせてもらうわ、こんなに一気に魔力を消費したのは初めてだもの」

少しぐったりとしているツバキに頷きかけながら、ハルは早くもユウの後を追っていた、彼も彼で少し興奮していたのだ。

「じゃあソラ、まず最初に船体の切り出しだからね、こっちも魔術とか工具とか使いながら始めるから」

「おうよ!」

「じゃあ、、、せぇのぉ!」

ハルの合図に合わせて3人は一斉に動き出した。


「じゃあ、戦艦の起工を祝ってカンパーイ!」

ソラの音頭に3人が続く、住居の横には今日切り出しを始めた巨大な鋼鉄の固まりが鎮座している、まだ半分も終わっていないが、通常魔術組は早くも専門魔術と通常魔術の性能の差を痛感していた。

「まぁ、そんなに気を落とすなって、通常魔術でもあんなにできれば上出来だ」

そんな2人の雰囲気を察したのか、すかさずソラがフォローに入る、ソラの担当した上面は半分近く終わっているのに、下面は三分の一も終わっていないのだから嫌でも沈んでしまうのだ、しかし、彼らは同じことでいつまでもクヨクヨするような人間ではなかった。

「そうだ、カミナルモノ由来のエンジンの図面が届いたよ」

沈んでしまっている気持ちを切り替えようとしているのか、ハルがおもむろに一枚の図面を取り出す。

「どれどれ、ちょいと拝見、、、」

ツバキ、ユウ、ソラが覗き込む、図面は複雑であったが理解できない訳ではなかった、そしてその図面のほぼ真ん中に位置しているのは。

「コアブロック、、、」

「やっぱり必要かぁ~」

ソラがげんなりとした表情でつぶやく、コアブロックが必要ということはカミナルモノを生かさず、殺さずの状態にまで還元しなくてはならない。

「まぁ、今はそのこと考えなくてもいいんじゃないかしら?まずは船体の切り出しを終えて、内装系もやって、電装系統もおわらせないと何にもならないんだから」

「先は長いわよ」そう言うツバキに若干遠い目をする、確かに先は長い、まずは船体を切り出さなくては、艦内の配置は決まってるし、電装系統も既存の艦にアレンジを加えたので信用もできる、しかし、それが一朝一夕にしてなるかと問われればそれは否なのだ。

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