20話「基地攻撃」
「オールドデリー級戦艦が4隻、最新鋭のニューデリー級戦艦が2隻、おまけに大型攻撃空母ムンバイまで着いてる、厄介な相手だな」
全天モニタに映る映像をさらに双眼鏡で拡大して見ていたハルがため息をつく、ここはヒマラヤ山脈の真っ只中、シヴァ軍マナリ前線基地の近くだった。
「さっきのヤツらもここから来たのか?」
「多分ね、ほらあそこ」
恐らく艦級ごとに並べられてるであろう桟橋の一角を指差す。
「あれは改マイソール級巡洋艦だ、設計見直し後初の艦の名をとってスリームクツァルサーヒブ級と呼ばれる事もある」
「ほーん?で、厄介な相手が動き出したけど」
攻撃能力はシヴァ軍最強だが、速度とコストが悪すぎるという理由で1隻しか建造されなかったという大型攻撃空母ムンバイがその巨体を動かし始め、それに習うように周りの戦艦たちが動き始める。
「やっぱり気付かれてたか、、、」
「逆に気付かれてないと思ってたのか」
今にも離陸しようとしているムンバイを横目にチャルカが呆れたようにそう言った。
「!?ミライが!?」
「はっ、本基地西方20キロ地点で停止、以後動き有りません」
「今から約2時間前、対応に向かっていたドルネス・ハウフマン大佐座乗の巡洋艦マイソールと連絡が途絶しました、ミライがここにいるということは恐らく、、、」
「、、、なるほど、ハウフマンは失敗したという訳か」
「、、、」
「わかった、指令室に向かう」
そう言ってマナリ前線基地司令官、インドラ・デヴィ大将は飲みかけのコーヒーのカップを乱暴にソーサーに置き、司令官室を後にした。
「状況を報告せよ!」
「ミライは本基地西方20キロ地点で停止、その後艦上砲台含めて動き有りません!」
「マイソールの撃沈を確認!生存者等に関しては現在調査中!」
「敵の損害は?」
「艦後部、恐らくエンジン付近に破孔が確認されます、恐らく火災も起きていたようですが現在は消し止められています」
「ハウフマン大佐は少なくとも損害を与えられたようですな」
参謀の1人がデヴィ大将に話しかける、それをギロリと睨みながら不機嫌そうに言い放つ。
「君は武装の1つも潰せていないのに損害というのかね?」
「しかし、、、」
「ハウフマンは失敗した、それ故に死んだ、ただそれだけだ」
「、、、はっ」
「全艦隊を出撃させろ!出し惜しみはなしだ!ムンバイを最優先に順次離陸、ここでミライを沈める!」
「どーすんだ?さっきは2隻だったからどうにか凌げたが、あの数の戦艦に攻撃されたらひとたまりも無いぞ」
「うーん」
「悩んでてもしょうがねーだろ、トンギに行くにはどうやったってここを通らなきゃなんねーんだから」
「、、、よし」
「お、きめたか」
視線をハルの方に向ける、何かを決意したような顔をしてチャルカに向き直ってこういった。
「チャルカ、魔動破壊弾を使用しよう」
「は?」
素っ頓狂な声がでる、それもそのはず、魔動破壊弾は理論上通常弾より破壊力は高いものの、まだ試作段階であり、一度も試射すらしたことが無いのだ。
「おっ、おまっ、本気か?試射すらしてないんだぞ!?」
「だから試射を兼ねれば良いじゃないか」
「そもそもそんなに破壊力強くなかったらどうするつもりなんだ!?」
「その時は尻尾を巻いて逃げ出すさ」
肩をすくめてそう言うハルにため息をつく。
「お前なぁ、、、」
「少なくとも時間稼ぎ位にはなるだろう、装填用回路開け!艦底部砲塔7基に魔動破壊弾を装填!」
ミライの底部に装備されている7基の主砲が動き、基地の方を向く。
「手動照準だからこのぐらいか、、、?」
「うん、それぐらいならオーケー」
「魔動破壊弾装填完了、、、本当に撃つんだな」
「もちろん、ほらムンバイがもう飛び立ち始めてる」
「はぁ、、、撃つぞ」
一呼吸置いて引き金を引く、凄まじい閃光が走り、全天モニタが一瞬ホワイトアウトする、その間にミライを発した14本の青白い光の柱はマナリ前線基地の建物に、地面に、今飛び立たんとする艦に突き刺さった、その瞬間シヴァの国土地理院はマナリ周辺の地図を書き直すという新たな職責を負ったのだった。




