15話「バケモノの定義」
「やってくれたなこの野郎」
そこには見たことも無いほど苦虫を噛み潰したような顔をしたハルがいた。
「なっ、ハル?」
今まで感じたことの無いほどの殺気を自身の肩を抱く男から感じながら、チャルカの頭の中では情報が錯綜したまま完結しなかった。
「へぇー成る程」
口笛を吹いて面白そうに謎の男が口を開く。
「成る程、成る程、面白いねぇ~「大陥没」ン時の生き残り、不老不死ってのはアンタの事か」
「面白いものか、とんでもないことをしでかしてくれて」
「だがどうせいつかバレることだろ?」
「まだその時では無かった」
もう話にもついて行けない、「大陥没」の時の生き残り?不老不死?この2人は何を言っているのか?そもそもハルの正体は何なのか?左腕が帯のように変化してるのはアレクから聞いたハルの特異魔術だとしても、確実に頭部を破壊されていたのに何故生きている?
「ハ、、、ハル?お前は、、、」
「チャルカは少し黙っててくれ」
「へぇーアンタ、ハルって言うんだ」
「もう分かってた事だろう、白々しい」
「そんな事言わないでくれよう、悲しいなぁ、、、」
わざとらしくシクシクと泣き真似をする男に首元に伸ばした帯状の左腕をズイッと近付ける、男は首を仰け反らせ、驚いたような顔をしている。
「お前の茶番に付き合ってる暇は無い、今すぐ我々の視界から失せるか、ここでその首を落とすか、どちらかを選べ」
「おー怖い、首を落とすなんてそんな物騒なこと言わないでくれよう」
「何も言わずに人の頭部を木っ端微塵にした君がそれをいうのか?それに二度もいわせるな、失せるか、死ぬか、それともここで僕と戦うかね?君に勝機があるとは思えんが」
目の前の男は少し逡巡した後ため息をついて肩をすくめた。
「ここはおとなしく引き下がっておこう、どうやったって勝てそうに無いしね」
「賢明な判断だ」
クルリと男が方向転換をする。
「あ、そうだ」上半身だけこちらに振り向かせながら男がチャルカに話しかけてくる。
「チャルカ君、俺と君の交渉は決裂した、だけど俺の名前だけは覚えておいてくれよ?それが君の敵の名前なんだから」
指をこちらに向ける、チャルカはいつの間にか名刺のような物を握っていた。
「じゃねー」忽然と男が消える、チャルカの握る紙には血のように赤いインクでただ「Gebet」とだけ書かれていた。
気まずい沈黙が流れる、今夜、チャルカはその年不相応の事実が大量に明かされた、そしてそれを全て処理しろというのは15の頭脳にはあまりにも酷な話しだった。
「な、なぁハル「すまない」へ?」
「君を騙すつもりは無かったんだ」
「騙すって、、、」
「僕は君と初めて会ったとき、確かに自分は人間だと言った、しかし、実態は今みてもらったとおり、頭を失おうが、腕が落ちようが死ぬことは無い、呪われた体を持つバケモノなんだよ、僕は」
「ハル、、、」
うつむいた彼の表情はよく見えず、声に感情はこもっていなかった。
「幻滅しただろう?」
「ハル、俺は」
「当たり前さ、半年も旅を共にしてきた相手が実は自分をだましてて、しかもそれが親を殺したバケモノと同じような物なんてね」
「ハル、」
「もう一層軽蔑するだろう?」
「ハ」
「本当にすまない、もしいやなら今からでもリオの所に、、、!?」
いきなりチャルカが鉄拳を繰り出してきた、体のバランスが崩れる。
「人の話を聞け!俺はお前がバケモノなんて思わない!お前は確かに不老不死かもしれねーけどよ!だけど色んな人救ってきてんだろ!俺も含めて!」
ハルは余程驚いたのか唖然としいる、そんな事には構わず話を進めていく。
「それに、俺はお前が相棒で良かったと思ってる、お前のおかげでアレクやジェシカ、それにミライにもあえた」
「チャルカ、、、ありがとう」
「構わねえよ、それより聞かせてくれ、お前知ってるんだろ?」
「何を?」
「「大陥没」のこと、お前の過去の話だ、その日、東京?で何が有ったのか」
少しの逡巡の後「わかった」とハルが言い、そしてゆっくりと語り出した、それは彼が持つ150余年の歴史だった。




