10話「敵」
「じゃあな、ハル、チャルカ、死んでくれるなよ」
「そっちこそ、次会うときは葬式なんてイヤだからね」
「なに言ってやがる、俺が死ぬと思ってんのか?」
「まさか」
言葉を掛け合いながらクスクスと笑い合う2人、それを見るだけでもお互いを信用していると言うことがよくわかる。
「じゃあチャルカ、俺たちはそろそろ行くから」
「ああ、アレク、色々世話になったな」
「いや、俺も楽しかったよ」そう言いながらアレクはもうヴィレの方に向かっていた。
「ちょっと待ってー!」
「ジェシカ!それにリリーも!」
「やりたいことが一段落ついたから見送りに来たの、それとアレクとチャルカにこれを渡したくてね」
「?これは?」
「お守りだよ!私たちからの餞別」
「綺麗、、、」
「ありがとな、ジェシカ、リリー」
「良いのよ、それよりチャルカ、そろそろ初陣をやるって聞いたわ」
「ん?ああ、そうだな」
「そう、、、」
「大丈夫ですよ!チャルカだって弱くないし、ねぇ!アレク?」
いきなり話を振られたアレクは驚いたようだったが、「あぁ、チャルカは強いよ」といった。
「おーい!アレク!チャルカ!そろそろいくぞ!」
「あ、はーい!今行きます!」
「じゃあ俺らはもう行くよ」
「うん、じゃあ次はタイジョンで」
「必ずね」
4人はほほえみあって別れた。
ヴォォォォォオオオオオオオン!!!!!轟音を響かせながら二隻の戦艦が飛翔する、風と砂埃を纏った船はしばらく上昇を続け、やがて前進を始めた、それを見送るジェシカとリリーはミライとヴィレが見えなくなるまでそこに立っていた。
しばらくは並んで飛んでいたミライとヴィレだったが、段々と距離が開きはじめ、やがて地平線の向こうに消えていった、単艦となったミライは快調に砂漠の上を西へと向かっていた。
「なぁ」
「ん?」
「後どの位でつくんだ?」
「えぇと、、、あともう少し、30分以内にはつくよ」
「そうか、じゃあそろそろ下りる準備をしないとな」
窓の外に目を向ける、太陽は早くも西の地平線にかなり近づいていた、後部のシートに置いてある荷物をとる、拡張魔術をかけた小さなカバン、その中に入っているいくつかの小物、そして父から託された剣、それが彼の全財産だった。
「これがアララト山、、、」
「そう、ここに低級のカミナルモノが出るらしい」
(ここが俺の、、、)チャルカは自分の心の中が興奮によって占められていることに気付き、思わず腰に差している剣の柄を握りしめる。ミライを山の麓の森の入り口に置き、2人は山を見上げながら話していた。
「いいかい?チャルカ、戦い方はわかるね?何か危ない事が有ったら花火を打ち上げること、危険を感じたらすぐに逃げなさい」
「ああ、わかった、じゃあハル、また後で」
「ああ、くれぐれも気をつけて」
そう言い合って2人はそれぞれ別の道から森に入った。
森に入ってから10分位、チャルカは早くも不穏な気配を感じていた、耳を感覚を澄ませる、一つ一つの音を聞き分けて行く、気配の位置を探る 居た。
「っ!」
間一髪で攻撃をかわす、低級とは言えその攻撃を生身で受けたらまず助からないだろう。
(くそ!先手を取られた!)
アレクに叩き込まれた戦いの構えをとる。
「@e5n7A4uxmヨウヨウ?,-*tid54f4fy6srtftri7d5y/:[:..;l,;l,@;:!。ャ。。タラユバ!!!」
喚き声を上げながらカミナルモノが姿を表す、その姿はチャルカを襲った件のバケモノににているが、触手がついていないのがちがうところだ。
(コイツが俺の初めての敵、、、)一種の感慨深さを感じながらチャルカはその手に魔力を送っていた。
「■■■■?★▽○◎♪ヨヌタナナトガajmaagj5pgtwmt,jggTt.jpt-4-,t,pjtjT.tjgwjpjituptt-#88975?、、。?・?、、???・!!!!」
「うるっさい!黙って死ねぇ!!!!!」
魔力を込めた手を振り切る、彼の手から斬撃が繰り出され、その斬撃は正確に目の前の敵を真っ二つにした。
「かっ、、、勝ったのか、、、?俺」
目の前で崩れ落ちるカミナルモノだったナニカを見ながら呟く、こうして彼は人生初の敵を葬り去ったのだった。




