9話「宴」
「あ~疲れた~!」
街の酒場でビールを飲みながらそう叫んだジェシカに「余り飲み過ぎるなよ」とこれまたビールを片手に目の前の皿に舌なめずりをするアレクが言う(アレクとジェシカは18なので飲酒ができるらしい)。
結局各部隊の報告やら議論やらでチャルカ達が解放されたのは日が暮れてからだった、昼食をとることすらままならず、ヘトヘトの状態で目に付いた酒場になだれ込んだという次第なのだ。
「えー?なんでよ、明日は特に何も無いじゃない」不満げにそういうジェシカにアレクは「ああなるぞ」と隣のテーブルを指差した。
「だぁ~かぁ~らぁ~!俺は最初からあそこは信用できねぇと思ってたんだよ!それをわざわざ仲間に入れたのはお前だろうが!」
「なによ!ラマタ国を仲間に入れる事はあなただって同意だったじゃない!」
「そん時にお前がメリットについて熱く語ったから俺はいいと思ったんだ!だのにメリットなんぞ一つもねぇじゃん!」
「詭弁よ!」
「まぁまぁ、2人とも落ち着きなよ、お店の人にも迷惑かかるし、、、」
「うるせえ!大体ハル!お前だってなぁ!」
「そうよ!あなたこの前何をしでかしたか覚えてるの!?」
「えっ、えぇ、、、何だっけ?」
「信じられない、上級を取り逃がしたからって押し付けてきたのはあなたじゃない!」
「えぇ、、、」
空腹にアルコールを流し込み、すでに出来上がっていたリオとリリーが喧嘩を始め、近くにいたハルにまで噛みつき出していた。
「酒乱、、、」
「知り合いだと思われたくないな」
「なんだこの地獄絵図、、、」
それぞれジェシカ、アレク、チャルカの言葉である、尊敬している人間の情けない姿ほど見るに耐えない物は無い、それを今目の当たりにしている3人は2人が酔いを冷ますまで知らぬ存ぜぬを貫こうとハルの救援要請を無視し続けたのだった。
翌日、ナワリンの宿のロビーには黒いオーラを纏ったハルと、宿酔故か恐怖故か、青い顔をしたリオとリリーが向かい合って座っていた。
「おっはー、、、ってちょっと、何が有ったのよ」
何も知らないジェシカが気持ち良さそうに降りてきたがとても「いい朝だね」と言えるような状況では無かった。
「昨日の事だよ、あの後結局酔いつぶれた2人をハルさんが担いでここまできたじゃん?その他にも色々やっちゃてるしね、あの2人」
「うわぁ、、、ハルさん今にも人殺しそうな顔してんじゃん」
「それでもって目が据わってんのが一番怖いんだよなぁ」
「君たちも逃げられないよ?」
いきなりの流れ弾、(あれ?俺ら何かしましったけ?)脳細胞をフル回転させて考えるも心当たりに行き着く事は無かった。
「あの、、、ハルさん、俺ら何かしましったけ?」
「なんで昨日助けてくれなかったんだぁ!」
思わずずっこける、そんな事であんな身の毛もよだつような思いをする羽目になったのか俺らは。
「いや、だってリオさんの情けない姿なんて見たくないし、、、」
「リリーさんがリリーさんじゃなくなってるし、、、」
「単純に知り合いだと思われたくなかった」
「うんうん、なるほど、っておい!チャルカぁ!」
「なんだよ」
「単純に知り合いだと思われたくないってどうゆうことさ!?」
「そのまんまだが?」
「そんなぁ、、、ひどくない?ねぇ、リオ、リリー、、、あれ?」
アレクとジェシカの言葉がよっぽど刺さったのか、2人はダウンしていた。
2人が回復したのは三十分後の事だった。
「とりあえず、次から気をつける事、わかった?」
「「ハイ、、、」」
「ならよし」
2人はようやく回復したのだった。
「そう言えばリオさん、会合も終わりましたけどいつ出発しますか?」
「あぁ~そうだな、明日の昼には出るから準備をしといてくれ」
「わかりました」
「チャルカ、僕たちも同じタイミングで出よう、ここから西に行った所に低級のカミナルモノがよく出るらしい、君にはそこで実戦を経験してもらう」
「あぁ、わかった、魔術の練習でもしますかね」
「私たちはもう少し残るわ、ここで集めたい情報も有るしね」
「わかった、じゃあチャルカ、アレク、ナワリン最後の日だ、存分に楽しんで来なさい」
そう言ってハルはどこかに出かけて行った。




