プロローグ
なろうで小説を投稿するのは初めてです。よろしくお願いします。
それは、真夜中の野営地で起こった出来事だった。
「どうして…。なんでこんな…。」
燃え盛るキャンプ、横たわる死体。
かつて共に戦った仲間たちは、魔法で焼かれ、剣で切られ、無残な最期を遂げていた。
すでに俺も、身体のそこら中に傷を負っていて、満身創痍の状態だった。
そして、そんな状態になっても、俺は目の前で何が起こっているか信じられなかった。いや、信じたくなかった。
「あとはこいつ一人だけだ!うぉお!」
鎧を付けた兵士が切りかかってくる。しかしあまりにも攻撃が大振りだったので、バックステップでよけて、カウンターで相手の腹部を切り返す。血飛沫が待った後、兵士が倒れた。
「この野郎!よくも!」
続けて近くにいたもう一人の兵士が短刀で切りかかってくる。すぐさま体を翻し、反射神経だけで弾いて短刀を弾き落とした。そこからさらに剣を振り下ろし、兵士の首が落ちる。
一瞬で仲間を二人やられたことに驚いたのか、俺を取り囲む無数の兵士たちが、一瞬怯む。本来であれば、この隙をついてこいつらを倒すことなどわけはないのだが、疲弊した体がそれを許さなかった。俺はもう、自分から攻撃を仕掛ける体力も気力もなかった。
「流石は英雄殿。そのボロボロの体でも、我が軍の兵士ならば赤子同然か。」
そう言いながら、暗闇の中から、黒い鎧と甲冑を付けた騎士が現れる。その装備には見覚えがあった。
「その声は…!クソッ…!サルテーネか。」
騎士はゆっくりと甲冑を外した。男にしては長い肩まで掛かる髪。剃られていない無精髭。俺が知っているメロル王国黒騎士団長サルテーネだった。サルテーネは俺のことを見据え、ゆっくりと歩いてきた。俺の周りにいる兵士達が、サルテーネを見て後ろに下がっていく。
サルテーネが俺の目の前まで来て、大剣を抜いた。
「いきますぞ、勇者殿…!」
そう言いながら、サルテーネが大剣を振り下ろしてくる。俺はかろうじて反応するが、巨漢とは思えないスピードと、その巨大な力に対抗するような体力が残っているわけもなく、俺の剣は弾かれた。
もはや立っていることもままならない俺は、そのまま膝をついた。そして、サルテーネは俺を見下ろし、首に剣を突き付けた。俺は死を覚悟した。
「勇者殿、最後に、何か言い残すことはありませんか?」
俺をしっかり見据えながら、サルテーネが穏やかに言う。ここで死ぬとしても、俺には一つだけ、聞いておかなければならないことがあった。
「…一つだけ、聞きたいことがある。」
喋るのも苦しいが、何とか声を絞り出す。
「どうしてだ…?どうしてこんなことをする…?」
俺は英雄としての使命を全うした。仲間たちもだ。感謝される筋合いはあっても、殺される筋合いは全くないはずだった。ましてや人間には。そして俺の問いに対して、サルテーネは苦そうな顔で答えた。
「勿論、私とて騎士。このような卑劣なやり方は好きではない。しかし、陛下の命とあれば実行するしかあるまい。」
俺の頭にメロル王国国王の顔が浮かぶ。
「馬鹿な、国王がそんな…!? 何かの間違いじゃないのか。 国王は、俺に褒美を約束した!仲間たちもだ!」
俺は力の限り叫んだ。
それは間違いないことだった。国王は確かに言った。目標を成し遂げれば、莫大な褒美を取らせると。まさか、最初から嘘だった…?俺たちは利用されていただけだったのか…?
心の底から、沸々と怒りが湧いてきた。しかし、怒りが湧いたところで、もうすぐに死ぬというこの状況は変わるわけもなかった。
「国王陛下のお考えはわからない。私はただ命令を実行しただけだ。」
サルテーネは淡々と答える。そして、俺の首に突き付けられた剣をゆっくりと振り上げた。
「では、勇者殿。さらばだ。」
今まで戦った仲間たちの顔が、走馬灯のように頭に浮かんでは消えた。こんな死に方をするなら、先の戦いで死んだほうが、俺も仲間たちも幸せだったに違いない。そんなことを思うと、余りの無念さから目から一滴の涙が零れた。
涙が地面に落ちた直後、大剣が俺の首めがけて勢いよく振り下ろされた。
拙作を読んでいただいてありがとうございます。世界観とか人間関係とかそもそもどういう状況なの!?みたいなのは物語が進んでいくうちに徐々に明らかになっていくような感じにしていきたいです!近いうちに1話を上げようと思うのでよろしくお願いします!