プロローグ 主人公A組視点
6月8日 午後5時 名古屋市某所
雨が降る夜に3人の人影が走っていた、よく見ると2人組の女が1人の男を追いかけている事が見える
「私たちは警察です。待ちなさい、そこの食い逃げ!」
男は店で傷害事件を起こしそこから逃走したため食い逃げの罪も付き警察に追われている
男は狭く障害物の多い裏路地をとんでもない速度で逃げている。男の指には黒い指輪がありその指輪が輝くたびに壁を走っている
「能力使ってやることが食い逃げって、つかささんボーラ使っていいですか?」
男を追う少女が走りながら話す、それに対しつかさと呼ばれた女性は走りながらものんびりと返す
「ダメです、この道はあまりにも障害物が多すぎます。ボーラで転ばしたら重症を与える可能性が高いので使用禁止です。」
「そんな、どうすればいいんですか。あんなの走って追いつけませんって」
壁を縦横無尽に走る男とちがい、警察は障害物をよけながら走らなければならない。少女の持つボーラを使えば男の足を止められるかもしれないが
壁から落ちた男が怪我を負うのは防げないだろう
しかし現時点で男とは既に15m近く離されている、このままだと見失うのも時間の問題である。
「そうですね、なら能力の使用許可は出しましょう。葵ちゃんの能力ならこの程度の距離すぐに追いつけますよ」
「使用許可、ありがとうございます。一発で捕まえて見せますよ」
女性の言葉に対して少女そう返す、すると少女の指についている指輪が男の物と同じように輝き始めた
「流石に3つもいらない、2つで十分」
少女の前に光るリングが2つ現れ、跳躍してそのリングを通った瞬間、少女は加速した。
その1歩で15m近い差を追いつき、追い越した少女は男と対峙し
「「そこまでです無銭飲食、傷害、能力の違法使用の罪で逮捕します(よー)。」」
追い越した少女、日高葵と追いついた女、結城つかさは男にそういった
男の逮捕後、葵とつかさは警察署で報告書を書いていた。報告書を纏めている葵に対してつかさは紅茶を飲みながら指導していた。
といっても葵の報告書は協力者用の物の為そこまで厳しく指導するものでもない、只話したいだけである
「罪状は無銭飲食だけどこれで葵ちゃんが捕まえた能力犯罪者は5人目ね、葵ちゃん大丈夫?葵ちゃん先月に警察協力者になったばかりでしょ。」
「大丈夫です、むしろまだ5人目なのかって気分ですね。」
葵は5月に警察協力者としてつかさのサポートに入った新人だ、しかし1月で5人という相当なペースで現行犯逮捕を行っている。
背後から手を伸ばし葵の腕章を撫でたつかさは葵に対して子供に言い聞かせるように話す、それに対し葵は今は輝いていない指輪を触りながら
「そう、でも無理は禁物よ。あなたはまだ18歳でこの前高校を出たばっかじゃない。いくら戦闘能力者とはいっても危険よ」
「戦闘能力者だからこそ、人を救わなければならないんです。それが正義じゃないですか」
そう返した、しかしその言葉は自分に言い聞かせるようも聞こえる
背後にいるつかさは葵の表情を見ることが出来ないが、また落ち込むスイッチが入ったのだと察した
そうなると話を変えなければならない、葵は落ち込むにつれて暴走する悪癖があることをこの一月で理解していた。
「そういえば」
つかさは葵から話題をそらすように話を続けた
「最近、能力を使った連続強盗事件が起きてるじゃない?あの事件の犯人についてわかったことがあるんだけど」
葵もその事件は知っていた、葵が警察協力者になってから直ぐに起きた事件である。被害者は皆、宝飾店で防犯カメラを設置していたが強盗の入店直後に破壊されている。
残された防犯カメラの映像と犯行時刻から過去4件の強盗事件そのすべてが雨の日に雨合羽を着た集団による能力犯罪だと断定されていた。
葵は飛びつくように聞いた。それを聞いたつかさはつかさは内心でしまったとため息をついた、紅茶を飲みながらどのように話すかを考える。
「名古屋市周辺で起きてる事件ですよね、調査に進展があったんですか?」
「事件があった4件の宝飾店の近くの防犯カメラに移ってた人物が1人だけ居たの」
「その人物が犯人ですか?それはどんな人物ですか?」
葵は今からでも犯人を捕まえに行きそうな勢いだ。警察であるつかさからしてみれば能力犯罪であることは間違いないが、。
かといって警察協力者が率先して危険に首を突っ込もうとするのもどうかと思う。
しかし、今、事件の関係者について話さなければこの少女は勝手に情報を集めに奔走するだろう。その事は良く理解していた
ならば仕方がないとつかさは困った顔をして顔に手を当てながら話を続ける
「それがね、小学5年生くらいの女の子なのよ、指輪もつけてないことは解ってるし能力犯罪捜査課でもその子が実行犯とは考えてはいない感じね」
それにとつかさは続ける、この情報を聞いたら必ずこの少女は暴走するだろう。しかし、釘を刺さなければさらにひどい暴走をするのは間違いない。
この少女は犯罪であるならば、相手が小学生だろうが容赦がない。しかもその理由が自身の過去を思い出すからという相手からしたら理不尽極まりない理由である。
最も犯罪行為自体を許すわけにもいかないのだが。
そこまで話した時この少女を止めるいい手を思いついた。後は話の流れで持っていくだけである。
「葵ちゃん、現状防犯カメラに写ってただけで現行犯という証拠はないの」
まず防犯カメラに写ってただけでそれ以外の物的証拠が無いのが現状だということを理解させる。
おそらく強く反応するだろうがそこを捕まえる作戦だ
「そうなんですか、でも目撃者ではありますよね、それなら話を聞ければ」
つかさの目論見通り葵は自ら話を聞きに行こうと動き出すなので
「そこまでよ、葵ちゃん。葵ちゃんは協力者であって警察ではない、だから葵ちゃんに捜査権はないの」
それを言われ、葵は止まる。葵は協力者であって警察ではない、警察側からの応援要請が無ければ捜査に協力できない。
しかし、葵もそんな事は理解してるが納得はしていない。
それを見たつかさは苦笑しながら話す
「警察の方でもその女の子の調査はしてるし実行犯と関係があるとは見てるの、だから葵ちゃんの力が必要な時は手を借りるわ」
「それじゃあ、報告書は書けてるし今日はここまで、葵ちゃん明日も学校でしょ」
つかさはそう言って紅茶を飲み干し無理やり話を終わらせた。
報告書を提出後、葵は警察署を後にした。胸中には先ほどつかさに言われた警察ではないという言葉がとげのように残っていた。
葵は警察ではない。高校時代、進路希望で警察を希望したが叶わなかった、警察側から拒否されたのだ。
自身の過去の罪のせいだと気付いていたが、警察になりたいという思いを捨てられず警察協力者となった。
「どうせ、私に頼るのに」内心で毒づきながら雨の中、家へと歩き出した。
皆さん初めましてムラサキと申します。
初めての投稿なのでおかしな点があるとは思いますが、皆さんのご指導ご鞭撻の元成長していきたいと思います。
次の話は主人公B組の視点のプロローグとなります。