出会いその1
軽度の下ネタ回(下世話な勘違い)です。
苦手な方は明日投稿話”出会いその2”を見てから読んでもらえれば、
あ、なるほどね!ってなると思います。
本日から作者3連休を貰いましたので手動投稿していきます。多少、投稿時間が前後すると思いますがご了承ください。
「あ〝の〝こ〝ろ〝ぉ〝は、はぁ!ん〝あ〝ぁ〝あ〝~〝あ〝ぁ」
何世代も前のうろ覚えなヒット曲を鼻歌交じりに奏でて浴槽から真は出た。水気を取るのもおざなりに、腰にタオルを巻きノリノリで室内に続くドアを開けたとき態度が変る。
「ん、なんか、臭い」
室内を満たしているはずの自家製つゆとばーちゃんのキムチのハーモー二―、肺いっぱいに吸い込むために酸素を消費したのに室内が臭い、なんだ、うちはいつからペットショップになったんだ!獣臭いぞ!
正面は壁、右は玄関、左は居間兼生活スペース、6畳間の狭い室内、すぐに見渡せる。コタツがひっくり返り、物が散乱しているではないか。どうなっているんだ!泥棒か!野生の獣でも入り込んだのか!いや、考えるのは後だ、いつでもできる。そんなことより、
「無事か、俺のメシ!」
やはり脳内は食欲中心で構成される真。迷いなく居間に向かう。一歩、二歩、経年劣化でたわむ畳を踏みしめる。壁で見えなかった台所が視認できた。
派手な下着姿の小柄な少女と中世世界から出てきたフルプレートアーマーで身を包む大柄な男がいた。男は少女の股間に頭から突っ込んでいる。
事案が発生していた。
「…」
驚きのあまり数秒硬直する真。
流し下の収納スペースの戸を背にし少女は四肢に力がなく虚空を見つめている。現実を認めたくないのか、いや、あきらめてしまったのだろうか。この室内のあれざまももみ合いの末なのだろうか。シンクに蛇口に溜まった水滴が落ち音を立てた。
少女も男も動かない。男はなぜか少女の股間に顔をうずめ身じろぎ一つしない。そんなにそこに顔をつけることに喜びを感じるのだろうか。…まさか、もう事後なのか、事後のそこに頭を突っ込む特殊趣味なのか。なわけないか、ことが済めば少女を残して去るなり別の行動をとるか。…いや、やはり、事後なのかもしれない。
二人から獣の匂いがする。経験のない俺にはわからないがもしこの悪臭が暴行の残り香なのだとしたら虚空を見つめている少女の姿と一致するのではないか。真の推理に切れかけの白熱電気が点滅しあたかも裏付けられたムードをかもしだす。
しかしわからない点もある。なぜうちに侵入したのか、もみ合い騒動になぜ気づけなかったのか。そしてその恰好は何なのか、疑問が残る。
「ん?」
どうしたものかと今後の対処を決めかねていると、ふと目に入った。少女がおたまを握っているのに。
自然と視線がコンロに鎮座する鍋に移る。蓋が開きコンロをおつゆが汚していた。
「あ〝あ〝ぁー、俺の鍋が!」
大声を上げる真。あんまりな光景に失念していたがここにきて本来の目的が鍋の安否確認であったのだと思い出す。
十全でなくともある程度は無事であってほしい、少女のことなど忘れ真は鍋の安否に願いをたくした。
「「あ、あ、あなたが神?」」
大声に反応したのか二人がうつろな目を真に向ける。願いは鍋ではなく二人の女性から返ってきたのだった。
明日は今月最終日、作者に時間的余裕もあることから2話投稿します。お時間ありましたら覗いていただければ幸いです。