ごはんどうする?
「遅いわよ!またせるんじゃないの!」
合流できたのは1階ロビー、ギルド入り口付近だった。村での知名度抜群、メロとクマ実が混じる集団、周囲の冒険者や職員から注目を浴びていた。しかし苛立たしげに貧乏ゆすりで床を踏みしめるナナが最も注目されていた、明らかにこの集まりのリーダー格に映っているのだろう、間違いではないが。
「悪い皆、待たせた」
一言二言会話するつもりが普通に世間話してしまった、あのオッサン、メロは毛嫌いしているふしがあるが気さくなロマンスグレー、上司とかがあんな感じなら頼りがいありそうだ、まあ、関係の浅い俺より日頃から関わりのあるメロの印象にある支部長像が正しくはあるのだろう。外面のいい人って身内から見るとイラつくんだよな、支部長がそうでないことを祈ろう。
速足で駆け寄り皆に続き外に出る。良く晴れた青空だ、時刻は11時、見上げた空には太陽が、二つあるな、それはこの際どうでもいい、もうすぐメシ時だ。早くも異世界に順応しだす真だった。
「クマミツ亭でデザート浴びるほど食べに行きましょう!」
「ええ、そうね、クマミツが出回れば取り扱っておりませんなんて戯言はけないでしょうし」
ナナの苛立ちは俺が遅かっただけではないようだ。シロエとナナが昨日から今朝にかけてすでに浴びるだけ胃に収めているはずの甘味をさらに求め歩きだした。「クマミツトースがトおすすめです!」メロも二人に続き乗り気である、俺は塩気のある物が食いたいがデザートを楽しむ傍らで甘い香り以外の匂いだしたらナナに殴られそうだし別口の飯屋行きたいところだ。遅れた手前言い出せない真にクマ美が近づき、
「クマ美は行きつけの店あるからそこで食べてから養クマ場に帰るからここでいったんお別れ、ちょくちょく村に顔出すから相手してねご主人」
真の腕を取りゆするクマ美、ナイスだ、行きつけの店も気になるし便乗させてもらおう。
「俺はクマ実とメシ行くわ、宿で合流で構わないか」
「そう?じゃあこれ持ってって」
特に文句も言われず、万札を数枚手渡された。「お釣りはいらないから」男前なセリフを吐くナナ、俺も言ってみたいが、現状ただのヒモなのでありがたくいただこう。
「よし!金もらったし俺のおごりだ!行こうぜクマ美!」
「ただメシ最高!ご主人カッコいい!」
プライドなど持ち合わせないわせない真、自身の損得で情けない真をおだてるクマ美、案外悪くない組み合わせなのかもしれない。二人はギルド裏に止めた馬車に向かい歩き出した。
「ちょっと待ってください!行きつけってあの店!」
「もちろん、モンスターだって偏見しないし居心地抜群だもん」
慌てた様子のメロにクマ美が上機嫌で肯定する。
「これ持ってってください真さん、食前食後必ず飲んでください!」
お兄ちゃん呼びも忘れ、緑色の液体入り試験管を渡される。やはり人肌に温かかった。
「これは?」
「“解毒薬”です」
アンチドーテって解毒薬だよな、飯屋に行くのになぜこれを?首をかしげる真。
「あ!ごはんは美味しいから安心して食べてきてください、ではまた後で~」
「あ!っちょ!」
伝えるべきは告げたと先行くナナとシロエに合流し談笑を始める三人。
「行こっかご主人、案内したげる」
「お、おう、頼むわ」
急に不安になり、クマミツ亭に一緒すればよかったのではと後悔する真であった。




