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決戦、パン☆ケーキその2


「間近で見るとかなりでかいわね」



 周囲には、クリーム、カットフルーツに彩られた“ベアー”達が横たわっている、彼らは不死だ、ほっとけばそのうち動き出す、ただ移動の邪魔ね。


 剣を振う、一太刀で背後から迫っていた枝を断ち切る、行動を阻める障害は二つ、足場を不安定にさせる“ベアー”、そしてこの鬱陶うっとうしい枝、こいつらをかわして踏み込んでも…、



「っと、危ないわね!」、“パン☆ケーキ”が回転しトッピングを発射してくる。クリームにフルーツ、矢とは違い柔らかく盾に使う大剣にへばりつく、そして垂れる汁気、重量と手の滑りを上げてくる。大剣を盾に使い飛び退くナナ。



「私まで武器を滑り飛ばしたらシロエの事言えないわね」



 ふふ、戦闘中だが微笑みを浮かべるナナ、一見攻めあぐねていると感じるが余裕を窺える、何か手があるのだろうか。



 生き残りの“ベアー”達がナナの援護のつもりなのだろうか、前面に立ち降り注ぐトッピングをその身で受ける、クリームでコーティングされフルーツで彩られる、土台のクマはスポンジ色、ケーキに見えないこともない。おいしそう、こんな場面でもこんな思考をしてしまう自身に苦笑いを浮かべるナナ。



 役目は果たしたとばかりに地に伏す“ベアー”、“パン☆ケーキ”のトッピングには強力な脱力作用がある、生きている状態で、その一部でも口にすれば四肢に力が入らなくなり倒れ伏す“ベアー”の仲間入りだ。口にしなくとも、盾になってくれた彼らの如く、全身に浴びれば結果は同じ、“火蜥蜴”戦同様、長期戦は不利。体力・気力十分な早期に攻め切る必要がある。



「っち!しつこい!」、横っ飛び、空中で回転、大剣を振るう、背後を狙う枝を粉砕する。攻めに全神経を向けられない、シロエがいない、その穴がナナに大きく降りかかる。


 戦場が悪い、この一言だ。“食人植物”の群生地、私以外では捕まり養分に早変わり、これじゃシロエを連れてくるわけにはいかない。休む間もなく動き続ける体、真の“バフ”が恋しい、あの力があれば力押しできるのに。


「無いものねだりじゃ何も解決しないわね!」



 一所ひとところに留まらず動き回り、枝とトッピングに的を絞らせないナナ、だがその行動は守におもきを置いている、攻めの一手ではない。さらにトッピングは散弾、すべてを防げるはずもなく大剣で防ぐ、このままではじり貧だ、



 平常心だ、ピンチはチャンスでもあるはず、相手をよく見て観察する、戦いの基本だ。乱れる呼吸にたぎる鼓動をなだめ、目を見開く。何か糸口がつかめるはずだ。



 戦況は好ましくない、周囲からの妨害、足場の悪さ、どれも命取り、足を取られるわけにはいかない。


 パン☆ケーキは宙に漂い、回転しトッピングを打ち出し続けている。いやらしいやつ、自身の下は綺麗なもので周辺を飾りつくしている。…、いや!これだ!この手しかない!



「クマちゃん達!パン☆ケーキ祭りよ!これだけ大きいだもの“クイーン”だけじゃ食べきれないはずよ!」



 一転、攻勢に出るナナ、“パン☆ケーキ”に向け斜めに、角度をつけて直進する、打ち出される散弾、大剣を盾に受け止める、なおも降り続ける散弾、ナナは大剣を払い、勢いそのまま、滑る柄を利用し多量のトッピングがされた大剣を地に放ち、自身も大剣に乗る、地面も多量のトッピングがなされており摩擦が働かず低姿勢を保ち高速で滑り続け、“パン☆ケーキ”に接近する。散弾は頭上を通過し素通り、見事な焼き目の真下に到達した。



 手際よく“低温炎着火液フレーバーオイル”を浴びせ、ライターで着火、上がる炎はエメラルドカラー、なるほど、確かに熱くない、自分にかかったらどうしよう、僅かにあった懸念も解消されたナナ、回転を止め、宙に漂い続ける“パン☆ケーキ”、どうやら効果あったみたい、炎なら温度関係なく一発で仕留められるのね。



 紅茶の香り漂う“パン☆ケーキ”から這い出るナナ、エメラルド色の炎をまとい、クリームが溶けだし、フルーツに火が通り匂いが増す、さらに暴れた回る内に付着していた樹液が熱されフルーツに照りと香りを加味させる。見た目、香り、味までもが特上だろう。



「“クマミツ”貰えなくても構わないからこっちを持って帰ろうかしら?」



 無事な”ベアー”達の拍手喝采を浴びるナナ、本来の目的がぶれるほど魅力的な“パンケーキ”の完成であった。


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