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クマミツその1


「もう少しで着きます、任せきりですいません」



 メロの感謝と謝罪の言葉を受ける先頭の二人。数分歩くと木と土の匂いに甘い匂いが混じり始める、砂糖を焦がしたような甘ったるい匂い、自然に似つかわしくない香りだ。目的地は近いのだろう。



 “養クマ場”、おそらくだが、養鶏場や養蜂場と同じで飼育や養殖で食品を作る施設だろう。“クマ”を飼育して“ミツ”を作る、仕組みがわからないがここまで来たのだ、“クマミツ”はお持ち帰りしたいものだ。真は次第に濃くなる“クマミツ”の芳香に期待が膨らんでいた。



「止まってください、ここら辺が入り口です」



 本道から外れた木々を指さすメロちゃん、周辺と変わらず木々が生い茂りそちらに進めば森に迷い込んでしまうのではないだろうか、不安しかない。


「そう、行きましょうか」「“クマミツ”たのしみだね」、ナナとシロエが躊躇ちゅうちょなく森に入ってい…!、消えた!



「ああ、幻なんですよここら辺の木々、“クマミツ”泥棒とかモンスター被害の対策です、お二人は幻の向こう側にいますよ」



 お口あんぐりの真に補足し、「あたし達もいきましょうか」、歩を促す。戸惑いつつも頷きメロに続く真。


 恐る恐る二人が消えたあたりに右腕を突き出す。案の定消える前腕、ひじから先が消えてしまった、でも見えない先に確かに指の感覚がある。こっちからもあっちからも不思議な光景になっているのだろう。



「遊んでないで行きますよ、あまり待たせるとお二人にお仕置きされちゃいますよ」

「はい、すいません」



 短時間に二度も子供から注意され割とガチでへこむ真、「何してんの、早く来なさいよ」「遅いですよ~」、先行した二人からも催促がかかる。“食”が絡むと狂暴化する二人だ、理性が働いてるうちに合流しよう、真もメロと幻の木々を抜けた。


 “トンネルを抜けると雪国”有名なフレーズだ。原作を見たわけじゃないので正確な引用か分からないが予想外な光景が広がっていた。


 原っぱに切り株ベンチ、ログハウス、乱立する枯れ木の密集地帯、突如現われた集落の住人は人ではなかった。



「なんというか、あれだな、メルヘン空間ってやつか」



 “養クマ場”、なるほど、確かにクマがたくさんいる。…テディベアだが。大中小あらゆるサイズのもふもふが我が物顔で闊歩かっぽしている。テーマパークに迷い込んだのだろうか。


 つぶらな瞳のクマさんたち、一部が枯れ木に群がっている、カブトムシみたいだ。



「何あれ、着ぐるみ着て木に群がる変わったバイト」



 見たままの光景の感想を口にする真。



「いえ違います、あれ“ベアー”っていう無害なモンスターです、あの木もモンスターですよ、あっちは危ないから近づかないでください、あの木“食人植物”ですから魔力吸われてしんじゃいますよ」



「ひえ!」無害なモンスター、その言葉に驚くも、“食人植物”更なるパワーワードにビビる真、「あのクマ、肉質やわらかいのかしら」「クマミツと一緒に持って帰ろ、ななちゃん」一方、平常運転のナナとシロエ。



「見た目通り中身綿だから食べれませんよ、服とか作るならあれですけど」



 実質年長者のメロがたしなめる。「じゃあ興味ないわ」「クマミツだけ持って帰ろうか」、素直に聞き入れる二人。


 あたしがブレーキ役するとかこの人達、めんどくさい人種なんだろうな。めんどくさがり筆頭のメロに格上認定される三人であった。



「ところで“クマミツ”どこでとれるのメロさん」

「枯れ木に群がる“ベアー”をよく見てください、あれ、ミツを採取してるんですよ」



 ナナの問いに答えるメロ。“ベアー”達は表皮をもこもこハンドでなぞり、口に運ぶもの、肩掛けポシェット、いや、あれ壺だ。まるで例のクマさん、壺にミツをためているものがいた。


 なんでも枯れ木と“ベアー”は共生関係にあるらしい。カクレクマノミとイソギンチャクの関係と同じだ。枯れ木は人を食す代わりに、人に近い魔力を持つ“ベアー”から栄養をもらい、“ベアー”は枯れ木からたれる樹液を食料として手に入れているらしい。


 人間とは根本的に生き物として仕組みが違うらしく“ベアー”は魔力を吸いつくされても死ぬことはなく、“ベアー”がいるから人間に危害が及ばなくなるので枯れ木も放置でき樹液を“クマミツ”として利用でき一石二鳥な仕組みになってるそうだ。


 異世界版養蜂場か、こっちの方が見た目はファンシーなのに危険度が高そうだ。“ベアー”達が例のハチミツ好きのクマさんに見えてきた真は、見たままを受け入れ、疲れるからむやみにツッコミは入れないと心に誓うのであった。


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