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林道、養クマ場へ移動中


 村を出てしばらく歩いたが、この林道も見飽きてきた。一本道でマイナスイオン満載な常緑樹の木々、馬車が走れる前提で踏み固められた土、歩きやすいが森林浴をしに来たわけではない。メロちゃんが言っていたが何か食べとけばよかった、腹減ったなー。はあー、思わずため息を吐く真。



「お疲れですか、まだしばらくかかりますよ」

「大丈夫だよメロちゃん、ちょっとお腹が減ったな~って思っただけだから」

「良かったらこれどうぞ、自家製“回復薬ポーション”です、ゼリー状なので腹持ちいいですよ」



 外套の中から取り出した紅色の液体入り、コルクで線をした試験管、程よく人肌に温まっている。その外套の中、収納方が気になるが、それよりせっかくの好意、無下にするはずもなく受け取る真。



「薬だよね?苦いの?」「あたしのは甘くておいしいですよ」、へえー、相槌あいづちを打ちコルクを開ける、ポンっと小気味よい音と共に柑橘系果実の香りが漂う。


 実は“回復薬”初体験の真。ゼリー状、腹持ちがいい、甘くておいしい、薬としての印象があっただけに前情報とこの香りは予想外だった。普通においしそうだ、“良薬口に苦し”ではないのだろうか、栄養ドリンクみたいなものなのか、とにかく頂こう。試験管を傾け一気に流し込む。



「あ!おいしい!」



 メロの言通り甘くておいしかった。のど越しの良いゼリー状、クラッシュタイプだ。味は甘くてほんのりした苦味、グレープフルーツみたいだ。色合いからしてピンクグレープフルーツ、匂いもそれっぽいしな。



「それ、私たちにも貰えるかしらメロさん?」「ですです」、耳ざとく二人のやり取りを聞いていたナナとシロエも食いつく。おいしい“回復薬”なんて飲んだことがない、是非とも口にしたい。



「どうぞどうぞ」、淡い色合いの赤と青の“回復薬”を出すメロ、味にレパートリーまであるようだ、月並みな感想だが、この世界の“回復薬”すごいな。感心する真に二人の驚きの声が届く。



「「本当においしい(です)」」



 いや、この“回復薬”が特別みたいだな、二人の反応からするに。



 この“回復薬”から話が弾み、軽い自己紹介しかしていなかったので、情報交換もかねて、互いの“天職”や戦闘におけるポジション確認等をした。ナナ達は“簡易テント”をメロは“実年齢”を誤魔化し伝えた点は補足しておく。



 俺から言わせれば、村を出る前にしとけよと思うが、三人には散歩感覚なのだろう。村周辺にはメロちゃんの作った魔除けのアイテムが設置してあり低級のモンスターは近づかないとのことなのでおそらく安全らしい。



「真さん異世界人なんですか、教会で呼ばれてれば勇者、そこらで目覚めればニート、他人事ですけど酷い仕組みですよね」

「あ~、うん、そうなんだよね」



 曖昧な返事をする真。確かに勇者なら魔法が使えて剣も使える、強くてニューゲーム状態だっただろう、羨ましくもあるが、魔王を倒す英雄ではなく、気ままに旅して食べる冒険者になりたいわけで勇者なんてこっちからお断りだ。とは言っても…。



 “道具生成合成アイテムメーカー”応用力がすごい、負けずの利便性があるはずの“付与術師バッファー”は魔力のない俺では宝の持ち腐れ、大体、魔力ってなんだよ。こちとら、酸素、窒素、二酸化炭素吸って生きてきたんだ。大気に魔素マソがあるなんて言われてもわかんねーっての。そんな心情が顔に出ていたのだろうか、ナナとメロが真に優しく話しかける。



「ま~、あれですよ、魔法が使えない“付与術師”別にいいじゃないですか、魔法が使えないだけでバフがかけられないわけじゃないと思いますから」

「そうね、異世界人のあんたに先輩たちがレクチャーしてあげるわ」



「どういうこと」、首をかしげる真。「まあ見てなさい」、両手の人差し指を立てるナナ、右手指先に小さな光の玉を出す、魔法だろう。「光を〈ライト〉」、詠唱ってやつか短い言葉を紡いだのち左手指先に同じ魔法が出る。



「違い、判る?」、「分からないけど」、見た目に違いはないと感じる。「見てなさい」、生い茂る木に向け両指の玉を放つナナ、ふよふよ風になびく程度の速度で漂い、詠唱無しは途中で消え、有は木にぶつかり消えた。



「魔法って、自分の魔力を着火剤にして大気の魔素に火をつけ起こすの、詠唱は火を大きくするための補助なのよね」



 突然魔法の知識披露を始めるナナ、魔法が使えない真は「はあー」気の抜けた返事を返す。立てた指、中指だったら絵的に良くなかったな、関係ない思考までする始末。



「ちゃんと聞いた方がいいですよ、真さん」

「…、はい」



 メロにたしなめられ反省する真、子供に本気トーンで注意されるとこたえるものがあるな。



「私の魔力量はD、でメロさんがC、私の詠唱あり〈ライト〉よりメロさんの詠唱無し〈ライト〉の方が高性能、なんでか分かる?」


「ナナの例えを借りるなら着火剤の性能が違うからってこと」


「そうよ、理解が早くて助かるわ、で本題ね、魔力量Eは“体内に流れる魔力を魔法として発現させられない量”、つまりは魔力が無い訳じゃないの、だから魔法じゃなければ使えちゃったりするのよ」


「…ん~、う~ん」


「こっちも例を出すわ、シロエも魔力量Eで魔法は使えないんだけど条件付きで一時的に自分にだけ“筋肉増量パワー”って魔法と同じ効果がかかるのよ、どうしてかしら?」


「いや、わからん」


「たゆまぬ鍛錬、決意に信念、臆さない心、このあたりかしら、シロエはね戦闘中だけは筋力が増すのよ、気の持ち様とか思うかもだけど本当なのよ、ここでさっき説明した詠唱が関係してくるんだけどわかる?」


「…、説明お願いします」


「難しい話じゃないわ、シロエは詠唱と同じことをしているの、鍛錬とメンタル面で、シロエの魔力が本人の努力に答えた形ね、だからこれはシロエの“固有技能”ってところかしら、だから真も魔法以外の形でバフを使えるかもね」


「う~ん、なるほど、理解はできたと思う、努力とか気持ちに魔力が反応して魔法と同じ効果がでることもあるってことか」


「そういうことよ、こだわりありそうだし例えば料理とかどうかしら、バフがかかるかもよ」


「はは、だといいな!バフがかかるめし、“バフめし”ってか」




 冗談と受け取り笑みを浮かべる真。実際に“バフめし”を調理したわけだが意図して作ったわけではないだろう。意識させると出来るものも出来なくなるもの。実際、プリンではバフがかからなかった。真にはおいしい“バフめし”を作って貰わなくてはならないが焦ることはない、冒険すれば食材に料理、未知の体験、いくらでも成長の機会はある、気長に待てばいい。


 弟子を取ったらこんな気持ちになるのかしら、普段湧かない感情が内から出るナナ。



「ななちゃん~、話し終わったならそろそろ変わって~」

「はいはい、ちょっと待って」



 先頭を歩くシロエから催促がかかる、ナナの代わりに索敵を行っていたシロエ、万一があるため慢心は命取りだ。しかし本職ではない、普段はナナだより、4人の命を預かる行為だ疲労もたまる。情けなく見えるが裏を返せばそれだけ真剣に仕事をしてくれていた訳だ。信頼に値する相棒は得難いもの、彼女の頑張りに答えましょうか。


 足早に駆け寄りシロエの背負う大楯を叩き感謝を伝えるナナなのであった。


ちょっと一話の文章量としては多かったでしょうか。


投稿日数を減らした結果、一話のボリュームが増え、

きりのいいとこまでのっけちゃおうと投稿したのが今回のお話になります。



思い出したように入れるのもなんですが、皆さまに感謝を。


去年の11月の終わり頃から始めた”バフめし”ですが気が付けば総合評価が三桁近くに!


ブックマークに評価ありがとうございます!おかげさまで楽しくお話を作れます。


また覗いていただいている皆さまにも感謝を。


去年最後に確認したときには累計1万PV<アクセス>達成してました。

楽しく見て頂けているならうれしく思います。


長くなりましたが、また”バフめし”このタイトルを覚えていただき、

再び皆さまの目に触れる機会になればと思います。


ではでは~

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