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横穴の奥にてその1


 場面は変わり辺境の洞窟、火蜥蜴サラマンダーの巣。凸凹コンビは壁伝いに進んでいた。横穴は入り口こそ狭かったものの本道と変わらず広かった。

 ナナが指先に小さな光の玉〈ライト〉の魔法を作り出しわずかな光源として利用し、索敵を疎かにはせずに進む。そんなナナの後ろシロエは大きな体をすくめながら小さな姉貴分にすがりつき、歩を進めていく。


 水気を含んだ壁が手を汚す。本道と違い湿気が高い。高ぶっていた体に冷汗が滴りだす。不快感を肌に、ナナは集中を切らさず思考を巡らせる。


 火蜥蜴は雑食、他のモンスターをエサにする。ゴブリン然り、昆虫型モンスター然りだ。こんな洞窟奴らからしたら快適空間だが火蜥蜴が生息する以上共存はできないはず。しかし、この湿気はまずい、火蜥蜴は温暖から乾燥地帯を好み湿気はさける傾向にある。さもすればこの穴は奴らの共存を可能にする通路になっている可能性もある。それはまずい、暗がりで複数のモンスターに囲まれては対処できない。死あるのみだ。


 昆虫に蹂躙される自身、ゴブリンの慰み者にされる自身、嫌な想像が浮かぶ。



「ななちゃん~」



 すがりつくシロエの鼻声が耳に入り、思考は中断される。彼女はメンタルに難がある。とても腕の立つ騎士だったのだがその性格上問題が発生してしまい、職を失い冒険者となった経緯がある。だがナナはその性格込で、頼りになる相棒だと疑っていない。



「ほら、めそめそしない!その大きな盾は飾りじゃないでしょ!なんか出たら私を守ってよね!」

「うん、任せてななちゃん~」



 彼女が背負う身の丈ほどある大楯を叩き激を飛ばすもしなしなな返しをするシロエ。

 「まったくしょうがないわね」っと心でつぶやき兜の上から頭をなでた。


 しばらく進むと行き止まりについてしまった。注意して進んできた以上横道などなくこの道一本だった。つまり、先に道はない。この道は出口にはつながってはいなかった。



「…これは、きついわね」



 つい弱音を吐いてしまった。後ろには心配そうな顔でシロエが震えている。

 私があきらめたら二人しておだぶつね、まだ出来るはず。体は動くもの。



「シロエ、ひとまず休憩しましょうか?戻ったら大立ち回りが待ってるもの体力は温存しなくちゃね」

「うん、ななちゃん、わかった」



 勇気と蛮勇は違う。生存率を上げるため体を休め、現状出来る最高のコンディションで決戦に向かうべきだ。

 たぎる心を落ち着かせるべく腰を下ろす。腰かけに行き止まりの壁は都合が良かった。前方のみに注意を払えば安全を保てるのだから。



「ねえ、ななちゃん」

「なあに、シロエ」



 ナナを持ち上げ、強引に壁の代わりに背もたれになるシロエ。ナナは胸にすっぽり覆われた。慣れっこなのか気にした様子はなく会話を続ける。



「洞窟でたら、あったかいもの食べたいね」

「そうね、奴らを狩って火蜥蜴シチューなんてどうかしら?」

「いいね~、おいしそう、お腹減ったな~」



 鶏肉より淡白で臭みもなく、肉のうまみが凝縮された火蜥蜴の肉。柔らかな肉質で鱗をはげば食せる手間のかからなさ、食材としても奴らは優秀なのだ。

 魔牛の乳にチーズ、野菜類も厳選したい。絶叫ニンジンに爆弾オニオンは欠かせない。とすればポテトはなにがあうだろうか。


 二人は窮地にありながら脳内は食欲で満たされていた。


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