幕間~日常の風景お茶漬け編その1~
コタツで暖まり、湯呑を傾ける。
やはり冬はほうじ茶がうまい季節だ。
香ばしくあたたかい、食事とも相性はいい。
テレビではニュースが流れ真は聞き流し、くつろいでいた。
そんな一幕に、
「ごはんの時間よ、今日もたかりに来てやったわ」
コタツの中から侵入者が現れ、もぞもぞ、出てくる。
今日も今日とていつもの如く現れる二人組。
鎧姿のコスプレ女性、ナナとシロエだ。
あの日、鍋を共につついたことから生まれた異世界の友人たちは、
遠慮を知らず、ほぼ毎晩たかりに来ていた。
そんな日常の一風景が今日も始まる。
「毎晩来るなよこっちとら金欠で恵んでやるほど余裕ないの!」
真は無駄な抵抗と知りつつも愚痴る。
「そんなこと言って一人ごはんは寂しいんでしょ?わかってる、わかってるわ!だから真が寂しくないように私たちがきてあげてるんだから感謝しなさいよね」
「まあ、うん、…ありがとう」
あの日、独り言を聞かれている以上否定はできない、でも素直に認めるのはどこか気恥ずかしい、なんとも渋い顔で返答をする。
「はいはい、ご飯を食べるときは笑顔、これ基本ですよ。ちゃっちゃっかご飯の用意お願いします!」
手をパンパン叩き真をはやし立てるシロエ。彼女はコタツに座り込みテレビの鑑賞を始めた。番組が気に入らないのかリモコンを手に取り勝手に番組を変えている。いつものことだが自由過ぎる、自宅のような態度だ。
「ったく、しょうがねーな、金ねーから大したもん出せねーから期待すんなよ」
はーい、元気よく答える二人。コタツから立つ真にナナは声をかける。
「手伝いましょうか?」
「いや、コタツに入っててくれ、まじで直ぐにできるから」
「そう、なら早くしてね、腹ペコで来てるから」、何気に恐ろしい一言をナナが放った。真は知っている。彼女らの食事量を。一般的成人男性である真の一週間分の夕食を一食で食しきってしまう彼女たちの胃袋に真の財布事情は風前の灯火だった。
「おなかへったなね~」「そうねー、ごはんまだ~」、台所に立つ真に二人から催促がかかる。
「ちょっと待ってろ、ほんとすぐだから」
真は2升炊き大型ジャーと、どんぶりを手に居間に向かう。
「なに?またおにぎりパーティーでもする気?頻繁に開催したら飽きるわよ」
「違う、今日は茶漬けだ」
そう口にすると、台所からやかんが真を呼んだ。取りに向かい、やかんとレジ袋を持ち戻ってくる。袋の中身は“お茶漬けの素、”一袋8パック入り、それが5袋入っていた。
「これと小鉢で今日のメシな」
みたび台所に向かう真。コタツに残された二人は、
“え、米にお湯かけて食べるの?”
案の定“お茶漬け”を知らない為、湯気を吹くやかんから料理を想像するしかなかった。
「お待たせ、食おうぜ」
そんな二人の内情など知らず、お盆を手にコタツに入る真。
お盆上は、白菜、きゅうりの浅漬け、こんぶ、鮭のほぐし身、チューブわさび、などの箸休めにトッピングとなかなかのラインナップであった。
金はないが食材はある。米と野菜は田舎の実家から、お茶漬けの素はバイト先のスーパーから社員割引で、同じく市販の浅漬けの素も購入。一食豪華主義な真、普段は質素に、休日はこの前の鍋のように豪華に行くのだった。
「ねぇ、お米にお湯かけて食べるの?」
上機嫌な真にたまらず疑問をぶつけるナナ。
「あ~、もしかして、お茶漬け知らない感じ?」
うなづく二人。
「了解、簡単だから見てて」
真はどんぶりをつかみ、ジャーを開ける。とたんに上がる湯気。
あきたこまちとコシヒカリのブレンド米、米の粘りが違う。
このまま食べてもうまいが今回は茶漬け、しゃもじで掬い、
空気を含ませ、軽くよそう。どんぶりの容量としては少量の米である。
その上に“お茶漬けの素”を1パックかける。ノリに顆粒、あられが降りかかる。
「それ、食べものなんですか?」
真の動作を覗き込んでいたシロエが口を開く。黄緑色の粒が食材には見えなかったのだろう。
「でも匂いはいいわよね」
同じく覗き込んでいたナナも口を開く。ナナはパック開封時の香りに関心が向いていた。
「ここにお湯をかける訳だ」
湯気を上げるやかんを手に持ち傾ける。
どんぶりの中は、顆粒が溶け、かぐわしい湯気を立てるお茶漬けが完成した。
そして、はしを持ち真はかき込んだ。
ずずず、と音を立て一呼吸。
ただ、お茶漬けを食べるだけのお話です。
こういう小話もちょこちょこ書いてます。
(本編書けよという話ですが)
ですので、文章量もちょっと多めです。
明日投稿する続きの話も普段なら2話に分ける文章量です。
本編のお話が区切りいいタイミングで
幕間~○○~みたいなタイトルの投稿があったらこんな感じのほのぼの回だと解釈してください。
ではでは~




