お外でごはん~火蜥蜴のお肉その4~
「こっちも食べてみて、おいしいわよ」
鍋からよそられた湯気たてる器を手に漫画肉に夢中な真に話かけ手渡すナナ。受け取る真、まず湯気たてる器とその湯気に熱されているスプーンに目がむいた。
木製のスプーンに器、共にナナお手製品、安定品質な流通品とは違い素朴ながらあたたかい、材質の木の温もりに人の温もりがこもった一周回って味のある食器だ。外の食事というロケーションにマッチしていた。さらに器の中身、その料理とも食器は好相性であった。
「おー、シチューか、すげーうまそー、こういう食器使ってると見た目何割増しにもうまそうに見えるから不思議だよな」
「それわかるわ、でも実際美味しいから、火傷しないようふーふーして食べなさいよ」
「ななちゃんこっちにも!」「はいはい、待ってね」、二人の掛け合いを耳に、器の中のスプーンを持ち持ち上げる。
白色に桜色のお肉が浮かぶシチューには素材が溶け込んでいる、すりおろした自然薯、これが近いだろうか。原型をとどめていない野菜、ジャガイモ等のでんぷん質の影響かドロドロした重量感のあるシチュー、チーズが溶け込んでいるのか粘度も高い。
シチューなので香りの強い香辛料の類は入っていないだろう、それゆえに、あがる湯気にやどる素材が放つ優しいかおり。チーズに複数の旨みとなった野菜、肉、おそらくベースのミルク。うまそうだ、我慢できない、ふーふー息を吹きかけ口に運ぶ真。
「っうま!」
目を見開き思わず口にでた言葉、皮切りに夢中で食し始めた。
他の野菜は分からないが、ジャガイモ、玉ねぎがベースで溶け込み、素朴なあまみと口当たりに貢献している。そうとう煮込んだはずだ、この手間だけで相当うまい一品、だがそれだけじゃない。
たぶん水は使わずミルクベースにし風味と口当たり強化、水ではここまで口の中で存在感を主張しなかっただろう。チーズで更なる風味と口当たり強化、素材の味をまとめ引き締めている。そして忘れてならないサラマンダーの肉、煮ると柔らかく口内で溶ける肉質になる、ほのかな甘みに混じる肉の旨み、足し算ではなく掛け算、組み合わせがうますぎる。米…、いや、パンを、フランスパンとかしっかりしたやつと食したいな。
「ふふん」、得意げなすまし顔で真のつぶやきを、がっつく姿を確認したナナは小さくガッツポーズをとっていた。自身の料理で真を唸らせた、料理に心得、“食”にこだわりがある者として単純にうれしかったのであった。




