お外でごはん~火蜥蜴のお肉その1~
「待ってたわよ、どう?この景色、結構いい感じでしょ?おいしいもの食べるときは場所とかも味に影響与えたりするから気に入って貰えればいいけど」
“簡易テント”からにゅるりと押し出された真。眼前には大股開きで仁王立ちするナナ、おそらく彼女も自身と同様、押し出されて立ち上がった直後なのだろう。風になびくワンピース型ひーとてっくの裾、その股の間から覗くは、大自然、空気もうまい。
空が広いという言葉がある。周囲に高い建物など、視界を遮るものがなくただ空が広がっている風景、北海道を旅する番組で見たことがあるが生で見ると迫力が違う。
ナナの股越しの狭められた視界でもわかる。眼下に広がるは見渡す限りの森林、草原、人工物が一切ない自然色が広がり、彼方に山が立っている。が、青空はどこまでも続いている、流れる雲もどこまでも続く。
オープンワールド系ゲーム、それもグラフィックに凝ってるやつの世界に入り込んでいるみたいだ。…、同じかことか、実際異世界に来ているわけだし。文句があれば一点のみ、この素晴らしき絶景、ナナの汚い尻越しには覗きたくはなかった。ひーとてっくを着用しているのでパンツ鎧を見せつけていないのが唯一の救いなのだが。
「さあ、立って、そこで寝てるとシロエに潰されるわよ」
振り返ったナナが手を差し伸べる、「ありがとう」握り返し腰しを起こす真。そのタイミングで背後の“簡易テント”からシロエがにゅるりと出現した。ナナ同様、真の衣服を拝借したままの登場である。昨日もそうだが、あまり衣服の数はないので毎回パクられると真の着る服がなくなってしまうおそれがあるが些末事、彼女たちにとっては真の部屋はすでに自室、私物の持ち込み、野宿代わりの宿、彼女たち内では決定事項のパーティーの本拠樹〈仮〉にすることに決められてしまっているのだった。この食事会はこの件を真に「うん」と言わせる交渉の場でもあるのだ。
火蜥蜴の肉があれば真は一も二もなく首を振る、その確信を持つナナ、彼女の脳内ではその後の地図が描かれだしている。真は知る由もないのだが。
「ななちゃん早く食べようよ、いい感じに焼けてるんでしょ?」
「そうね、よんどいてあれだけど真、お腹は減ってる?たくさんあるから遠慮はいらないわよ」
起き上がり後方に向かうシロエ、手のひらを向け後方を示すナナ。真の背後にはどうやら、パーティー会場が設けられている、未知のお肉のお祭りだ。「ご相伴にあずからせてもらうよ」興奮を隠せない真は振り返る、彼の目に映るは。




