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和風プリンが食べたくてその2


 卵焼きもいいかもな、砂糖をたっぷり入れて、バターを低温で溶かして、いや、それならフレンチトーストもいいな。あ、食パンがない。ん~、甘ものか…、確かまだあったっけ。


 流し台下の収納スペースの戸を開ける。果たして目当てのものはあるのだろうか。


「お!あったあった!っし、じゃあデザートでも作るか!」


 真が取り出したもの、それは、高級砂糖、和三盆である。


 和三盆とは、竹糖と呼ばれるサトウキビを原料に作られる四国伝統の砂糖である。風味は黒糖、口どけは粉砂糖、まろやかな風味とほろりとした口どけ、そのまま食してもお菓子として成り立つ高級品。むろん砂糖としては値もはる。なぜ所持している?誰もが思う疑問である。


 真は、金はないが自時間はある。バイトはしているがプライベート時間が極端に少ないわけではない。ゆえに、昨今の若者同様、スマホいじりに余念がない、特に某大手通販サイトの食材ページにくぎつけであった。ここまで話せば察しはつくだろう。珍しいものが安売りしているとついつい買いたくなってしまう、この心が真にワンクリック購入というお金が瞬く間にとけるボタンを押させるのだった。せめてもの救いは、買ったものは無駄なく使いきっている点だけだが。



「バニラビーンズとかないし、和風テイストで行ってみよう!」



 どうやら、和三盆をふんだんに使用したプリンを作成するようだ。



 小鍋に和三盆を入れ弱火で火をかけカラメルを作る。砂糖と違い粉のようなきめの細かさゆえ、すぐに火が通る、黒糖のような香りを放つカラメルが完成した。味見したいが我慢だ、プリンにした時、一緒に食べる、その時まで。


 湿らせたふきんの上に小鍋を置き粗熱を取っておく。その間に、プリン本体の作成だ。



 殻はそのまま器にしよう。メロンみたいでおしゃれだし。真は殻の中の黄身にも和三盆を投入、卵本来の味を楽しみたいため牛乳は少なめに投入、ハンドミキサーで一気にかき混ぜる。さすが和三盆、前述通りの特性ゆえこちらもすぐ溶けた、プリン制作上、空気をあまり含ませたくないため和三盆は適した材料なのかもしれない。本来はこの液を越すのだが今回はこのままでいこう。少しでも量を減らしたくないしし、この黄身の膜なら不純物にはならないだろう。


 この卵、サラマンダーのだし耐熱皿みたいなもんでしょ、卵をそのままレンジでチン。


 料理にうるさいと思えば割といい加減な部分も多い、よくわからない男であった。


 チーン、レンジがなり卵を取り出す真。カラメルと一緒に粗熱を取る。この作業をさぼってはだめだ。デザートは繊細なもの。必要工程をいい加減にすると、完成度に、味に悪影響を及ぼす、逆に言えば手を抜ける部分もあるのだが。完成が楽しみだ、かぼちゃプリン色の特濃プリン、和三盆とのコラボレーション、絶対うまい。いつ食べよう、子供みたいだけど3時のおやつ、明日はちょうどその位にうちに帰れるし、コーヒーと一緒に食べよう。


 粗熱が取れたか確認、カラメルをかける。プリンの完成である。後は冷やしておいしくいただくだけだ。明日が楽しみで仕方がない。



 それなのに、…。



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