決戦、火蜥蜴その8
「まかせなさい!」
ななちゃんの声が聞こえた気がした。ここでシロエは意識を手放した。が、彼女の心は倒れない、盾を構え、仁王立ち、意識がなくとも火炎に負けなかったのである。
シロエは大楯を構えたまま、火炎を吐き続ける火蜥蜴の目前まで迫っていた。その姿は、赤褐色に、燃えるような色合いを携え、くしくも火蜥蜴と同色に変色していた。
その背後、ナナが飛び出す。一瞬呼吸を止め、大剣を振るう、それだけだ。私たちを貶めている元凶、こいつらを叩きつぶせば、残りは僅か。私だけでもかたはつく。大剣を盾に一気に詰め寄る。眼前だ、捉えた、私たちに牙をむいた礼はでかいわよ!
爆炎の中。踊るナナ、前進と回転、二つの力をもって大剣が振るわれる。相も変わらず鈍器として扱われる大剣、面でとらえられた火蜥蜴一団は、口から火炎を吐き続けたまま、吹き飛ばされる。爆炎の中、鉄塊が前進、その背後、人間が突っ込んでくるなど誰が想像できようか。この闘争の運命を握ったのは、バフの有無に互いを信じる心、どちらかかければ勝敗は変わっていただろう。
声にならない悲鳴が上がる、火炎を吐きながら発声もできるなんて器用な生き物だ。壁にたたきつけられのびる火蜥蜴。眼前にはいまだ火炎を吐き続ける数匹の生き残り、だが、火力が勢いが格段に弱い、数か心意面か理由はどちらでもよい、そろそろ幕をひこうか。
渾身の一撃を放ったナナ、獣の如く四肢で着地しそのままはねる、必死の抵抗を続ける火蜥蜴に引導を渡すため、腰を入れた上半身のバネを、飛び込みの勢いを力に変え、大剣を叩きつける。空気と火炎を裂き再び放つ渾身の二撃目、轟音、直後に訪れる沈黙。
遠方より様子見をしていた火蜥蜴はちりじりに散った。奥に出口に、この集団の解散、戦いの終結を意味していた。
「ふー、おつかれ、シロエ」
胡坐を組み座り込むナナは、地にめり込む傍らの大剣を剥がし、決死の抵抗をつづけた火蜥蜴の最後を確認、平たくなり絶命していた。
あんたたちを侮ったわけじゃないけど手こずったわ。人間2人相手なら、私とシロエのコンビ、いや、真も入れたトリオか。私たち以外の少数相手ならあなた達が勝ててたでしょうね、ご愁傷さまね。でもあんたたちの命は無駄にしないから安心なさい。
ナナは疲労した体に一呼吸、酸素を流し立ち上がる。命持つ者には敬意を払う、たとえ相手が敵であったとしても、その命を絶ったものとしての責任がある。
四方に、足元に数多く存在する屍、その後始末を始めるのだった。
この話で火蜥蜴との戦いはひとまずおわり、
次話からまた日常パートに戻ります。
一応主人公ですがしばらく出番のなかった真の出番です。
明日からも12時投稿を続けますのでお時間ありましたら、
覗いていただけると嬉しく思います。
ではでは~




