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決戦、火蜥蜴その4


 シロエが横穴から飛び降りる、ナナの盾となるために。

 

 辣腕を振るうナナの後方、火蜥蜴の集団が喉の袋を膨らませ火炎を噴く準備をしていた。ナナの付近にいる仲間ごと丸焼きにするつもりなのか、モンスターには仲間意識がないのか。自身も噴く火炎なのだ、耐熱性能が格段に高いのか知る由もないが。


 ナナが飛び出したのち、戦況を確認し、自らが出るタイミングを計っていたシロエはとっさに動いていた。耐熱のバフがかかっているとはいえ、親友がこのままでは大火に包まれるのだ。騎士のほこりなどもうない自身にも守りたいものはある。この盾は、鎧は飾りなどではない、大切な人を守るためのものなのだ。


 火蜥蜴の注意を自身に向ける、派手な登場が求められる。

 

 大立ち回りを繰り広げるナナの背後、連携を行えるポジションを狙い着地する。装備品を足した自重はかなりのもの、着地衝撃だけでナナの奇襲攻撃並みの被害を火蜥蜴たちに与えた。何が起きたのか、いや、自身が息絶えたことすら気付く間もなく絶命するひしゃげた火蜥蜴の哀れな姿がそこにはあった。


 岩肌が削れ、上がる土煙、金属と火蜥蜴が奏でる悲鳴、突然出現した鉄の塊に火蜥蜴たちは注目せざる得なかった。その隙を見逃すナナではない。



「ナイスよ!シロエ!私の背中はあんたに任せた!」



 場の空気をシロエが支配した一瞬の間、ナナのみは変わらずに大剣を振るい続けていた。シロエが私に続くのなら、チャンスかピンチが訪れるタイミング、場を有利に持ち込める戦場の空気を察してきてくれるとの信頼。ゆえに、背後に現われ隙を作ったのならば戦士〈アタッカー〉の自身は猛攻を、騎士〈タンク〉の彼女は鉄壁の布陣を敷いてくれるはずだ。前方のみに全精力をぶつけられる。私たちが組めば、相手は有象無象の集まりに過ぎないのだから。


 シロエの戦場への参戦で士気をあげ、振るわれる大剣に更なる磨きがかかる。もはや、大人と赤子、簡単に火蜥蜴を一振りで吹き飛ばし、踏み込みでつぶし、切り返しの際、発生するわずかな隙でさえ、片腕を振りあげ決死の特攻をバフで強化された肉体のみで対処、その勢いを生かし片手で大剣を振るう、連撃はとどまるいとまがない。



 火蜥蜴たちはその鬼神のごとき振る舞いを続ける人間に攻めあぐねていた、火を噴く暇さえない、そのそぶりを見せれば自身から圧殺される。もはやこれまで、数で押せないのならば勝機はない。願わくば、乱入した鉄塊側の同胞が放つ火炎にて焼き尽くす、それだけである。今ならまだ同胞の数は減ったとはいえ人間など焼き殺せる、その鬼神のごとき身体能力、肉はさぞうまかろうて。


 出目金目玉、その黒目を360度回転させ、舌を出し入れ、もはや動かぬ四肢に力はなく、絶命前のひしゃげたある火蜥蜴の最後の望みはかなった。鉄塊に覆いかぶさる爆炎、あれだけの、火力、熱量、中の人間はひとたまりもなかろうて、そして、鉄塊が崩れたのち、出来上がるであろう、鬼神の丸焼き、食せぬことが唯一の心残り。


 周囲の土を岩を、照り付ける心地よい爆炎を身に受け、その火蜥蜴はこと切れた。




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