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決戦、火蜥蜴その2


 バフをかける魔法、その使い手は“付与術師バッファー”と呼ばれ、希少な才能の持ち主であり、とても重宝されている。身体強化、耐性強化などがバフの中では一般的で、掛かりの軽い“弱”のバフでもわかりやすく効果を実感できる。


 こんな話がある。巨木に拳をたたきつけ自らの拳を痛めた者が、身体強化“弱”を受けたのち同じ行動をすると、巨木に拳をめり込ませ、拳に傷一つつけない肉体を一時的に手に入れたとか。


 パーティーにその使い手がいれば、各々は実力以上の力を発揮できる。まさに支援職の花形と言えるだろう。


 そんな貴重で希少なバフを料理という媒体を使いやってのける真。私たちの口からでた“神”という言葉はあながち見当違いではなかったようだ。


 さらに言うなら、私たちに必要な炎への対策用のバフがかかっているではないか。キムチ鍋といったか、あのやたら発汗を促された料理でかかったのだろうか。見た目も赤く炎を連想する料理でもあったし。それは今後問い詰めればいいとして、


 バフの持続時間が分からない。が、“食”から得たので、消化が完了するまでではないかと思われる。急いで戻って決着をつけるべきか。このバフのおかげで火蜥蜴など恐れるに足りないのだから。



 対火蜥蜴、集団戦の問題が取り除かれた。なんといっても“特”だ、“強”の上、このバフの掛かりならば吐かれる炎などおそるるに足りない、奴らなど何匹いようと問題なく狩れる。おまけの身体強化もある、体が軽い気がするのだ、もう逃げる必要はない。反撃の時間だ。



 この横穴奥へとたどり着いた時とは別人の雰囲気を醸し出し、 二人は意気揚々と歩き出した。その道すがら散歩中の会話を思わせる落ち着きで、



「ねえシロエ、私思ったんだけどね」

「なあに、ななちゃん」



 足並みをそろえて歩く二人、小柄ながら歩みの早いナナにシロエが合わせている。



「私たちコンビでずっと冒険してきたでしょ」

「そうだね、ななちゃんとの旅はハラハラドキドキで、クワククが止まらなくっていつも楽しいよ」

「ふふ、ありがとう、わたしもシロエとの冒険は楽しいわ、もうソロでなんて考えられないもの」

「うん、私を誘ってくれてありがとうね、ななちゃん、冒険者としての私はななちゃんがいなかったらとっくに廃業してたと思うし、本当に感謝してるんだよ」



 「なにいってんのよ」「えへへ」、いちゃつく凸凹コンビ、友情を確かめ合い、いい雰囲気だ。ダンジョン内でいまだ窮地に立たされているのは変わらないのだが。



「でね、そもそもなんで私たちがパーティーを組まずコンビを続けたかって話なんだけど、わかる?」

「えーと、私たちが“食”を最優先させるからだよね、やっぱり目的が一緒じゃない人たちとはソリが合わないし、私たちも合わせる気もないし、協調性がないもんね!」

「ん、ぅん~ん、まあそうなんだけどね、なんかあんたから言われるといまいち同意しづらいのよね」



 「なんで!」「ん~、まあ、いいじゃない」自身の方がまだましだと思うナナ。我が道を歩く二人、第三者視点では、五十歩百歩、大して変わりはないのだが。



「話がそれたわね、でね、私たち二人共“前衛職”じゃない」

「うん、“戦士〈アタッカー〉”と“騎士〈タンク〉”だもんね」

「そうなのよ、腕には自信はあるわ、コンビで結構功績残してるしね」



 自慢げに語るナナにシロエは合の手を入れる。



「ななちゃんと組んでからギルドの階級4つ上がったし、本当にななちゃん様さまだよ」

「私も同じようなもんよ、でもね私たちがいくら強くっても、相性とか人数とかどうしても覆せないことってあるでしょ、今だってそうだし」



 ナナは今回のクエストでの窮地を彼女なりに反省していた。コンビを組んでいるが、方針を決めるのは実質的にナナだ。シロエは気にしていないだろうが追い込まれた事実は記憶に新しいはず。

 ナナの出方を待ち、間を作るシロエ。彼女のこういう雰囲気をナナは好ましく思う。厚意に甘え続きをしゃべる。



「でね、そろそろ“トリオ”とか、できればパーティーを作ってもいいんじゃないかなって思ったんだけどシロエはどう思う?それとも二人でこれからもやっていきたい?」


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