みんなでごはんその7.5その2
「「…」」
無言を貫く二人。進むのは口に運ぶレンゲのみ。真はほっと胸をなでおろす、どうやら二人のお眼鏡にかなったご様子。
真も雑炊を掬い、箸をつける前に改めてのぞき込む。
なるほど、確かに卵が入っているとは思えないな、卵なしキムチ雑炊、いや白身が入ってるから若干色合いに変化はある、“ヘルシーキムチ雑炊”とでも名付けようか。しかし、その実態はサラマンダーの黄身入りって訳だ。調理した俺が見た目じゃ判断できないってどんだけ濃い色してだよあの黄身、さてさてお味はどうでしょう。
空気と共に口内に雑炊を流し込む真。
うん、うまい、当たり前だがものすごくうまい。間違いなく俺が口にした雑炊、№1だろう。舌触り、のど越し、風味、どれも一級品だ。その中で特に際立ってるのはやはり卵だ。
キムチの風味とだしの調和、そこに残るだし染みる具材、彼らはそれぞれに自己を主張していた、ゆえに広がる旨みを感じ取り三人で食し、瞬く間に量を減らしたキムチ鍋。そこに加わるニューメンバーお米、彼の登場により新たな主張が加わり場が乱れる、このままでは調和は取れない、食した今ならわかる。これを鶏の卵で食していたらここまでの完成度にはならなかったろう。
濃度が違う、口に喉に絡みつくようだ。旨みが違う、一口流し込んだだけだがいつまでも口内に残り続ける風味に味わい。そして何より調和がとれている、だし、キムチ、それらを吸った具材、お米、彼らの主張をまとめているのは間違いなくこの卵だ。市販の卵ではこうはならない。だが勘違いしないでもらいたい、鶏の卵が駄目なわけではない、サラマンダーの卵が素晴らしすぎるのだ。
また、黄身にばかり目が行きがちだが、白身の活躍にも目を向けたい。舌触りの向上に一役買っている。先入れはやはり大成功だった。
真は二口、三口目とかき込んでいく。その横でナナとシロエもその味わいに大いに満足していた。
なるほど、確かにうまい、白身の先入れは舌触り、のど越しに影響を与えるのね、そしてなりより黄身の存在が大きい。火を止めた状態で流し込み、つゆに、米に混ぜ込むことで半熟状態に仕上げったってわけね。なるほど、これはやられたわ、見た目なんて些細なもの、料理は味で勝負ってことね。
ナナはどんぶりに残る雑炊をかき込む。もっと食べたい、しかし鍋にはキムチ色の水たまりが残るのみ。食せないなら仕方ない、余韻に浸る。
黄身を半熟に仕立てたことで、米に纏わり付かせていた。それだけじゃない、あのスープも米に黄身と一緒に絡んでいた。そして周囲に漂う白身、具材、彼らが放つ主張を包み込み一つの完成された作品“雑炊”になるわけね。やるじゃない、真。あなたの“こだわり”たしかに受け取ったわ。
「おいしーねー、ななちゃん」
時を同じくしてどんぶりを空にしたシロエがナナに笑顔を向けた。
「そうね、おいしいわね、真、ごちそうさまでした」
「ごちそうさまです、真」
真に合掌しお辞儀をする二人、そのならわし、異世界でもあるんだな、そんな思いと共にやっぱりうまいものは場を和ませるんだなと思う真であった。
その食事を通して三人はそれぞれに感じ取った。今日という出会いと、食事に感謝を込めて。
明日は本編の続き、冒険パートを投稿していきます。
12時投稿になりますのでお時間ありましたら
目を通していただけたらと思います。
ではでは~




