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みんなでごはんその7.5その1

注、”みんなでごはん7,8”の間のお話です。

内容は調理工程と実食となります。

読まなくても話はつながる様にしますので、”食事シーン読みたかった方”向けのお話しになります。


「握手してないで“雑炊”食べましょうよ~」



 空気を読まずシロエから再び催促がかかる。焦れているのか大きな胸をテーブルに乗せ両手を投げ出している。その仕草、真の料理の期待の裏返し、あまり待たせるのも気の毒というもの。


 二人は、刻んだネギ、卵を持ってコタツに向かう。いよいよ待ちに待った鍋のシメ、“雑炊”の調理に入るのだった。


 真はまず、冷凍米を鍋に入れ加熱させる。わずかな水分が加わり、煮たった汁にうるおいが戻る。そこに、器に使っている殻から器用に半熟の白身を入れかき混ぜ火を止め、蓋をする。



「なんで黄身も入れないの?一緒に入れないわけでもあるの?」



 真の調理作業を黙って覗いていたナナからの質問、実はナナ、材料を見た時から“雑炊”の正体に気づいていた。料理名こそ違うものの“卵とじスープごはん”は食した経験があり、調理もした。それゆえの疑問、分けて入れる理由は何?

 ナナの真剣な眼差しに真は得意げに答える。



「食ってみればわかる、言葉よりも舌で感じてみてくれ」



 決め顔で答える真、顔を傾け不敵に笑う。かっこいいと思っているのだろうか。“ただしイケメンに限る”とはよく言ったもの、その仕草、似合う人物は限られるのだった。



「…そう、た、楽しみにしてるわね、真」



 若干引きつつ答えるナナ。真のやる気に水を差してもとの思いから多くを語らず、胸の内に勘違い男への感想をしまった。


 そんな気遣いつゆ知らず、調理を続ける真。しかし、この男も詳しく理解していなかった。ただ、白身先入れと黄身と同時入れでは口当たりが違う。実際に食した経験からの手順でしかなかった。

 

 異世界食材、半熟白身、試したことはないが鶏卵の生白身よりうまくいくだろう、程度の思考しか持っていないのだった。


 真の持論“料理はトライ&エラー”、思いついたら試してみるが悪い影響を与えなければよいが。二人の期待値は依然高い、下手なものを出せば機嫌を害した二人に危害を加えられる可能性があることを真が知らないのがまた何とも言えない。


 “食”に忠実な三人だがそれぞれが、別のこだわりや主張を持っており、妥協はしない。


 キムチ雑炊の色合いの如く、真っ赤な汁が流れ出る真が完成しなければよいのだが。



「こっれすげーなあー、弾力も濃度もサイズも規格外だよ」



 真が殻の中に残った、黄身を溶こうとしている。箸を前後させ手首のスナップを利かせているが、ゆれる箸の動きについてきている。どれだけの濃度に鮮度があればこんな黄身になるのだろうか、いや、異世界食材に真の常識を持ち込む方がナンセンスなのかもしれないが。



「貸してみなさい、こうやるのよ」



 おもむろに卵に刺さったままの箸を真から受け取るナナ。両手で箸を一本づつ持ち広げる。すると、今まで箸に付き従っていた黄身がついに崩れた、オレンジ色の液体が広がる。濃度がやはり高い、ナナが持ち上げた箸にはオレンジ色の橋がかかる。

 その色合いだけ見れば、ブラッドオレンジジュースを思わせるほどだ。



「すげー、俺も割りたかったー」



 やはり、未知の食材はおもしろい、真の語彙力が低下していた。ナナは気にした様子もなく「続けて、早く食べましょ」、寝転がっているシロエを見やり真に卵をかえす。


「まかせとけ」と応じ、液状と化した黄身に箸を、一度二度と往復させ、具合を確かめる。やはり上物、買ったらいくらするのだろうか、そんな思考をしつつ、鍋の蓋を開ける。上がる湯気、匂いに変化はないが見た目に変化があった。


 赤い汁に、米が、白身が半熟のまま浮かんでいる。そこに濃い液状の黄身を、スポンジに生クリームを絞るように円を描き流し込む。黄身の容量の7割ほどを流し込みお玉で三度かき混ぜる、そしてネギを散らし蓋をし、弱火で着火した。



 その作業を見て、ナナは口をはさみたく思うも押し黙った。真なりのこだわりがあり問うても、食べてのお楽しみと返されるのがおちだと判断したためだ。


 その判断は間違っていない。だが、単なる好みの問題でもある。かきたま汁をご存じだろうか、少しとろみの利いただし汁に卵を溶きながら入れる、卵がわかめを思わせる具となり彩る。三つ葉などを散らすと目でも楽しめる一品となる。

 

 もしかき混ぜずに蓋をしたならば、表面で火が通り固まり、のちにかき混ぜることでかきたま汁の卵と同じ感じの仕上がりとなる。しかし、真は混ぜたのちに、蓋をし、火をかけたこの些細な違いで何が変わるのか、それは、



「完成だ、どうだ!」



 蓋を開ける真、湯気とともに現れる鍋、その姿は、

 

 蓋をする前とあまり変化はなかった。

 

 それもそのはずである、キムチ鍋の汁と黄身はほとんど同色をしていたためだ。特濃な黄身が仇となったのだった。



「「なんも変わってないじゃない(ですか)」」



 二人から罵倒が飛ぶ。散々あおったのだ、期待値が高くつきすぎた結果だ。



「なに興奮してんの!落ち着けって!食ってから文句言えよ、今が食い頃でタイミングのがすと固まるぞ!」



 固まる?何を言ってんだこの男、ボルテージはなおも上がる、先ほどまで寝転がっていたシロエまでもがだ。このままでは、暴力を振るわれるのでは、身の危険を感じた真はせっせと二人に雑炊をよそい手渡した。食べれば大人しくいなってくれるはずだ。だって、うまいはずだもの、食事は笑顔でするもの、怒りや悲しみを携えてするもんじゃないのだから。


 出された料理は無下にはできない、そもそもおいしかったキムチ鍋、真の手により見た目がどれだけ変わるかと期待をし過ぎた自身も悪い、二人は大人しくレンゲでを口に運んだ。



作者の独り言なのであしからず。


キムチ雑炊を作る過程と食べる場面(2パートに分けたため”その2”にあります)でした。

ですがこの話、お蔵入りにしようと思っていました。

理由は二つあります。

一つは、”みんなでごはん”が長くなり、話がだれていないか心配な点。

一つは、後書きにて後1話でこのくだりが終わると記載した点です。


ではなぜ投稿したかという話です。

昨日2話目の投稿をしようと当サイトを覗いたとき、”バフめし”のブックマークが減っていました。この点を作者が嬉しく思ってしまったためです〈ドMではありません〉


作者の勝手な解釈ですが、この作品”バフめし”ですから、ごはんシーンを期待してくださっていた方が”こんだけあおって雑炊食うシーンねえのかよ”と外されたのかなと思いました。

もしそうなら、作者冥利につきます。裏を返せばそれだけ楽しみにしていただけていたということですから。


願わくばこの話の投稿のきっかけをくださった方の目に入る機会があれば〈余計なお世話でしょうが〉と思います。


長くなりましたが以上です。

ではでは~

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