みんなでごはんその2
「おかわり!はやくよそいなさい真!」
どんぶりを真に押し付け催促する。渋い顔で受け取り、自分でやれと口に出そうになりつつ従う真。
「ちょ!あんた身を乗り出し過ぎ!狭いんだから気をつけなさいよ!」
テーブル中央に鎮座する携帯コンロ上の鍋、おかわりを掬うため深く入ったのでコタツの中でナナの足とぶつかり瞬時に蹴られる。理不尽すぎる。
「ちょ!ななちゃん、いくら何でもわがままが過ぎるよ!真さんに悪いよ」
常識人のシロエさん、さすがです!もっといってやってください。
「ばかねシロエ、よく考えてみなさい」
「ん、なにを?」
「“簡易テント”を使ってこの部屋に入った時点でこの部屋は私たちの物じゃない?」
「うん、そうだね」
そうだね。じゃねーよ!なにトチくるってんだよ俺の部屋だろ!こちとら家賃払ってんだよ!真はこめかみをピクつかせる。
気にした様子はなくおかわりがよそられたどんぶりを真の手からひったくるナナ。レンゲで豆腐を口に運びつゆを一口すすり、会話を続ける。
「で、その私たちの部屋でこの男は生活してる訳でしょ」
「うん。真さんの部屋でもあるわけだからね」
「そうね、今まではそうだった、でも今日からは私たちの部屋なの。そこに住んでる真は私たちの部屋に ある物、つまり私たちの所持品といっても過言ではないんじゃないかしら」
「あ!なるほど!さすがななちゃんあたまいい!」
「さすがななちゃん!じゃっあなぁーい!」
「っさいわね!急に怒鳴らないで!」
黙って聞いていた真だが暴言の数々についに声を荒げてしまった。
「真!うるさいです!私にも黙っておかわりをよそってください!」
口調こそ丁寧なものの急に強気になったシロエが真にどんぶりを差し出す。イラついた真は細めた目でシロエを見やる。
「っひ!ごめんなさい嘘です冗談です。自分でやります!」
シロエは自ら鍋からおかわりをよそった。
真は思う。なんなのこの人たち、ひとんちでやりたい放題かよ!
「シロエをいじめんじゃないわよ!」
げしげし蹴られる。小さな体からは考えられない力強さだ。普通に痛い。痣ができたらどうしてくれる。
「おまえら鍋食ったら帰ってくれよ」
足をさすりながら真は訴えた。
「そんな態度とったらどうなるか分かってるの?」
ナナが畳に突き立てている傍らの大剣の柄に手をかけスマイルを向けてくる。
「…何でもありません、どうぞ好きなだけおくつろぎください」
「わかればいいのよ」
俺が何をしたというのだ。扱いが酷すぎる。
110番して、異世界から不法侵入した二人組が居座ってます。助けてください。なんて通報しても信じてもらえないだろうし逆に精神状態をを疑われてしまう。
万一、警察が来てくれても、俺がしょっ引かれるだろうし。
どんぶりをかき込んでいる二人の服装を見る。
まずナナだ。着古したためワンピースのように伸びてしまったひーとてっくを身に着けその上から彼女が着用していた、本人曰く鎧らしいブラを身に着けている。以上。
マニアックな格好だ。俺の趣味ではない、彼女が着心地いいじゃないと勝手にやってるだけだ。入浴前はツインテールだった髪型が、髪が痛むからと今は腰ほどあるストレートヘアでながしており、幼い印象はない。黙っていれば美少女、黙っていればだが。
次にシロエ。そもそも俺より身長が高くがたい良し、スタイルが良いと言い換えもできる。そのためサイズがあっていなかったキャラものTシャツは胸囲の影響でいびつに歪み、お腹を丸出し。だから着てもらったジャージのチャックも胸囲の影響で上げきれず、胸を強調していた。
これまたマニアックな格好だ。さらにボブカットのやわらかそうな髪型で本人のおっとりした雰囲気もあいまって、ナナとは別タイプの美人さんである。
風呂上がりにナナは、なにげなしに口にした。
「この世界にも治安維持部隊ってあるんでしょ?もし私たちを売ったら、変態に監禁されて、この格好を強いられてますって訴えるからあんた、社会的に死ぬわよ」
「私たちとあなたの言い訳、どっちを信じてもらえるんでしょうね」口角を三日月がたにあげ、追加の一言。二人は自身の見た目を最大限利用する気だ。涙ながらに訴えられたら弁解の余地なく俺がパクられる。
この瞬間、力関係は決定的となった。YESマン真の誕生である。
前科をつけたくない真はおおらかな心で二人の面倒を見るのであった。
今後の投稿時間についてです。
月~金、平日は12時
土、日、休日は19時頃(基本、作者手動投稿のため時間は前後しますが)
ここまで目を通してくださっている皆さまへの報告でした。
なるべく毎日投稿続けますので、明日以降も隙間時間に覗いていただけたらうれしく思います。
ではでは~




