あか
その日の夜、新聞の隅どころか朝刊の一面を飾るような大きな事故が街で起こった。布団で寝つけなかった僕はもちろん、熟睡してた人だって目が覚めるような大きな音と振動が駅の方から響いた。
僕は慌てて飛び上がり窓に駆け寄る。アパートの二階からでも、遠くの空に赤い炎と煙が見えた。
妙な胸騒ぎがして、僕はすぐに自転車に飛び乗った。途中で、何人もの人とすれ違い、何度もけばけばしい色の赤いランプの車に追い抜かれた。
地図も案内もいらない。目立つ真っ赤な目印。光に集まる蛾と同じように、ひたすらにペダルを漕ぐ。
やがて、大きな野次馬が囲うスペースに僕は滑り込む。自転車は近くの塀に立てかけ、人の間を縫うように進む。
人の壁を越えたとき、どばっと強い熱風が僕を覆った。息を吸い込むのも辛い。口から吸いこんだ空気が肺の中から全身を熱するみたいだった。
サイレンの赤と、炎の赤。
夜中の無人のガソリンスタンドが、一台の車と一緒に燃え上がってる。そして、放水の音や野次馬の声をかき分けるように、聞こえるはずがないのに誰かの苦しみ叫ぶ声が聞こえた。誰かが、燃え盛る炎の中にいる。
車から少し離れたところに、一枚のナンバープレートが転がっていた。その番号を捉えたとき、僕は叫びだしそうになった。熱にやられて声は出ないけど、はっきり見てしまった。零と七を含まない四つの数字、それぞれ左から足して掛けて割ると七になるあの番号は、僕が昼間必死に探した番号だったから。
吐きたいのか泣きたいのか自分でもわからない。ただ僕は自転車に乗るのも忘れて、まるで何かから逃げるみたいに走り出していた。
気がつけば、僕は何度も通い慣れた廃ビルを目指していた。