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欧州骨董買付帳  作者: ふくろう亭
集荷
37/40

37 説教タイム

 初日の商いは順調に終わった。

戸締まりをして「飯でも」という流れになる。

 「わーい、社長のおごりだあ」ずいぶんとわざとらしい反応だ。

 「センセ、あそこ行こううよ、新しく出来たイタリアン」先日開店したてのところか。

 「あそこって結構な高級指向ですよね」普通のパスタランチなんてメニューにはないらしい。

 「いつの間にそんなのが出来たんだ」

 「うーん、社長が出張してる間にね、ほら前に××ってお店あったでしょ、去年閉店した」

 「あー、出来て半年で潰れた○○ビルの一階のところか」私は知らなかったが、うちの店からはそう遠くはない場所にあるビルの店舗だ。ご近所さん情報によれば、大人の隠れ家的デートスポット的オシャレな店らしい。味は知らないとのことだったが、年に一回ぐらいのペースで中の店が替わっているらしい。通りすがりに見る限りでは結構お客さんは入っているようだが。

 「またあそこか。どうせ居抜きでホイホイ入ったんだろう」なんかいわくでもあるのか。

 「ああ、知らなかったか。四五年前に出来たテナントビルなんだがどうも居着きが悪いところでな。ありゃ一度お祓いでもしたほうが良いな」あまり外では大きな声で話題にしないでください。

 「幽霊ビルって言ってなあ、ガキの頃はよく遊んだなあ、大体あそこはなあ戦前は…」

 「今から行くんですからやめてください」

 入ってみるとたしかにオシャレな内装だった。

 仕事柄私達は内装や什器にどうしても注目してしまう。壁紙やテーブルなどはシンプルな現代風でまとめている。ここに中途半端なアンティークもどきを使われてしまうとまことに気持ち悪さを覚えるのだが、そこは及第点だ。まあ最近はこういうのが普通らしいが。

 親方がメニューを見て目を剥いている。若い頃から六本木や西麻布をうろついていたらしい親方は、イタリアンにもうるさい。ロンドンあたりの半端なイタリアンだと味に文句をつけかねない。しかしメニュー段階ではまだ不満をだすには早すぎるのでは、と思うのだが。

 「まったく、フレンチでもあるまいによ。ほれ、好きなもん頼め」なんかヤケだな。普通にミネストローネとなにかおすすめでも、とメニューを見るのだが…これは…。

 「高いですね」隣のお嬢を見ると、さも当然という顔をしている。

 「私はコースで行こうかな。いっぱい働いたからおなかすいちゃった」なんと5桁以下のものはご所望ではないらしい。親方が口を挟もうとするのを制しして。

 「領収書はとりませんからね。お父さんのポケットマネーでごちそうしてよね」あー、これは怒ってるな、親子の揉め事にはかかわらないようにしよう。

 「お兄ちゃんは何にする?コース?それとも色々とってシェアする?お父さんのおごりなんだから一杯食べましょうね」

 味は悪くはなかった。ま、リーズナブルからは 程遠いな。ここいらだとどうなのかな。最近の事情には疎くなっているのでよくはわからないが、少なくとも私はもう来ることはないだろうな。お嬢の鬱憤晴らしと思えば安いものですよ親方。

 店に帰ってからは説教タイムだった。店をほったらかして一ヶ月以上も旅行に出てりゃ当たり前でしょう。でも私を巻き込むのはやめてほしいです。

 

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