26 日本土産
ナイトだのアドバイザーだのと、人のことを勝手に言ってくれるものだ。それでも逆らっても仕方のない人たちのおっしゃることでございますので、ここはジャパニーズ・スマイルでごまかして置こう。
「そうね、確かに彼はサムライの子孫だからナイトでも良いのかしら」また余計なことを。
「えっ、本当に!」
「本当よ。最後のショーグンと一緒に戦ったサムライの子孫なのよ」
「そうなのか。我が家のご先祖にもあの時の日本に滞在していた人がいたんだよ」
「あらそう。なにか記録でも残っているの?」
「うん、写真や日記や記念にと持って帰った品物もあるよ、カタナとかウキヨエとか」
「まあそうなの。機会があれば一度見てみたいものね」
なんか突然盛り上がりだしたな。
「是非見に来てよ。ああそう言えばここにも有ったな」そう言いながらEDは振り向いて部屋のドア近くに立っていた男性に声をかける。そう、一人そこに居たんです。執事さんでしょうねきっと。
声をかけられた彼はうなづくと静かに部屋を出ていった。
「ほとんどは田舎にあるんだ。その方の直系はもういないのでうちが全て保管しているんだ」
ノックとともに執事さんがもう帰ってきた。手には布に包まれた長い箱を抱えている。
「これだけはこっちに有ったんだ、護身用にでも使うつもりだったのかな」
テーブルに置かれたそれの布を広げると一メートルほどの木箱が出てきた。表には毛筆で箱書きがある。EDは無造作に木蓋を開け中から一振りの刀を取り出した。白鞘ではなく黒漆の鞘に鍔のついたままの状態だった。ここまで来ては黙ったままというわけにも行くまい。
「失礼ですがずっとこのままの状態だったのでしょうか。お手入れなどはなさったことはないのでしょうか」
「ん、手入れ?ちょっとわからないな。昔子供の頃、勝手に開けて怒られたことはあるけど、それ以来箱にはいったままじゃないかな」そう言いながらEDは執事さんの方を見る。
「さようでございます。大変危険なものとのことでそれ以来出したことはございません」
わあ、こりゃ赤錆刀かな。ダイアナは興味津々私に命令する。
「ねえ鑑定してちょうだい、なんかロマンチックで面白そうだわ」
「なに、彼は鑑定も出来るのか、すごいな是非見て欲しいものだな」
「当然よ、私の個人的アドバイザーなんだから」好き勝手だな。しかし私にも好奇心はある。ギリギリ自分の守備範囲だしね。
「あまり自信はありませんが」とことわってからEDから刀を受け取る。黒漆に見えたがよく見ると梨地でそれなりの物のようだ。鍔は凝ってはおらず、実戦的なもの。そっと鯉口をきってそうっと抜いていく。すっかりくすんではいるがサビはあまり無い。予想以上に良い状態だった、手入れをすればだが。
「これなら分かるかもしれませんね、ちょっとお借りします」いちおうことわってテーブルに置かれたナプキンを刀身に巻きつける。いつも持っているスイスアーミーナイフを取り出した。箱の中には手入れ道具らしいものが入っていなかったのだ。目釘を抜き柄を外さねばならない。ここにも錆は少なかったようでトントンとたたくだけであっさり抜けた。
「まあ分解できるのね、手品みたい」手品師は貴女でしょう。
幸い銘が刻んである。備前のものらしいが銘に覚えはなかった。仕方がない、聞いてみるか。今度は携帯電話を取り出した。
「朝早くからすいません、ちょっと教えて下さい」東京の親方を頼ることにした。
(買い付け時の注意)
日本刀は数多く海外に渡っています。明治の頃と二次大戦後が特に多かったと思います。基本的に記念品であり、お土産物としてですから装飾的な外見が好まれたようです。私が海外で見て一番驚いたのは鯨骨を使った拵えのものでしょうか。まず今の日本ではお目にかかることがないですから。あまり良い趣味とも思えないのですが。手入れなどまともに出来ていない物が多くて、ほとんど素人の私だと銘を見るのも苦労します。制作年代が特定できないと日本への持ち帰りが面倒になりますからね。




