18 可能性の話
整地されていて起伏が少ないところなら、線路を設置するのはそんなに難しいことではない、土木工事としては重機をあまり使わなくてすむ。ただしマンパワーはかなり必要だ。ここならどうだろう、勤労奉仕は期待できないでしょうか。
「ボランティアってこと?」
「いえ、何らかの報酬がなければいけないでしょうが」
「あなたねえ。それにしたって幾らいると思うの」
そりゃあ億の単位の話ですね、日本円なら。やっぱり無理ですかね。人件費だけ考えても1キロメートルあたりの工事費用だけでも相当なものになりますよね。じゃあせめて動くところだけ見せて呼び物にするという手もあるか。
「現実的にはそんなところでしょうか」
「デモンストレーションで見せるということね」
そういうことです。
「そんなことで人が来るの?」
「少なくとも日本でなら、いっぱい来ますね」
「まあ良い国ね、少なくとも半世紀前のここには、あんまり人は来なかったのに」
当時と今とでは取り巻く環境が違う、と思う。日本だってその頃ならローカル線では蒸気機関車はまだ使われていた。その路線に観光客が群がったという記憶はない。今話題になるのはあくまでもイベントとしてもてはやされているのだ。それはここでも同じにならないか。
「あくまでも可能性よね」
「それはそうです、予測の話です」なんの保証もない話だ。さっき思いついただけの。
会話が途切れる。そうなるとただ見つめ合っているだけという状態になってしまう。彼女のおおきな瞳で見つめられていることを意識してしまうと、気恥ずかしさを覚えて私は視線をそらしてしまう。
「貴方随分と積極的ね、この話に」
「結構気に入りましたからね、この街を」湖の方を眺めながら応える。
「ひどい目に合わせたのに」
「そうでしたね。でもまあ、失ったものも帰って来そうですし」帽子をとり手で頭をなでてみた。確かにざらりとした感触がある。「貴女にはとても感謝しています」
彼女は手を伸ばし私がかけていたサングラスを取り去った。
「どういたしまして、そう言ってもらえると嬉しいわ」
そして私の額を優しくなでた。
「眉毛はまだ時間がかかりそうね」そう、顔を洗う時に感触でわかるが、今の私の顔はツルツルだ。
「あら、風が冷たいかしら。耳が赤いわ」その手は耳をふわりと覆う。おそらく顔も真っ赤になっているのだろう。
今度は何も言わずに彼女は私に口付けたのだ。
(買い付け時の注意)
さすがに鉄道関係はあまり出会ったことがありません。プレートなどの小物は別として。一般的な骨董品とは、どこか線引がされているような気もします。
線路を引くのにどれくらいの予算が必要なのかはサイズにもよりますので本当にピンキリのようです。トロッコ程度のものから広軌の大型まであるんですから。でも重機などない時代から作られて来ているわけですから決して無謀な話でもないと思ったんですが…。




