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欧州骨董買付帳  作者: ふくろう亭
買付
11/40

11 生えてきた

 「あなた少しだけど復活しているわ」

 なにが、と聞き返すまでもない。私はすぐに頭に手をやった。そう言われれば、なんとなくだが手のひらにひっかるような感触がある。

 「ふふ、わかるかしら、毛根が生き返っているのよ。効果があったようね」

 ダイアナは自慢げに微笑みながら私を見つめる。主に見つめられているのは頭なのだが。

 彼女は毎日、何度もわたしの身体に術を施していた。術といってもリチャードの行ったようなものではなく、何かわからない液体や粉末状のものをふりかけてからマッサージのようなことをするのだが。それが効いたのか。まあ彼女はそれが効いたと言いたいようだ。

 「よくわからないけど、そうなのかな」頬も触ってみるが、こちらはまったく手応えがない。眉毛もまつげもスベスベのままのようだ。

 「毛根のサイズの問題ね、太い方から回復しているのよ」

 「すごいな、髪の毛だけだとしても。世界中の髪の毛が不自由な人々が大喜びするんじゃないか」

 そうなれば大儲けだな。

 「かつらってね大昔からあるのよ。髪の毛がなくなるってみんな嫌だったのね」

 「そうなんでしょう。たまにマーケットでも見ることがあります」

 「まあ!あんなものが売り物になるの?」

 「どうでしょう、少なくとも私は仕入れませんでした」特に事情がない限り。美しくないものは仕入れたくないものだ。

 毛生え術というのは随分と古くからあるものらしい。数百年続くというこの家の歴史の中でも、初期にすでに存在しているとのことだ。

 「そういう需要に応えることで存立してきたの」ということらしい。

 国の始まりの頃は「便利屋」的存在だったご先祖様が、実績を重ねるうちに王様から重宝され、ついには叙勲され貴族となったと家史にはあるそうだ。すごいな。

 「だったらこれくらいは簡単なことじゃないの」

 「そうでもないのよ」そもそも数ヶ月単位で効果をみるもので、効かないことも多い。まして今回は原因が特殊!なのでどうなるかは全くわからなかった。だから色々と試していたうちのどれかがが当たったようだ。

 「あとはなんとかなりそうね、日数の問題だけだわ」

 みるみるうちに生えてくるようなものではないそうだ。そりゃそうだろう。

 「外に出るにはまだまだ掛かりそうだな」ついそうつぶやいてしまう。

 「あらそんなにここにいるのは嫌なの、わたしのお世話では退屈なのかしら」」頭ではなく目を見つめて拗ねるように微笑まれた。

 「いやそんなことは…」もう何日も滞在しているのに、この街を散策さえしていない。観光ガイドに乗るくらいには名の知られたところなのに。中世から残る古い街並みや風景にも興味があるし。などと思わず動揺して言い訳を重ねてしまった。

 「ふふ冗談よ。あなた言い訳が下手ね」からかわれただけのようだ。

 「外出なんか簡単よ。ちょっと準備が必要だけれど」

 午後から街の観光に行く事になった。

 

 

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