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炎の神子様は大精霊ではございません  作者: 江本マシメサ
第三章 【王都にて、氷解】

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第八十一話 大召喚――結果は

 翌日、午前中はゆっくり休み、午後からは荷物を纏めて鼠妖精ラ・フェアリの村へ。

 もちろん、新婚旅行先である。一週間ほど、ゆっくりと過ごす予定だ。

 村ではたくさんの鼠妖精ラ・フェアリ達が迎えてくれた。

 とても嬉しいし、みんな、可愛いよ。

 チュチュも里帰りできて、嬉しそうだった。

 お義母様も一緒にきていて、可愛らしい鼠妖精ラ・フェアリを前に、目を細めている。

 メルヴと炎狼フロガ・ヴォルク筋肉妖精マッスル・フェアリとの再会を喜んでいた。

 夜は私とアルフレートの結婚祝賀会が行われる。

 領主城の大広間に集まって、賑やかな会が催された。

 鼠妖精ラ・フェアリ騎士団の剣舞から始まり、奥様方と娘さんの華麗なダンス、男衆の名物皿回し、お祝いの歌の斉唱など、いろんな出し物を見せてくれた。

 最後のおおとりは、筋肉妖精マッスル・フェアリ達の華麗なる舞い。

 鼠妖精ラ・フェアリ達はうっとりと見入っていたけれど、美意識が違う私とアルフレートは、若干白目を剥きそうになっていた。

 ひらりとスカートの布がなびけば、露わになる立派な太もも。

 う~~ん。なんとも言えない。


 途中、チュチュのお父さん――村長が果実汁を注ぎに来てくれた。


『早々、賑やかにしてしまい、申し訳ありませんでした』

「いや、祝ってもらえるのは、嬉しく思う」


 アルフレートの言葉にコクコクと頷いて同意を示す。


『実は、エルフリーデ様を見た瞬間に、こうなるのではと誰もが予想をしていました』

「私達が結婚をすると?」

『はい』


 なので、アルフレートの妻となる人という意味で、私のことを『炎の御方様』と呼ぶように指示をだしていたらしい。知らなかった。


 当然ながら、精霊ではないことには気付いていたとか。

 魔力の質で違うとバレていたらしい。何か理由があるのではと思い、黙っていたと言う。


「知らぬうちに、迷惑をかけたていたな」

『いえいえ、とんでもないことでございます。殿下がお幸せそうな様子を見ていたら、私どもも大変幸せです』


 村長の言葉に、じんわりしてしまう。


『妃殿下も、とても麗しく――』

「あ、うん。ありがとう。ドレスも、なんか戴いちゃって」

『ええ、とてもお似合ですよ』


 今着ている薄紅のドレスもお祝いの品だった。可愛らしい意匠デザインなのでちょっと恥ずかしいけれど、似合っていると言ってもらえてホッ。


 久々に鼠妖精ラ・フェアリのみんなに再会できて、大変癒された。

 端に座るドリスも頬を染めて、うっとりと眺めている。彼女の鼠妖精ラ・フェアリ好きは相変わらずなようだった。


 夜も更け、祝賀会はお開きとなる。

 私達は眠らずに、召喚陣が敷いてある地下部屋に移動した。

 村に行かずとも、ここへは頻繁に来ていたので、懐かしさも何もないけれど、階段を降りてやってくるのは久々だった。

 今宵、ここでメーガスの召喚を行う。

 アルフレートの魔力をもらったので、力は有り余っていた。成功する気しかしない。


 召喚の準備は整った。呪文も暗記している。


 あとは、メーガスが困った状況にいれば、ここに現れるような仕組みになっている。

 同じくらいの魔力量をアルフレートからもらえば、元の時代に戻すことだって可能だ。

 大丈夫。

 自分にそう言い聞かせ、杖を握る。

 トンと杖の先端で地面を打てば、魔法陣がほのかに光る。

 息を大きく吸い込んで、呪文を唱えた。


 ――求めよペティエ・求めよペティエ・求めよぺティエ・さすればエト・汝は求めるものをアッキピ受け取るだろうエーティス叩けプルサー・テエト・叩けプルサー・テエト・叩けプルサー・テエト・さすればエト・叩いた門がアペリ汝が汝の為にエートル・開かれるだろうウォビス……


 妖精召喚にも使われる呪文は、通常魔法にも引用される。

 詠唱が終われば、魔法陣が強く発光した。中から、強い風が吹きつける。

 杖を構えたまま、風圧に耐える。歯を食いしばっていれば、ぶれそうになっていた杖を支えてくれる人が。


「アルフレート!」

「もうしばらくの辛抱だ」


 私を召喚する時も、こんな感じだったらしい。

 アルフレートは私の杖と、腰を支えてくれた。


 ひときわ大きな光に包まれる。

 我慢できなくて、瞼を閉じた。


 しばらくすれば光が治まったので、瞼を開いた。

 魔法陣には――人影が!


「なんだ、この、クソ……」


 聞こえて来たのは、懐かしい声。


「空気が、明らかに違うな――」

「うわ~~ん、師匠せんせい~~!!」

「!?」


 魔法陣の上に胡坐を組むその人に抱きついた。


「な、その声は――」

「会いたかったよ~~」

「エルフリーデか!?」

「そうだよ」

「お前、今まで、どこに」

「召喚されていたんだ」

「召喚……?」


 改めて、メーガスの姿を確認する。

 いつもの神官の黒い外套ではなく、白い貫頭衣を纏っていた。これは寝間着ではなくて――。そこで異変に気づく。


「離れろ、エルフリーデ。もう、随分と湯を浴びていない」

師匠せんせい……、もしかして……」


 メーガスはまっすぐに私を見ず、見当違いの方向を向いている。

 多分、視力を奪われているのだろう。


「目は、どうしたの?」

「ああ、これか。罰としてちょっとした術式をかけられただけだ」

「そんな……!」


 私のせいで囚われ、呪いをかけられていたのだ。

 けれど、メーガスは違うと首を振る。


「長きに渡り、俺は魔導教会のやり方に疑問を覚えていた。いつか、反抗してやろうと考えていた。けれど、実行に移す矢先に、お前の教育係りを押し付けられた」

「そう、だったんだ」

「ああ。だから、お前がいなくなって、ちょうどいいと思った。でもまあ、失敗して、このザマだ」

『エルフリーデ様』

「あ、うん」


 積もる話はあるけれど、メーガスはとっても疲れているように見える。

 ゆっくりお風呂に入って、休んでもらわなければ。


「エルフリーデ、お前は、優しい人達に呼ばれたようだな」

「そう。そうなんだ。だから、師匠せんせいがずっと辛い思いをしていたことが、悲しくて――」

「老い先短いジジイのしたことだ。気にするな」

「でも……」


 けれど、良かった。こうして再会できたのだ。


「あ、そうだ。こっちの国の人を紹介するね」


 まず、近くにいたホラーツを紹介する。


「私を召喚してくれた賢者、ホラーツ。凄いお爺ちゃんなんだよ」

『初めまして、ホラーツと申します』


 握手を交わせば、想定外のモフモフにメーガスは驚いていた。

 猫妖精フェアリ・ケッタであることを言うのを忘れていた。


『呪いは私にお任せください。きっと、解呪してみせます』

「ああ、すまない、頼む」

『ええ、お任せを』


 ホラーツの話を聞いて安心した。メーガスの視力は治りそうだった。


「えっと、それで、こちらが、アルフレート」


 リードバンク王国の第五王子様で、凄く神経質そうな男前で、けれどとっても愛らしい人で、それから、私の旦那様。


「エルフリーデ、お前、結婚をしていたのか!」

「そうなんだ」

「少しは、色っぽくもなったか?」

「ごめん、多分なっていない」


 アルフレートはメーガスの目の前に片膝を突く。


「はじめまして、メーガス殿。アルフレート・ゼル・フライフォーゲルと申します」

「貴殿が、エルフリーデの夫か」

「はい」

「そうか……」


 手を伸ばして、すぐに引っ込めようとするメーガス。アルフレートはその手をしっかりと握った。


「ご挨拶もできない状態で、結婚したことを、申し訳なく思っています」

「気にするな。アレは、私の孫娘でもなんでもない」

「いいえ、エルフリーデにとって、あなたは家族でした」 


 二人の話している様子を見ていると、涙が滲んでくる。

 良かった、会えて。本当に良かった。


 その後、メーガスは休養させるために、一階の客室に移った。

 食欲もあるようで、ひと安心。


 元気になってから、またたくさん話せたらいいなと思っている。

▼notice▼


大召喚

多大な魔力を必要とする儀式。

エルフリーデは夫アルフレートからもらった魔力を元として、見事成功させた。

世界的な禁術の一つで、周囲の人には内緒にしている。

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