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炎の神子様は大精霊ではございません  作者: 江本マシメサ
第三章 【王都にて、氷解】

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第五十六話 お引越し――王都へ!

二話更新していますm(__)m

 とうとうやってきた、鼠妖精ラ・フェアリの村人との別れの日。

 地下の転移陣から王都に行くので、領主城の玄関先で見送りを受ける。


『アルフレート殿下、エルフリーデ様、本当に、お世話になりました』

「ああ、村長も達者で」

「元気でね」

『ええ、ええ……娘のことも、よろしくお願いいたします』

「任せて」


 お宅の娘さんは、私達が幸せにします。

 そんなことを思いながら、しっかりと握手を交わし、最後に抱擁する。


 うわ~~、村長ふかふかだよ~~。


 そんなことはさておいて。

 鼠妖精ラ・フェアリの村人達も、大勢見送りに来てくれた。


 いつでも帰っておいでとか、お休みの日は遊びにきてねとか、嬉しいことを言ってくれる。

 そんなに温かく見送られたら、涙が……。


 長くここにいたら辛くなってしまうので、ほどほどのタイミングで引き上げる。

 アルフレートは村人達に手を振り、微笑みかける。その瞬間、キャアと奥様方の黄色い声が。気持ちはわかる。さっきの笑顔は爽やかで素敵だった。

 最近、たくさん笑ってくれるようになった。それだけ、心に余裕もできたのだろう。

 鼠妖精ラ・フェアリ達も、感激して目がウルウルしていた。

 ホラーツは杖を掲げてから、会釈をする。

 アルフレートを陰で支えた一番の功労者。鼠妖精ラ・フェアリの相談ごとにも耳を傾け、丁寧に助言をしていた姿はよく見かけていた。

 村のみんなも、別れを惜しんでいる。

 チュチュはみんなの期待を背負っていくようだ。

 頑張り屋で健気な彼女は、どこに行っても愛されるだろう。

 ドリスは、深々と村人達に頭を下げていた。

 彼女は前領主の奥様で、最初こそ警戒されていたみたいだけれど、今はすっかり打ち解けていた。ドリスも老後はこの村で暮らしたいといっている。

 素敵なもふもふライフを過ごそうと、今から二人で人生設計を考えているところだ。

 メルヴは片手に聖獣のセイを持ち、ぶんぶんと空いた手を振っていた。

 鼠妖精ラ・フェアリの村では、畑仕事を手伝ったり、散歩に行って村人と交流を図ったりと、精霊らしからぬ行動をしていた。

 炎狼フロガ・ヴォルクと仲良くしてくれたのもびっくり。

 二人が仲良く過ごす様子は、鼠妖精ラ・フェアリ達の癒しにもなっていたらしい。


 最後に、私もお礼と別れの挨拶をする。


「みんな、ありがとう~~! 私、頑張るね~~!」


 涙がでないうちに踵を返し、走って領主のお城へと入る。

 そのまま地下部屋に行き、王都へ転移するらしい。

 荷物は昨晩、ホラーツが運んでくれたとのこと。

 転移陣がはじめてのドリスとチュチュは緊張しているようだった。


 今までで一番大きな魔法陣の中に入る。


『さて、行きますか』

「ああ、爺、頼む」


 アルフレートの返事をきっかけに、魔法が発動された。

 周囲は光に包まれ、景色がくるりと変わっていく。


 ◇◇◇


 おっとっと! と、着地でたたらを踏んでいたのは私だけだったようで、恥ずかしくなる。

 笑って誤魔化した。


「エルフリーデ、転移後の魔力酔いは?」

「あ、そういえば、ないかも!」

『それはようございました』


 やっぱりアレは首輪の悪影響だったんだなと。まことに遺憾なり。

 ドリスやチュチュも大丈夫だったみたいでホッ。


 転移先はアルフレートの離宮のお部屋。

 この建物(部屋の中にいるので、規模は謎)はすべて、アルフレートとアルフレートのお母さんの物らしい。

 使用人がきちんと掃除をしていたようで、どこもかしこもぴかぴかだ。

 部屋はテーブルと長椅子があって、ふかふかの絨毯が敷いてある。部屋は広いのに、ほとんど何もない。シンプルなお部屋であった。


 ドリスはとりあえず実家に帰るらしい。チュチュも一緒に行くとか。

 アルフレートは今からいろいろと報告に行くと言う。


「エルフリーデは養子先の親と会ってくれ」

「あ、うん。了解」


 一応、ホラーツが身元保証人として一緒に来てくれるらしい。凄く心強い。

 それにしても、貴族の家に養子に入るとか、話が大きくなっていてガクブルしてしまう。


「以前、隣国の貴族へ養子に入ると説明していたと思うが、ついさっき、変更になった」

「そうだったんだ」

「国内の……貴族でエルフリーデを養子にしたいと言う者がいて」

「了解」


  なんだか微妙な顔をしているアルフレート。いったい誰なのかと聞いても、う~んと唸るばかりだ。

 まあ、私の知らない人なのだろう。緊張する。

 私を引き取ってくれると言うので、きっと優しい人なんだろうけれど。


「まあ、会ってから、諸々話し合ってほしい」

「わかった。ありがとうね」

「いや……私もいろいろと尽力をしたのだが……」

「大丈夫。なんとかなるよ。それよりも、私は障害なくアルフレートの傍にいられることが嬉しいから!」

「エルフリーデ……」


 切ない表情となるアルフレート。

 彼をこんな顔にさせる人物とは、いったい……。


 そして、各々解散となった。

 メルヴに炎狼フロガ・ヴォルク、聖獣のセイは部屋の隅で遊び始める。


『セイチャン、コッチマデ、歩ケルカナ~~?』

『にゃう!』


 セイはまだよちよち歩きだ。

 メルヴに呼ばれ、短い脚を懸命に動かしながら歩いている。

 炎狼フロガ・ヴォルクは心配そうに後ろからついて行っていた。

 私も近くで応援したい。

 けれど、セイに近づけば、くしゃみが止まらなくなるのだ。残念過ぎる……。

 ちなみに、アルフレートも最初は大丈夫だったみたいだけど、最近は近づけば寒気がすると言っていた。不思議だなあ。

 聖獣は未知の存在なので、そういうこともありうるのだと、ホラーツが行っていた。


 微笑ましい気持ちで、メルヴ達を眺めていると、トントンと扉が叩かれる。


「どうぞ~~」


 失礼しますと言って入ってきたのは、綺麗なドレスを着ているお嬢さま方。

 十人くらいいるのだろうか?

 皆、童話にでてくるお姫様みたいで、綺麗な女性ひと達だ。

 いったい何用かと思っていれば――


「はじめまして、わたくし達は、エルフリーデ姫の身支度を行うよう、命じられて参上いたしました」


 ――ん、どこのお姫様の身支度をするのかな?


 一人一人、自己紹介をしてくれる。

 みんな可愛いよと、心の中で呟いていた。


「それでは、初めさせていただきますね」

「――んん?」


 両脇をお姫様に囲まれ、腕を組まれる。

 連れていかれたのは――お風呂!?


「ひえええええ~~!!」


 瞬く間に裸に剥かれ、ザバーとほどよい温かさのお湯を頭の上から被せられた。


 待って、なんとか姫って私のことだったの? どうして? なんで姫呼び?

 頭の中は一気に真っ白になった。


 ◇◇◇


 結果、私はお姫様のようになった。

 綺麗に体を磨かれ(※洗われている時、体が削られるかと思った)、美容マッサージを受け(※超絶痛かった、多分、骨格変わってる)、矯正下着コルセットで体を締め上げ(※これは拷問器具です)、最後に深い青色のドレスを纏った。

 美しさは腕力で出来ていると、身をもって体験してしまった。


 それから化粧を施され、短い髪には付け毛が編みこまる。サイドを編み、後頭部で纏めてリボンで留めてくれた。


 鏡を覗き込めば、別人のような自分の姿が映り込んで、これは魔法(※要腕力)だと感激してしまった。


「お綺麗ですわ、エルフリーデ姫」

「あ、うん、ありがとうね」


 姫じゃないですと訂正したいんだけど、お嬢様方の笑顔の迫力が凄過ぎて、何も言えなくなる。

 きっと、王宮にいる女性はみんなお姫様呼びをしているのだろう。


 アルフレートの部屋に戻れば、ホラーツがお茶を飲んでいた。


『おやおや、これはまた、素晴らしい。エルフリーデ様、本物のお姫様のようですね』

「いや、そこまでじゃないでしょう」

『またまた、ご謙遜を!』


 いや、ご謙遜とかじゃなくってね……。

 まあ、妖精族は美意識が人間と違うと言うし、ここは喜んでおこうと思う。


 私を引き取ってくれる心の広い御方は、わざわざここまで足を運んでくれるらしい。

 長椅子に座り、緊張しながら待機する。

 途中、ドリスとチュチュが戻って来てくれた。後ろで見守ってくれるようで、心強いと思った。


 待機する中で、うっかり顔が強張ってしまう。

 そんな私を、ホラーツは励ましてくれた。


『エルフリーデ様、心配いらないですよ。とても、お優しい方ですので』

「だ、だよね……」


 そうだとわかっていても、緊張をしてしまうわけで……。


 そして、とうとう顔合わせの瞬間が訪れる。

 扉が叩かれたのと同時に、立ち上がってピンと背筋を伸ばす。

 部屋の中に入ってきたのは――


「……あれ?」


 意外過ぎる人物だった!


▼notice▼


美への追及

女性は誰もがさなぎから蝶となる。

しかし、その過程には、腕力が必要だった――


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