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炎の神子様は大精霊ではございません  作者: 江本マシメサ
第二章【魔法使いと魔法使いの弟子】

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幕間 アルフレートのひとりごと

 エルフリーデとの出会いは、薄暗い地下だった。

 爺は大精霊を召喚するというので、緊張をしていた最中に、やってきたのが彼女だったのだ。


 炎魔法で浮かび上がった姿。

 初め、見目麗しい少年かと思った。

 短い黒髪に、好奇心旺盛な赤い目、騎士が着るような詰襟の服。明るく快活そうな雰囲気など。

 けれどよくよく見れば、体全体は丸身を帯びており、腰の位置も高くほっそりしている。

 胸には膨らみがあるようにも思えた。

 声はそこまで高くない。けれど、女性のものだろう。


 目が合えば、不思議そうな顔で首を傾げている。

 その仕草が可愛くて――いや、なんでもない。


 それよりも、なぜ、精霊ではなく、普通の(恰好は変わっているが)女性がやってきてしまったのか。

 問いただそうとすれば、爺に言葉を遮られる。


 爺は平伏をするような勢いで女性に捲し立てる。この地を救ってくださいと。

 最終的には地面に額をつけ、炎の大精霊様だと言って願う。


 彼女は人ではなく、女性の姿をした精霊だった。爺が言うのならば、間違いないと思う。

 私も地面に膝を突き、頼み込んだ。


 これが、炎の大精霊、エルフリーデとの出会いである。


 彼女は私達の願いを叶え、村の危機を救い、鼠妖精ラ・フェアリの村の安寧を取り戻してくれた――。


 その後も、村での生活を続けてくれたが、日々、疑問は募るばかりであった。

 エルフリーデは炎の大精霊を自称しているが、知れば知るほど、普通の女性にしか見えないのだ。

 たしかに、大きな炎の力を持っている。人知を超えた能力であろうことは私も認めている。

 けれど、普段のふるまいや物事の考え方、行動は人と異なる存在とは思えない。 


 爺にも一度質問したことがある。

 問いかけに対し『間違いなく炎の大精霊様ですよ』と言っていたが。聞いた瞬間、毛がぶわりと逆立ち、尻尾をピンと立て、目の瞳孔が開いていた。

 警戒や動揺が隠せていなかった。


 よって、エルフリーデは高い割合で人間の女性だという可能性がある。


 でもまあ、本人が隠したがっていたので、追及はしなかった。

 もしも、それを聞くことによって、彼女がここを去ってしまうことが怖かった。


 いつの間にか、エルフリーデがいない日々はありえないと思うようになっていたのだ。


 掠める者ハルピュイア襲撃の際に、思いがけず彼女が農家の娘であることを聞いた時は驚いた。どこぞの貴族の娘だと思っていたのだ。


 改めて、本人より人間であると聞かされ、ホッとした。

 安堵感は、日を追うごとに喜びへと変わっていったのだ。


 そして現在――彼女は私の隣にいる。

 それだけで幸せだと思っていたのに、その先にあるものを望んでしまう瞬間があった。


 叶うならば、この先もずっと共に生きたい。


 そう、伝えられる日がくることを、願っていた。 



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