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炎の神子様は大精霊ではございません  作者: 江本マシメサ
第二章【魔法使いと魔法使いの弟子】

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第四十六話 騎士団と――アルフレート

 森の中で、強面のおじさんと見つめ合うこと数秒。

 手を差し伸べられ、ハッと我に返る。


「あ、ありがとう、ございます」


 目の前にあった手を掴み、立ち上がる。

 わざわざ硬い金属の手甲を外してから手を貸してくれるなんて。とっても紳士だ。

 ドリスやチュチュにも、同様に立ち上がる手助けをしていた。


 顔が怖いという第一印象だったけれど、冷静になってよくよく見てみれば、高貴な雰囲気がはんぱない。

 どういう対応をしていいのか困り、目線でドリスに助けを求めてしまう。

 いろいろと察してくれたのか、一歩前に立ち、淑女の挨拶をするドリス。


「はじめまして。私達はアルフレート・ゼル・フライフォーゲル様の治める、鼠妖精ラ・フェアリの村の領民、ドリスでございます」

「おお、アルフレートの」


 予想通り、強面のおじさんはアルフレートと面識があるようだ。


「我はリードバンク王国第二王子及び、シュテリュン騎士団機動特殊部隊『熊刃』団長、リチャード・ダグラス・クイーンズベリーである」


 第二王子ってことは、アルフレートの腹違いのお兄さんということになるのだろうか?

 年頃は四十過ぎに見える。かなり年上だ。


 背後には数名の騎士を従えていた。

 とりあえず、盗賊ではなかったので、一安心。


 ドリスは続いてチュチュの紹介をする。


「こちらは鼠妖精ラ・フェアリの村の長の娘、チュチュです」

「おお。鼠妖精ラ・フェアリの姫君か」


 チュチュは下げた頭が上がらない状態となっている。

 古の時代に王族と盟約を結んだ鼠妖精ラ・フェアリ達は、特別な思いがあるのだろう。


「して、そこな娘は――?」


 え~っと、アルフレートのお兄さん相手に「炎の大精霊です!」だなんて名乗っていいのだろうか?

 この辺の対応を話し合っていなかった。

 リードバンク王国は魔法に対し厳しい印象があるので、どうしたものかと対応に困ってしまう。


「――む?」


 何かに気付いたような反応を示すリチャード殿下。

 チュチュも、背後を振り返っていた。


 遠くから、ガチャガチャと、金属が重なり合うような音が聞える。

 ザッザッザッという、息が合った歩行の音も。


『全軍、止まれーー!』

了解ちゅ!』


 やって来たのは、鼠妖精ラ・フェアリの騎士団。

 後方より、アルフレートが駆けてくる。


「――兄上!」

「おお、アルフレートではないか!」


 村にある見張り塔からリチャード殿下達の一軍に気付いた鼠妖精ラ・フェアリの騎士達が、事態を確認しようとやってきたらしい。

 報告を受けたアルフレートは、王家の紋章がついた旗の報告を受け、共に駆けつけたみたいだ。


「久しいな」と言い、アルフレートの背中をバンバンと叩くリチャード殿下。

 突然の兄弟の再会を、周囲は見守っている。


「兄上、こちらへは、何用でございましょう?」

「おお、そうであった」


 綻んでいた表情が一気に締まる。

 なんでも、リチャード殿下率いる機動特殊部隊『熊刃』は、王都の周辺を荒らしていた魔物を追ってここまでやってきていたらしい。


「魔物、ですか」

「そうである。なんでも、数百年ほど観測が確認されていない、上位魔物が出現し――」


 多くの被害をもたらしているという。

 それは、『掠める者ハルピュイア』と呼ばれる、上半身は女で、下半身は鳥、背中からは翼が生えている魔物。

 単体ではなく複数体で出現し、海を荒ぶらせては商船を襲ったり、森に潜んで冒険者に奇襲をかけたりと、犠牲者はあとを絶たない。


 機動特殊部隊『熊刃』は王都から掠める者ハルピュイアを追ってここまでやってきたとのこと。一ヶ月ほど、野営と戦闘を繰り返す毎日だったとリチャード殿下は話している。


「でしたら、鼠妖精ラ・フェアリの村で休まれてはいかがでしょう?」

「おお、それはありがたい。見ての通り、部下たちは酷く疲れておる。突然の話で申し訳ないとは思うが――」

「いえ、いつでも歓迎いたします」


 話はまとまったようだ。

 とりあえず、村へ移動しようという話になった。


「して、アルフレート。そこの黒髪の娘は?」


 私の存在が気になって仕方がない様子のリチャード殿下。

 いやはや、名乗るほどの者ではありませんと言ってこの場を去りたい。

 どういう風に誤魔化すのか、気になるところでもあるけれど。

 妙に緊張してしまう。


「彼女はエルフリーデ。私の魔法の師匠であり、友でもあります」

「おお、そうであったか!」


 まさかの紹介に、照れてしまう。

 師匠だって! 友だって!

 本当に、嬉しい。


「エルフリーデ殿」

「はい」


 近う寄れと手招きをされる。

 なんだろうと近づけば、リチャード殿下は胸に手を当て、騎士の敬礼のようなものを示してくれた。


「そなたのような存在が、アルフレートの傍にいてくれたことを、嬉しく思う」

「あ……はい。ありがとう、ございます」


 アルフレートについては、昔から気にしていたらしい。

 けれど、仕事が忙しく、なかなか構うこともできなかったと。


「これからも、弟のことを頼む」

「え~っと……」

「兄上、立ち話もなんですから」

「そうであったな。すまぬ」


 危ない、危ない。

 こんなところで守れそうもない口約束をしてしまうところだった。

 アルフレートが止めてくれて、よかった。


 こうして、一行は村の領主城を目指す。

 一足先に帰っていた騎士から連絡を受けていたからか、村はリチャード殿下の大歓迎ムードとなっている。


 その様子はまるで、英雄を出迎えるようだった。


 ◇◇◇


 領主城に大勢の奥様方が集められる。

 料理の準備やら、寝床の準備やらで、てんやわんやとなっていた。


 普段使うことのない大広間では、細長いテーブルの上に果物やチーズ、お菓子などが並んでいる。

 旅で疲れた騎士達へ、鼠妖精ラ・フェアリからの最大の労いであった。


 お酒を飲んで大騒ぎをするのかと思いきや、皆紅茶を優雅に啜っていた。

 なんかこう、騎士団の食事会って豪快というか、大変な盛り上がりがあるイメージだけど、実際は違った。

 掠める者ハルピュイアといつでも戦えるように、お酒は控えているとか。

 それにしても、兜を脱いだ騎士達全員が、男前過ぎて眩しい。

 身だしなみもきちんとしていて、一ヶ月野営をしていた人達には見えない。


「――どれも未婚の若者ばかりだ。エルフリーデ殿のお眼鏡に叶う者はいるだろうか?」

「!?」


 突然リチャード殿下に話しかけられ、驚いてしまう。話の内容にも。

 どうやら、皆様貴族の出身で、高貴な方々らしい。


「留守が多い、遠征部隊の騎士に嫁いでくれる女子おなごはおらんのだ。皆、結婚相手探しに苦労をしておる」

「へえ、そうなんですね~」


 目が合えば、にっこりと微笑んでくれる好青年ばかりだ。

 騎士も大変なんだな~と思う。


「斜め前に座っておる、フランクリンなどどうであろう? 真面目な男だ」


 フランクリンは濃いブラウンの髪を撫でつけた、大人の男性! って感じの騎士だ。

 若干気難しそうな雰囲気があるのもの、息を呑むような男前でもある。

 ちなみに、目は合わせてくれない。


「エルフリーデ殿のような、明るい女子おなごがいいかと思っておるのだが」

「兄上、冗談もそれくらいに」


 どういう反応を示したらいいのか、わからなかったから、アルフレートが止めてくれてホッとした。


 隣に座るアルフレートの腿を突いて、「ありがとう」の意を伝えれば、凄まじく怖い顔でこちらを睨んでくる。


 そして、机の下で手を握られ、膝の上に戻されてしまった。


 どうやら、腿をつんつんするのは駄目だったらしい。

 深く、反省した。


▼notice▼


=status=


name :リチャード・ダグラス・クイーンズベリー

age:47

height:188

class :騎士 

equipment:王国騎士鎧、黒鋼の剣

skill:???

title:リードバンク王国第二王子、シュテリュン騎士団機動特殊部隊『熊刃』団長

magic:ーー


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