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ハルメニア・ニル・オーギュスト

今回も短め。


そして今更ですが備考。

人族←普通の人間。

セドナ

セロ

ソーン

この辺の共生している人型の種族を纏めて『人族』と呼ぶ風潮がある。

とご理解下さい。

挿絵(By みてみん)


 頭頂部のエメラルドグリーンから毛先の薄花桜にグラデーションする地面に届かんばかりの美しい髪。

 積もったばかりの粉雪のように純白の絹肌。

 絶えずその色を変えて行く虹色の瞳。

 花をモチーフにした淡い青のドレスに包まれた、今でも魔法関連の雑誌などで表紙を飾る程の美貌は、ハルメニアの大ファン、ハルマニアを自負するリーリエでなくても見間違う筈もない。

 憧れの人物が何故か目の前に居て、何故か自分を捜していたらしいという事実にリーリエの精神が精霊界の彼方に吹っ飛んでいると、街頭の如く棒立ちになったその姿に疑念を感じたハルメニアが歩み寄ってくる。


「あれ? リーリエちゃんだよね? あたし間違えた?」


 まるで旧知の仲であるかのような気さくな口調である。しかしオーラが視認出来るのではないかというほどの美貌が自分の顔を覗き込んで来るというある種ショッキングな事態に、遂にリーリエの精神はオーバーヒートした。


「は、はいっ! お捜しであそばされたリーリエ・フォン・まくまくまま……!?」


 自分の名前を噛んだ。

 死にたい。


「なにこの子可愛い!」


 抱き締められた。

 しかしリーリエの身長は153cm。ハルメニアは170cmである。結果としてリーリエの顔はハルメニアの、その細い身体にしては随分と豊満な胸部に埋まる形になった。

 良い匂いがする。

 違う、変態か。

 すぽん。と音がしそうな勢いで双丘の谷間から頭を引っこ抜き、ハルメニアの顔を見上げる。

 どうしたの? といった様子で小首を傾げるハルメニアは、やはり何度も雑誌の紙面で見たハルメニアでありその事実がリーリエを更に混乱させる。


「ええと、ハルメニア様は何故私を捜していたのでしょうか? それに何故エレンディアに?」

「そうね、どこから説明しようかな。一先ず2人になりたいのだけど人払いが出来る場所はないかしら?」

「それでしたら協会の会議室がありますけれど……」

「じゃあ案内よろしく」


 そう言ってハルメニアはリーリエの手を引き歩き始める。

 未だ混乱から覚めやらぬリーリエは引かれる手に従うしかなかった。






 協会には大小4つの会議室があるが、ハルメニアの希望によって2人は1番小さい第4会議室に来ている。協会側は1番広い大会議室を勧めたのだが、広過ぎて落ち着かないとハルメニアが難色を示したのだ。


 がっしりとした木製のテーブルに向かい合わせに座った2人の前にはティーカップに入った紅茶が湯気を立てている。

 ハルメニアは紅茶を持って来てくれた女性を早々に追い出し、扉に鍵を閉め、全ての窓にカーテンまで閉めていた。


「あー、漸く落ち着いた」


 ハルメニアが猫のように背筋を伸ばす。

 雑誌の特集などで知ってはいたが、ハルメニアは実際に相対すると随分くだけた性格をしているようだとリーリエは思った。


 ハルメニア・ニル・オーギュスト。

 長寿であるセロにおいても異例である1500歳を超える御身は自身の魔力による細胞活性によって変わらぬ若さを保っている。

 凡そ500年前、自身の固有魔導回路を一般向けにデチューンしたハルメニア式魔導回路を体系化。これにより魔法の瞬発力、増幅率、柔軟性が革命的に向上し、ハルメニアは当時後衛として立場が低かった魔法使いの認識を世界的に改めたのだ。

 この功績によってティア・ブルーメの王選を勝ち抜き、尚且つ当時既に智天使級だった協会代行者としての肩書も繰り上がった。

 詰まる所、ハルメニア・ニル・オーギュストという人物は一国の女王でありながら熾天使級代行者というある意味人族の頂点とでも言うべき存在なのだ。


「せっかく爺や達も撒いて来たって言うのに観光する暇も無いじゃない、全く……」


 頂点は随分と奔放であらせられる。


「ええと……」

「あぁ、ごめんね。はじめまして、ハルメニア・ニル・オーギュストよ。知ってる?」


 知らない筈が無い。

 本気で言っている風の顔をしている辺りまさか自分の知名度を自覚していないのだろうか。


「ハルメニア様を知らない人を捜す方が難しいと思いますが……」

「そう?最近の若い子は自分の国のトップにも興味ないって聞いたからそういうものかと」

「いえ、ハルメニア様の場合肩書とかよりも……何と言ったら良いか」


 アイドル的に、と言い掛けてやめる。いくらなんでも失礼に過ぎると思ったからだ。


「そ、それより、ハルメニア様は何故私をお捜しになっていたんですの?」


 半ば無理矢理に話題を変える。実際問題ハルメニア程の人物に自分が名指しで捜されていた理由に皆目見当が付かない。


「あ、そうだそうだ、忘れてた。あいつに頼まれてレゾの一件の調書の証人として来たのよ。魔力波長はあたしの方でも感知してたから事態は大体わかってるし」


 レゾの一件。

 あいつ。

 頼まれた。


 ほぼ確定的な単語が出てきている筈なのだがリーリエの脳は本能的に答えを拒否した。


「あいつに連絡用の人造精霊渡してあったのに使ってくれたの今回が初めてよ? 初めて連絡が来てはしゃいでみたら『リーリエっていう女の子が多分協会で査問会に掛けられて大変だろうから口きいてやってくれ』よ? ちょっとあなたに嫉妬しちゃうわ」


 言って頬を膨らませるハルメニアは見た目通り20歳程の女性そのもので、同性であるリーリエから見ても非常に可愛らしい。

 ハルマニアのリーリエとしてはお宝映像なのだが先程から脳裏をチラつく牧師もどきの顔が邪魔で集中出来ない。


「えっと、一応確認したいのですが、あいつっていうのは……」

「クオ・ヴァディスよ?」


 あっけらかんと言われてしまった。

 あの牧師もどき、もう訳がわからない。

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