第二話>>>
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□ 扉絵
[2]
□
博美「ごめんね、冬実…」
由希子「さ、行こ!」
□
モノローグ「残ったのは私一人だけ!?」
冬実、着替え中のまま、拳を握り締めて目を見開いている。
□
ぺたん
冬実、膝をついてしまう。
□
冬実(心の声)「もうダメ……」
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□
考え込んでる冬実。
冬実「先輩は引退しちゃうし由希子たちも退部……」「私一人じゃ女子柔道部の
存続なんて……」
□
ガックリ。
うな垂れる冬実。
□
外で聞いてた孝之。
□
冬実「・・・・・」
孝之の声「……おい冬実。」
[4]
□
孝之が部室に入ってくる。
冬実の声「孝之!?」
孝之「座り込んでていいのかよ? 市民大会まであと十日だぞ?」
□
冬実(淋しそうに笑って)「だって…団体戦だよ? 一人じゃどうしょうも
ないじゃん。」
□
バン!
孝之、冬実の耳元の壁を思い切り踏む。
驚く冬実。
□
孝之(スゴ味を効かせ)「お前、そんな程度の覚悟で3人で優勝するなんて
言ってたのかよ!!」
□
押されてる冬実。
冬実「だっ……」
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□
激しい口論。
冬実「だって一人じゃ練習さえできないでしょ!!」
孝之「『最後の最後までファイトを燃やせばなんだってできる』んだろ!?」
□
冬実「う……」「で、でも相手がいないと練習は……」
□
孝之(稽古着を物色しながら)「稽古着を貸せ。俺が練習台になってやる。」
冬実の声「孝之!?」
□
孝之「小学生の柔道教室じゃお前に負けなかったんだ。今だって……」
孝之(書き文字)「うう 女くせえ道着…(汗)」
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□
冬実(泣きそうになり)「孝之……男子柔道部が潰れなかったら続けたかったの、
やっぱり?」
孝之、背を向けて着替えてる。
□
孝之「・・・・・つべこべ言ってねえでさっさと練習行くぞ!」
□ 外。
□ 体育館。
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□ 道場。
2人が取っ組み合ってる。
孝之「たりゃあああっ!」
冬実「っせいっ!!」
□
取っ組み合ってる。
□
冬実、果敢に足技をかけていくが、
孝之はなかなか転ばない。
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□
休憩中。ばてばての2人。
冬実「はぁ、はぁ、はぁ……」「チクショウ、ケンカなら孝之に負けないのに
どうして……」
孝之「言ってるだろ頭を使えって。」
□
孝之「お前の攻撃はパワフルだけど真っ直ぐすぎるんだ。」(言い捨てるように)
「柔道に限らずな!」
□
冬実、うつろな目で考え込む冬実。
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□ めくれていく日捲り。
トレーニングに励む2人。
かつ、ポスターを貼ったり
興味無さそうな友達に宣伝を試みたり。
□
冬実、木に布を結びつけ打ち込み中。
□
ばたっ
冬実「うっ」
冬実、膝をつく。
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□
孝之、冬実を抱き起こして
孝之「冬実……お前熱があるぞ?」
冬実「ね、熱ぐらいで…」
□
孝之「バカッ!」「疲れてるんだよ。ムチャしてたからな…。今日は練習休んで
帰って寝ろ。」
□
冬実「バカッて言うな! (書き文字:バカッていったら自分がバカだぞ)
市民大会まで4日しかないんだ! 今、練習を休んだら……」
□
孝之「悪化したら大会自体出らんないだろーが。いいから帰って休め、治してから
練習しろ!」
□
孝之は座り込んでる冬実に呆れて
孝之「もういい、俺が送っていく!」「カバンどこだ?」
[11]
□
孝之は冬実を背負って歩いている。
冬実(熱で赤い顔)「たかゆきー」
孝之「ん?」
□
冬実「なんでお前……こんなに協力してくれるの?」
孝之「……ガキのころからのクサレ縁だろ。友達なら助け合うのが当たり前じゃ
ないか。」
□
冬実「友達……ね。」
意味ありげにクスッ。
□
孝之「何がおかしい」
冬実(赤い顔で)「別に。」
クスクス
(作者注:冬実は無意識のうちに、孝之の恋愛感情を期待してしまってます)
□
孝之(冷静に)「あのな冬実。ひとつだけ尋いていいか?」
冬実(焦)「な、なに?」
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□ 夕暮れ。
孝之の声「俺がおぶってるのはたぶん女性じゃないかと思うんだけど、背中に
胸の感触が無いのは一体……」
冬実「!!」
ばきぃぃっ…きぃぃっ…きぃぃっ… (エコー)
□ 市立体育館。
立看板「~市平成××年度女子柔道大会」
□
道場では女子の試合が進行中。
□
廊下のベンチで、冬実は稽古着姿でスポーツドリンクとタオルを手に座ってる。
孝之「調子は?」
冬実「悪くない」
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□
孝之「いけそうか?」
冬実「わかんない。」「実際、団体戦に一人で出るなんて聞いたことないもんね。」
□
孝之「喝ーっ!」(ふざけて)「お前は勝つ! 勝ってもらわないとこまるのだ!」
□
冬実「?」「なんで?」
□
孝之(焦)「あ、いや、別に」「配当20倍のお前の優勝に五千円賭けたとか
そういう理由じゃ…」
□
冬実、孝之の襟首を掴み
冬実「た~か~ゆ~き~…#」
孝之「わあっ、暴力反対!!」
□
冬実、孝之を放し
冬実「そろそろ出番だから行ってくる。」
孝之「ガンバレよ~!」
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□ コートに出てきた冬実。
その後ろから
声「おーい、今川ぁ!!」
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観覧席で、かなり大勢の生徒達が声援中。
生徒A「優勝したら大穴20倍だぞ、がんばれー!」
生徒B「いやいや3回戦だ、3回戦で負けろ!」
生徒C(女子、ビデオカメラを手に)「違う! 私は4回戦の2.4倍に二千円賭けた
のよ! 3回戦まで勝つのよ、今川!」
書文字「証拠映像♪」
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冬実、引きつり笑い。
冬実「……孝之のヤロ~。」
小さく書き文字「…たしかにおおぜい来てる」
□ 試合場。
審判「1人?」
冬実「はい。1人で何度も出ちゃいけないってルールはありませんでしたよね?」
審判「な、無いけど…」
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身構える冬実と相手A。
審判「はじめいっ!」
□
ガッ!
相手Aの手が冬実の襟首を掴む。
冬実「!」
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□
ふわっ!
冬実の、ものすごくキレイな払い腰。
□
どぉーん!!
ぶったおれてる相手A。
審判「いっぽぉぉん!」
冬実、膝をついたまま驚愕。
冬実の心の声「か…軽い!!?」
---つづく