修羅場からのエロゲ?
バタン
いきなりドアが開られる。シャルルがオレにぎゅっと抱きついた。
「澪さっきから女の声…が……」
それはオレに抱きつくシャルルを見て、目を見開いた。
「澪!あんた…その女は何!」
侵入者はやや吊り目で気の強そうなパッチリした瞳で、瞳と同じ日本人にしては明るいブラウンの髪を高めの位置でツインテールにしている。まあシャルルには劣るけど可愛い。けど声が甲高くて耳障りだ。
それと胸はほぼ、無い。絶望的なまでの絶壁。
で、シャルルも侵入者を睨みつけ、オレに訊いてくる。うわー火花が飛び散ってるぜ…
「…この女は何者だ」
「こいつは瑠璃っていう…」
いきなりシャルルに睨まれた。今すぐ土下座して謝りたくなるくらい怖い。美人だから数倍増しに怖い。流石魔王というか迫力が違う。
「ほう…名前同士で呼び合う仲だと?」
「そうよ!あたしは澪の彼女よこの泥棒猫!!」
(ちげーよお前は黙ってろ!話をややこしくするなっ!!)
そしてシャルルはしばらく見透かすようにオレを睨みつけていたが、いきなり顔を俯けた。
「シャルル…?」
「この…この……!」
バッと顔を上げてシャルルが泣き出す。
「浮気者ーっ!」
怒り出すと思ってたのにまるで小さい子どものように、わあわあ泣いてる。いきなりさっきまでの迫力が掻き消えて、右目から大粒の涙が溢れて零れてく。
「わたっ…私がいない間に女なんて……ふぇえん!」
「ごっ誤解だ!(そもそも記憶無いけど!!)」
シャルルはポカポカオレを殴る。魔王も女の子なんだな…
いや、そんなこと考えている場合じゃない。さっきと同じような何か赤いオーラが見える。絶対ヤバい兆候だ。具体的には今すぐ核爆発ぐらいの規模の爆発とかが起きちゃいそうな感じだ。
「この身を捧げても、私では不十分と言いたいのか…?お前が初めてだったのに…夜伽だってしたのにぃ……お前のために邪魔な奴等の始末もしたのにぃ…」
おう!何かとんでもない発言してるな。
確かにこんな美人と結婚したら手も出したく…
「澪!不潔だわ!」
「ちょっとお前は黙ってろっ」
瑠璃に怒鳴ってからシャルルに訴える。…こいつもこいつで怒ると後が面倒なんだよな……でもシャルルほっとしたら切実に生命の危機にさらされる気が…
「頼むから聞いてくれ、な?こいつはオレの義妹なんだ」
「…………………は?」
シャルルがオレを見て、瑠璃を見て、もう一度オレを見る。
まあ血が繋がってないから似てるわけ無いんだよな。髪の色も目の色も顔の造りとかも見るからに違うし。
「ホントだって!こいつは血が繋がってない妹!だから彼女じゃねえの!!彼女なんて生まれて一度もいなかったから!!」
シャルルが固まる。瑠璃が思いっきり舌打ちした。畜生瑠璃め覚えてろ。オレのヒットポイントにダメージを与えやがって…!!
そりゃオレはそこまで女自体が好きな訳じゃないし興味無さそうに見えるかもしんないけど男だぞ?オレだってッ…本当は彼女とか欲しいし…
「妹…本当か?」
必死に頷くと(自分でさっき言ったことのダメージもあって最早涙目)、シャルルがようやく笑う。ちなみに瑠璃は一切無視だ。
「ちょっと!何勝手に盛り上がっ…て…?」
シャルルが瑠璃を指差すと、瑠璃の目が虚ろになる。
そしてさっきまでピーピー言ってたのが嘘のように、回れ右をして静かに部屋を出て行った。
「何を…」
「記憶を消した。私の存在を知る人間は邪魔以外の何者でもない……しかし何故あんなに魔力を…」
シャルルが可愛らしく小首を傾げる。
「どうかしたのか?」
「え?…いや、なんでもないよ」
そこまで言って、シャルルがそっとオレに縋りつく。
そして嬉しそうに、そして何故か妖艶に笑み、自分の上唇を舐める。エロい。
「邪魔者は消えた。今からはしっぽりと、二人の時間を紡ごう…?」