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魔王はオレの妻でした

(これ何てエロゲ!?)


慌てて体を引くが、少し名残惜しい。


(あんな美人にキスされて嬉しくない男がいるか!)


いるわけ無いだろ!たとえ今のが初めてだったとしても!!そしていかに相手が不法侵入者で中二臭い奴だとしても!


何故なら巨乳美人は正義だからだ!!


なんて感じで少女は内側で荒れ狂うオレにまた抱きついて、息を吐く。


(胸があたる!そしてめっちゃ良い香りする!)


「私を忘れたのか…?私を妻にしたのはお前だろう…死神」


(こんな美人が奥さん…)


いいな。少し堅苦しくてキツめの顔立ちだけど美人だしスタイルもいいし…ってちょっと待て!死神!?


「待て待て!人違いだ!」


少女がオレを悲しげな目で見つめる。もうそれだけで罪悪感が湧くくらいに。


この子もしかして痛い子!?誰かとごっこ遊びしてたの!?どんだけ手酷い中二発症してんだよ!!


「確かに定められた結婚だったが…それでも私はお前に愛されたと思っていた。私もお前を愛していた…私の幻想か?」

「オレは黒葉澪って名前の人間だ!つかお前はなんだよ!いきなり人の家に…」


少女はオレの話なんて聞いておらず、目を伏していた。しかもよりによって涙が溜まってきている。


「ああもう!」


ベッドに少女を座らせてハンカチを差し出す。少女は素直に受け取り、それを目に押し当てた。


「落ち着けよ、な?」


少女はこっちをジーッと見て、少しすると何故か満足そうな顔で頷いた。


「封印されているのか。道理で…」


…ダメだこいつ。意味分かんねえ。あと流石に中二遊びに付き合うとはごめんだ。


「…すまない、取り乱した」


少女はオレを真っ直ぐ見て言う。


「私の名はシャルル、シャルル・ニーロ・シュヴァルツェン。…魔王だ」


…一瞬思考が停止した。


「ま…何だって?」


頼むからまともなこと言ってくれ。


「魔王…魔界を統べる王だ」


あー夢だ夢。これは変な夢だ。いくら花香が死んで驚いたからって…


「そしてお前は死神、私の夫だ。今は悪魔の所為で偽の記憶を植えられているが…」

「やめろっ!」


少女…いやシャルルが驚いた顔をする。オレはわけが分からず怒っていた。


「頼むから変なこと言わないでくれ。あんた、病院でも行ったらどうだ?」

「死神…」


その言葉を聞くとカッとなる。


「出て行け!」


シャルルは茫然としていた。


何だろう、こいつを見ると頭が痛くなっていく。

何でか分からない。いやそりゃいきなり中二病患者に絡まれたらイライラするだろうけど、でもそれと違う何かが心が掻き回されるような錯覚すら覚える。


「頼む…出て行ってくれ」


シャルルはふらつきながらも立ち上がり窓まで歩く。


「大丈夫…私が助けるから」


ぼんやりとこちらを見てシャルルが呟いた。


「まずは鹿野花香を捜し…」

「ちょっと待て!花香!?」


シャルルがこちらを見る。


「…知り合いか?」

「幼なじみだ!でも昨日自殺…」


シャルルがその端正な眉を顰める。


「保持者が死んだ…?」


保持者って何だ、と聞こうとしたが、シャルルは何やら考え込んでいる。


「シャルル…さん?」

「…契約か」


そしてそのまま部屋から出て行こうとしたので慌ててシャルルに…


つるっ


「どうし…」


むぎゅーっ!


…いや、事故だ。これは事故だ。


シャルルを呼び止めようとしたらそこらへんに落ちてた雑誌に滑ってその…


(抱きついちまったーーー!!)


シャルルはわなわな震えている。


「いやっ今のは…」


事故だと言おうとしたが、シャルルは悩ましげな吐息をつく。


「シャルルさん…?」


シャルルの腕がオレの体に回され、抱きしめ合うかたちになる。


「シャルルでいい…夫が妻を呼び捨てにするのは当然だろう?」


…なんだか段々否定するのがバカらしくなってきた。花香のことを言っていた子とも気になるし、何より…


(それにこんな美人がオレに好意を…)


…しかもシャルルの抱き心地が、気のせいだろうが懐かしい。オレ、本当に死神って奴だったんじゃねーかって思ってきた。てかもう死神でいい、こいつ可愛い。


「…分かった。オレはお前の言うことを信じる」

「本当か!?」


シャルルが心から嬉しそうな顔をした。


「でも悪いがオレには記憶が無い。死神とやらのことを教えて欲しい。あと花香のことも」


シャルルが頷き、オレをベッドに座らせて彼女も座る。が…


(近い近い!)


必要以上に近い。慌てるオレをよそに、シャルルは心地良さそうに息を吐き、オレを見つめた。

「私の左目をジッと見て…」


ドキドキしながらも言われた通りにすると、漆黒の瞳に白い紋様が浮かび上がる。


「―っ!」

『大丈夫…じっとして…』


シャルルの声が、エコーがかってどこか遠くから聞こえる。


次の瞬間、一人の男の顔が頭に浮かんでくる。会ったことが無いはずなのに、どこかで見たことがあるような…


(オレに似てる…?)


オレよりかなり目が鋭い…というか目つきが悪く、髪がやや長くて瞳の縁が紅いが、それでもやっぱりオレに似てる。


『これが死神…』


シャルルの声が更に柔らかくなる。


『…私を救ってくれた大切な人なんだ』


いや耳元で囁くなって!


『ふふっ…良い男だろう?』


…オレが言えた義理じゃないが、ちょっと趣味が悪いんじゃないか?目が淀んでるし。しかも気に入らない奴は皆殺しみたいな感じで睨んでるし。


『死神は一年前にいなくなった……私達は特殊な訳での結婚で、何と言えば良いのだろう…相手の気配が分かるんだ。相手の安否や相手の位置などがな』


シャルルが寂しそうに語り出す。


『…それが分からなくなった。そして今日問題解決の為に人間界に降り立ったのを幸いに捜しに来たんだ』


映像が消えて、すぐ目の前にいるシャルルに見つめられていた。


あー…本物でしたこの人。多分本当の人外だよ。嫌悪感は無いけど少しだけ罪悪感が湧くな。ごめん、中二病だと思って。


「でもようやく見つけたんだ。記憶を失っているようだが全く問題ない。悪魔共に制裁を与えて、お前を絶対絶対助ける」


手を握られてそう言うが、やっぱり自覚がない。


とりあえず話を変えてみる。


「なあ、シャルルは花香のこと、何か知ってるのか?あいつはただの自殺じゃないのか?」

「その前に花香という人間の情報が知りたい。死の理由や死因、そして遺物やその死体の安置場所だ」


さっきの表情とはうって変わり、真剣な眼差しで訊いてくる。


「えっと…あいつは苛められて死んだ…らしい。飛び降りたんだと。遺書があったのは知ってるけれどあとは知らないな」

「そうか…では花香とやらの残留品は何か無いか?」


また話が飛んだ。


「可能ならその遺書がいいが…」


シャルルがオレに寄り添って考え込む。


いや胸当たってるけど!わざとなのこの人!!


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