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レバー味のアイスは魔王さまのお口には合わなかったようです

今回は説明が長いです。長々となっていますがどうかよろしくお願いします。


「死神、今日は高校は無いのか?」

「ああ」


今日は土曜日。瑠璃の奴は部活でいないからいつもは一人でぐーたら出来たんだが…


「じゃあ今日は二人っきりだな…ふふ」


妖艶に微笑むシャルル。…未だこいつのキャラが掴めない。


「じゃあ今日は勉強をするぞ」

「勉強…」

「ああ、魔界やこの世界の成り立ちのな」


シャルルはオレの隣に座る。


「…長くなるのか?それ」

「ああ」

「うーん…分かった」


確かに何にも知らないのはまずい…面倒だが。


シャルルは頷いて、ゆっくりと話し始めた。


「…まず始めに、全てを創り、全てを見通す力を持った神がいた。その神は数多の世界を創り、それが消えるのを見ていたわけだが…途中で退屈してしまった。未来が見えてしまうのだから。

そこで神はその全てを見通してしまう目を抉った。そうしてその目から二人の神が生まれた…人間世界を創りし人神と、魔界を創りし魔神だ。

二人は父の退屈を紛らわす為に、二つの世界を創った。そして互いに競い合うかのように、異なる二つの世界を育てた。

人神は宇宙を創り、それを放置して自由に成長させた。まあしかし待ちきれず、宇宙を突っついてビッグバンを起こしたようだが。

一方の魔神は魔界を創り、自らの体を割いて我々を創った。人の形をしたもの…魔人や死神、悪魔らの始祖の(つがい)、動物をしたものの(つがい)、植物をしたものの(つがい)だ。

それらの進化によって、今にいたる」


ビッグバンって神さまが突っついて出来たのかよ…


「分かり難かったらすまない。質問があったら言ってくれ」

「…魔人や死神や悪魔も、元は同じものだったのか?」

「ああ。…こちらの世界の猿と人間のようなものだ」


何となく分かった…気がする。


「分かったか?」


頷くと、シャルルが次の話を始める。


「では次は魔界の話をしよう。時が進み、我々が幾多の種族に別れた後の話だ。

魔界において力を持っていたのは、魔族、死神、悪魔の三つだった。それらは和解や戦を繰り返した。

魔族は他の種族より多くの魔力を持ち、強靭な体をもつ種族。特徴としては女は頭に花を咲かせ、男に比べ遥かに強いこと。だから魔族の長は女と決まっている。ちなみに女の頭に咲く花はその女の生命力でな、その花びらの枚数によって力が変わり、それが枯れると共に死が訪れる。そしてその花を攻撃する方法は一つしかない。

死神の特徴は生まれ出た時から鎌を持っていることだ。この鎌が特殊なものでな、魔族の女の頭に咲く花をも刈り取ることが出来るのだ。魔族にとっては最大の敵と言っても過言ではなかった。まあ今は同盟を結んでいるのだが。こちらは男の力が強く、男が長を務める。

悪魔の特徴は弱いことだ。だがしかし、奴らは禁断魔石を使うことでその弱さをカバーしている。そして奴らは人間と契約し、その命を喰らうことでさらに力を得ている。禁断魔石とは魔族や死神らの魂を固めて作った、膨大な魔力を孕んだ結晶のことだ。…もし悪魔と戦う場合、それを破壊するのが最も効率的だ。色は様々だが、宝石のようなものだと思ってくれれば良い。

今は魔族と死神が同盟を組み、悪魔を敵視している状態だ。しかし悪魔の奴らはどこぞに隠れてしまい、なかなか尻尾を掴ませんのが現状だな」


そこまで一息で言って息を吐き、どこからか取り出した紅茶で喉を潤す。


「…実を言うと、悪魔のことはあまり分かっていないし、そもそも私は悪魔に遭遇したことが無い。先代から記憶を引き継いだものの、今ひとつ理解し難いものがある」

「そうか」


シャルルはこちらにしなだれ掛かり、吐息を漏らす。…余談だが、甘くていい香りがする。


「あっ…」


ふと目に入った白薔薇を撫でると、眼下の体が震えた。


「…?」

「だ…だめぇ…」


白薔薇を撫で続けると、シャルルにしがみつかれる。


「そこ……そこはさわっちゃ……ふぁっ!!」

「……………(ゴクリ)」


ヤバい、理性がぶっ飛びそうだ。


しかしこの前の言葉もあり、とにかく鉄の意志で指をシャルルから離した。


「あ…」


今度は残念そうな声。…なんなんだよお前っ。もしかしてマゾなのか!?


「…この花には特徴がもう一つあってな」


いきなりシャルルが喋り始める。


「この花に触れられるとその者の感情が流れ込んでくるのだ…」


もじもじと言うシャルルに、さっき自分が思っていたことを思い出して冷や汗が噴き出た。


それを知ってか知らずか…シャルルは頬を赤く染め、潤んだ瞳で見上げてきた。


「…襲ってくれれば良かったのに」


(アウトーーーーーーーーーー!!!!)


とりあえずシャルルから離れる。そして深呼吸し、シャルルにアイスを与えて気を逸らせてみる。


「なんだこの箱?…冷たい!」

「アイスだ。知ってるか?」

「ああ!」


シャルルにアイスの入れ物を開けてやり、スプーンを渡す。すると、恐る恐る食べ始めた。


「はむ……おいしい!これなんて味?」

「馬肉味だ」

「そうか、馬肉…………馬肉?」


頷くと、シャルルが微妙な顔をして食べ続ける。とりあえず話は逸らせた。


でも旨くないか?馬肉味のアイスって。


「ごちそうさま…」


シャルルが物欲しそうな目で見てくるので、もう一つ違うアイスを渡してやる。


「ありがとう、死神!はむっ…?」

「レバー味だ。旨いだろ?」

「ん…んぅ?」


微妙な顔をされた。


「他にもカレー味とかたこ焼き味とか、おでん味とかあるぞ?」

「…バニラはないのか?チョコレートは?イチゴは!?」

「わかった。今度買ってきてやるよ」


シャルルが安堵したように息を吐く。


気に入らなかったのか、レバー味…確かにコンビニで買っているのはオレしかいなかったけど、あまりに売れなさすぎて値段が四分の一になってもやっぱり売れてなかったけど。


「良かった…この世界には無いかと心配した」


そっちか。まあ確かに無いと物足りないけどな。


「…一息ついたところで話の続きをしようか?」

「ああ、頼む」

「うむ。…次は魔族と死神の同盟などについてだ。

魔族と死神が同盟を結んだのはかれこれ一万年ほど前だ。表向きには悪魔が力をつけてきたためとされているが…その実そうでは無い。その時の魔族と死神の長は互いを愛してしまったのだよ。悪魔云々は口実に過ぎん。ロマンティックだと、私は思うがね。

閑話休題、それによって色々なものが大きく変わった。

まず魔王のことだが…一万年より前は魔王などいなかった。数多き民族がそれぞれ長を立て、一人が暫定的に束ねたものだった。

しかしながら当時の長としてそれは頭を悩ますものだった。反対する民族もいるかもしれないし、当時その長には従わせるだけの力は無かった。だから考えたのだ。それらを従わせるだけの力を得る方法を。

…話は少し逸れるが、私は少し前、“死神の持つ鎌は魔族の女の頭に咲く花をも刈り取ることが出来る”と言ったな?死神の持つ鎌は花を刈り、命を奪うことが出来る。しかしそれに例外があったのだ。…刈り取られた花の代わりに、別の花が咲くという例外が。

その花が私の頭に咲く薔薇なのだよ。理屈も理論も全く分からんが、その者らは桁外れな力を持っていたそうだ。

そこで長は考えた。ごくわずかな可能性…愛した死神に花を刈り取ってもらい、そこから新しき花が生えるという可能性を。生まれたときから頭に薔薇が咲く者は長い歴史上何故か一人もいないし、頭に薔薇が咲く者は複数いたようだが、それらの者が同じ時を過ごしたことは一度も無かったようだからな、何故だかわかっていないが。

そしてその長は実行し、奇跡的にもそれを成功させた。それが初代魔王だ。

初代魔王と死神はめでたく結婚した。魔王が命を賭してしたそれは、今に到までずっと、魔王を選別する為の儀となっている。具体的には、魔王の死後新しき死神の長を立て、各民族一人の娘を差し出して花を刈り取らせるという儀式だ。私の時は幸いにも一人目で決まった。下手をしたら数十人の娘が犠牲になっていただろうな」

「魔王と死神の間に出来た子どもはどうなるんだ?」


シャルルが一瞬キョトンとし、少しして「ああ」と頷いた。


「言い忘れていたが異種族間では子を成せんのだよ。だから私と死神は好きなだけ情を交わせるのだ」


シャルルの目が潤む。…オレ、なんか地雷踏んだ?


「なぁ死神……久々に…な?」

「待て!ストップ!!」


もう一度引き離し、アイスを与える。


「落ち着けって、な!?」

「やだ」


ちくしょう!騙されなかった!


「プリンが食べたい」


(そっちかよっ)


冷蔵庫からプリンを取り出して与えると、シャルルの興味はそっちに逸れた。


「シャルル…お前、言い方が悪いけど無理やりの結婚だったんだろ?なのに何で…」

「死神を愛しているかって?」


頷くとシャルルが笑う。


「私だって始めは嫌だったさ。でも…」


そこまで言ってはにかむ。


「…やっぱり教えてやらない。記憶が戻ってからな」

「いいだろ別に」

「ダメだ。…まあただ一つ言えることがあるとすればだ…」


シャルルはオレに抱きつき、頬を赤く染める。


「私はお前を愛している…この世界中の誰よりも……」

「おい…!」


いきなりシャルルが泣き出した。


「ごめんでも…寂しかった……お前がいない世界では…私は生きていけないよ…」


シャルルの頭を撫で、そっと腕を回す。


シャルルはずっと泣いた。オレは言いようの無い罪悪感に襲われ、なんて声を掛ければいいかわからなかった…

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