第二話 隔離
第二話完成!
いや〜やっぱり難しいですわ小説って(汗)
加えて読んで下さる方に謝罪します。ジャンル「その他」に変更してしまいました。ストーリーを考え直しているとホラー要素が少なくなってしまったからです。
本当に申し訳ありません…それでも読んで下さる方には大きな感謝を
「そろそろかな」
現時刻は明朝7時、もう和人は一時間ほど歩いている。ホテルを出た頃にはまばらだったが今は通勤中の人々をよく見る。夏休み中なので学生の姿は無いが…
目的地はもちろんこの都市自慢の『防壁』である。
和人はホテルの中で見つけたこの街の観光パンフレットに防壁の説明があるのを思い出し見た。
正式名称『埋設式可動防壁』戦時中の愛称は『カベ』
展開時の動力は油圧、収納時は防壁自体の自重により収納
街の数箇所に大型の油圧発生用のポンプ施設があり、破壊された場合にも一箇所が生きていれば展開可能
(ただしその場合恐ろしく時間が掛かる)
防壁の材質は特殊鉄筋コンクリート、上部と外側にのみ装甲板が貼られている
防壁一つずつに迎撃用兵器装備
(軍事機密により詳細は不明)
とある。
「ふ〜ん…お、このあたりだな」
とは言うものの地面にそれらしき物は無い
和人の予想としては何も無い地面に防壁そのものが見えていると思っていたのだが…
むしろここは街中で道路の舗装もしっかりアスファルトがひいてある。
「む…道を間違えたか?」
パンフレットの地図を確認するが縮尺が小さすぎてよく分からない
人に聞けば良いのだが話しかければ大抵逃げられる(逃げなかったとしても異様にビクビクする)それが嫌であまり人に話しかけない。年寄りや駅員とかは別だが…
そういった苦い経験がある和人は自力で探すことにしたようだ。
おもむろにしゃがみこむと地面を凝視しはじめる
歩道でいきなりこんな事をすればかなり目立つのだが和人は気付いてないし、やはり誰も話しかけない。
数分凝視し続けたところで
「やっぱり無いな…」
「何が無いんですか?」
「いや、切れ………!?」
驚き顔を上げると学生服の女の子がこちらを覗きこんでいた
目が合うと彼女は「うわ!怖い顔!」と言うなりカラカラと笑いはじめた。
ここまでハッキリ「怖い」と言われたことが無かったのでさすがの和人も落ち込み
「放っておいてくれ…生まれつきだ…」
としか言えなかった
「あ、傷ついた?ゴメンね?」
「いや、いい 逆にスッキリした」
スッキリしたというのは事実だった。皆避けるばかりでそういう事は言ってくれない
そこで和人はフとある事に気付いた
「? 学生服?夏休みじゃ…」
「あ、これ?」
そう言いながら彼女は自分の服を掴んだ
「補習っ 成績わるくて♪ …で何が無いんですか?『切れ』って?」
「ん?…ああ、この街の防壁とやらを見に来たんだが見つからなくて…」
「見つからなくて?」
「その〜なんだ、地面に切れ目でもあるのかな…と」
彼女は和人の答えを聞いてしばしポカンとしていたが
「プッ…アハハハハ 『切れ目』!そんなの無いよ!アハハハハ」
「そんなに笑わなくても良いじゃないか…」
彼女はツボだったのかいまだに笑っている
そろそろ和人が「(俺は遊ばれているのか?)」などと考えだしたところで笑い声がやんだ
「あ〜笑った…フフッ」
「で、どこに行けば見られるんだ?」
「う〜ん…このあたりじゃあもう埋まってて無い……あ!ある!」
「あるのか?」
「うん 小さな公園なんだけどね、説明してわかるかなぁ けっこう入り組んでるし…」
そう言ってウンウンうなっている
「何とかなるだろう、それでどっちに…」「そうだ!」
「…なんだ?」
「案内したげよっか?」
「誰が?」
「私が!」
「補習は?」
「サボリ♪」
「留年するぞ」
「大丈夫大丈夫!行ってもどうせ寝てるだけだし」
「大丈夫じゃないだろう…」
「いいのいいの♪」
どうあっても彼女は案内する気のようで和人は断るのは無理だと悟った
「分かった…本当にいいんだな?後で文句を言っても知らないぞ?」
「さっきから良いって言ってるじゃん」
「そうか、じゃあ案内頼む」
「OK♪」
そうして彼女の先導で公園に向ったのだが、案内を頼んだのは正解だったらしい。公園までの道のりは本当に入り組んでいた。とてもじゃないが口案内ではたどり着けなかっただろう、造った人間の悪意さえ感じられる。
道中で自己紹介し分かったが彼女の名前は『上坂優』と言うらしい、同じ『カミサカ』だと分かるなり優は
「カミサカだと分かりにくいから『ユウ』って呼び捨てで呼んでね」
と言ってきたのだが丁重にお断りし”さん”付けで呼んでいる。
その他「今は一人暮らし」だとか「○○高校に通ってて」などと聞いてもいない事までペラペラ喋ってくる、まぁ楽しかったのでいいが
で、この優だが客観的に見ると…まぁかわいい いや、かなりかわいい。サラサラのセミロングの髪に整った顔だち、スレンダーだが出るところは出て引っ込むところは引っ込んでいる。
「学校じゃもてるだろう」
と言ったところ
「そうでもないよ〜『お前は黙ってればかわいいのに』だってさ」
クラスメイトの方々はよくわかっているようだ
そうこうしている内に目的の公園に着いた。小さいとは言っていたものの敷地の広さはそれなりにある。公園と言うよりも学校とかのグラウンドに近い。遊具もなく、あるのベンチだけだ。
だがその中でひときわ異彩を放っている物がある。探していた『防壁』だ グラウンドの南端で一直線に灰色の道のように伸びている。
「あれがそうか?」
「そ、ゆっくり見といでよ私はもう見飽きちゃった」
「帰ってもいいんだぞ?」
「帰ってもヒマだしソコで待ってる」
といって近くのベンチを指差す
「わかった じゃあ待っててくれ、後で何かおごる」
「りょ〜かいっ♪」
優と一旦別れ防壁にむかう 近づくまで分からなかったが”道”には切れ込みがあり一枚一枚分かれているようだ、壁一枚の大きさは大体だが厚さ3.5m横幅7mとけっこう大きい、そしてそれぞれの中心には直径1.5mぐらいの円の切れ込みがある。
一番驚いたのは、汚れているがサビや破損は見る限りでは一切無く、手でこすってやると金属特有の輝きを取り戻すことだろう。材質が気になるがパンフレットには載っていなかった。
「高さが分からないんだよなぁ、動いてくれないかな?」
「動くわけないでしょ?」
「!?」
まさか優がいるとは思っていなかったので声には出さなかったがかなり驚いていた
「おじいちゃんが若い頃は動いてたみたいだけどそれも2回だけなんだって」
「そうか…」
「うん、でね?偉い人が『もう動かす事はない』って言うから皆家建てたり道路造ったりしたみたい。 ま、これは先生の受け売りなんだけどねぇ〜」
と言って優はニャハハと笑っている
「なるほど…まぁ直接見れただけでも…!?」
突然辺りにけたたましいブザー音が鳴り響く…が数秒とたたず鳴り止んだ。
「なんなんだ!?」
「耳いたい…」
ほっとしたのもつかの間、今度は足元から連続した『ガコン』という何か大きな物が動く音がしたかと思うと防壁中心の円の部分がせり出してきて高さ2mぐらいの円柱が出来上がった。
「動かないんじゃなかったのか?」
「そのはずなんだけどねぇ…」
突然の事に驚きつつ和人は目の前の円柱を見る
円柱は全て防壁と同じ鉄製で表面は油でべたべたしている
「ん?」
円柱に縦長のスリットがあり中が見える事に気付き覗いてみると
「…銃?」
円柱の中には銃が、それも六本の銃身を束ねてモーターによって駆動する 通称『ガトリングガン』が備え付けられていた
「(これが『迎撃用』とか書いてあったやつか?でもなんでこっち向きなんだ?)」
「ねえ!危ないから離れてようよ〜!」
優が少し離れた所から叫ぶ
「(いつの間にあんな所に…)ああ!すぐ行く!」
和人が呆れつつ優の所へ向いかけた時だった
「<展開、開始します>」
と、機械的な音声が聞こえ目の前に防壁本体が地響きと共に地中から出てきた。そしてそれに続き両脇の防壁も展開していく。その様子はまるで特大の階段のようだった
少し離れた所では民家が崩れ防壁が出てくるのも見えた
「<第125区画、展開完了 全防壁展開完了まで待機します>」
和人はもう呆然と見上げている事しかできなかった。それは優も同じようだ
先ほど分からなかった防壁の高さだが大体8mちょいといったところで、壁には埋め込み式のハシゴと『供給口』と書かれた鉄のフタが有るだけ という簡素な造りだった。生憎と外側がどうなっているのかは分からない。
そうしてどのくらい呆けていただろうか、だが次に聞こえてきた防壁の声によってイヤでも動かざるをえなくなった。
「<全防壁展開完了 50m以内の移動物に対し射撃を開始します。 6…>」
「!? 優!!走れーー!!!」
叫びながら和人は走り出す。
命を賭けた50m走が始まった…
読んでくださりありがとうございました。
ヒロイン登場です。代わりに「ヨネキチおじいさん」っていう案もあったんですがやめました。読みたくないでしょう?そんなの(笑)
次回『米吉さんと人工呼吸』 …嘘です