5話 ひとでしょう?
「っ!? 精霊が感じられない・・・!? 何をしたんだ魔王!?」
勇者の周りに精霊が全くと言っていいほどいなくなるのを感じた勇者が叫ぶ。
「何って・・・私に従ってもらっただけだよ。」
クスクスと笑うにつれて、周りの精霊達もクスクスと笑い出す(勇者には分からないが)。
精霊は気まぐれで、どんな事にも楽しみを見つけるものだ。勇者を裏切って魔王につくという事も面白いと考えたのだろう。従え、と命令されてるはずなのに楽しそうだ。
「そ、そんな事できるはずがない! だって精霊は、魔族には力を貸さないものだろう!?」
驚愕の表情で勇者は汗を流しながら大声を張り続ける。
「んー・・・なら、試してみようか? 《精霊達よその力を我の為に示せ<風の刃>》!!」
少し魔法とは違う魔力の使い方だが簡単に出来た。
風の精霊が少し大きな(ていうか結構な大きさの)風の刃を作り出し、勇者に標準を定めた。
「っ!」
「行け。」
ゴオオォォォォ
という空気を裂く音が大きく鳴り響き、風の刃が勇者へと迫る。
「・・・くっ! 《精霊よ我を救え!<風の防御壁>!》」
勇者が少し省略した呪文を唱えるが精霊はその声に答えることはない。
「くそ!」と呟き間一髪のところでカマイタチを避けた。
「クスクス♪ どお? 貴方が望んだ勝ち方をされる気分は?」
次々と作られては放たれるカマイタチと、それを間一髪で避け続ける勇者を見て私はほくそ笑み。
精霊魔法は魔力を精霊に渡すことで変わりに精霊に魔法を使ってもらうもの。精霊は魔力そのものの様な存在だ。だからこそ魔力を必要とするのだ。だが私は魔力を精霊達に渡してはいない。
精霊達は契約相手の勇者から魔力を取り、その魔力を使い私の為に魔法を放っているのだ。
つまり、私は魔力が全然減っていないというのに、勇者は逃げ続けることで体力が減るうえに魔力も精霊に吸い取られているという圧倒的な差があるのだ。
勇者に勝ち目はないのは明白だった。
それは勇者も分かっているはずなのに、勇者は諦めなかった。
「・・・ねぇ貴方に勝ち目はないのは、貴方自身が分かってるはずなんだけど・・・。
どうしてそこまで続けるの? 今なら許しを請えば許してあげるのに・・・。」
そう語りながらも私は分かっていた。勇者が何故諦めないのか・・・。
「ぼ、くは負ける、わけには、いかないんだ! そうしないと・・・僕の、家族が・・・皆が!!」
息絶えたえになりながらも勇者は言葉を繋ぐ。
勇者とは人の為に戦うもの。 だからこそ負けるわけにはいかないのだ。
・・・やっぱり、どの世界にもこういう奴は居るものなんだな・・・
呆れのような懐かしさの様な思いに浸り、私は勇者を見据える。
「・・・助ける為、ね・・・。 じゃあどうして魔族は助けようともしないのかな?」
魔族だって人なんだ。 なのに人間は魔族を悪だと言う。
同じ人なのに。 多分私は人じゃないんだろうけどさ。
それでも、貴方達は人でしょう?
思ったよりも長く続く勇者・・・(汗)




