6話 よわいです。
・・・上手くいった・・・。
周りが絶句している中、私は興奮していた。
天狼の傷を治したときのように、魔力を帯びた言葉が命令となって相手に届いたことに・・・。
いやぁ~・・・。やろうと思えばできるもんだね~。
顔には出さないように心がけていたが、それに反し、私の口は弧を描くように
不気味に歪んで笑っていた。
勇者一行はそれを余裕がある と誤解して一歩退く。だが、勇者だけは一歩前に踏み出した。
「・・・私は勇者だ!ここでお前を討ち取ろう!!」
「断る。」
断固拒否だ。
いやいや・・・そんな『何故だ!?』みたいな顔しないでよ。
討ち取る=殺す じゃん。殺されるの嫌に決まってんじゃんか。馬鹿か、お前は。
「くっ・・・なら今っ!!」
何が『なら』だよっ!?
それにここで暴れないで。ここは私の大切な街なんだから。
勇者は チッ と舌打ちし、腰に差してある剣を引き抜き、振り翳す。
「・・・ユウ、メリー。」
私の声に反応し、私の前・・・勇者の前に闇の玉が二つ現れる。
それは徐々に(実際は一瞬)人型をかたどり、ユウとメリーの姿になった。
ユウが勇者の手を蹴り、剣を落とさせた。
カシャン
剣を落とした本人には何が起こったのか分からず、私と、突然現れた二人を何度も見比べる。
残りの勇者の仲間たちも周りの魔族達も驚いていた。
「あ・・・あれはミージェル家の息子とリオネラ家の娘じゃないか!!」
「っ!ユウル=ミージェル様とメリーネル=リオネラ様!?」
・・・あ、魔族たちの驚く理由は勇者たちとは違ったみたい・・・。
てか『様』付けで呼ばれるほど凄かったんだ。こっちが吃驚だよ。
「・・・まぁいいか。 ねぇユウ、メリー♪」
私の呼びかけに二人が片膝をつき跪く。
これは私が『魔王』のときには普通のことだ。
「どうかされましたか?魔王様。」
メリーが顔を上げ、凜とした表情で聞いてくる。私はにっこりと笑い『お願い』する。
「この人達・・・殺して? 私はめんどくさいの。」
そんな物騒な台詞は、無邪気な笑顔を浮かべる私には何故か似合っていた。
誰もが台詞の意味を理解しながらも私に見惚れていた。
魔族の皆も、見慣れているはずの二人も、勇者たちも。
そして木も、鳥も、空気も、精霊も・・・誰もが、ね。
「「はい。魔王様の手は煩わせません!!」」
その言葉と共に二人が動き、勇者たちに襲い掛かり・・・終わらせた。
実に呆気なく。
ドサドサドサ・・・
事切れた三人に私は冷たく冷酷な声で告げる。
「醜く醜悪で、愚かな人間共。死の中で己の無価値さを思い知るのだな。」
・・・にしても弱っ。まさかあんなに呆気なく終わるとは・・・。
君らには恐れ入ったよ(別の意味で)。てかユウとメリーに普通に勝つ私って一体・・・。
「ところでフェノ様?」
ユウの優しい声に ゾワリ と悪寒が走る。
ナンデダロウ?嫌ナ予感シカシナイヨ?
「・・・な・・・何かな~、ユウ?」
「お披露目はまだ先だと言いましたよね?何のために準備をしていたと思っていたんですか?
お披露目の際に混乱が起きない様に、と頑張っていたというのに・・・まさかこんな街中で、
こんな目立つ所で暴露するなんて・・・。ぼくの苦労は一体何だったんでしょうかね?フェノ様?」
ユウの説教はそれから一時間続いた。この人目の多い街中で。
しかも満面の笑顔で。
気付けば周りの者たちが微笑んでその光景を見る始末。
た・・・助けてくれぇ~・・・
ユウは結構腹黒・・・?
おかしいな。
もっと純粋キャラだったような・・・




