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転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


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第七十七章:曹操は火薬への対抗策を整え、再戦を命じた

十万の軍が敗れた後も、曹操は降伏しなかった。

彼は敗残兵を集め、火薬の轟音を聞いても動かない訓練を命じた。

部隊の間隔を広げ、旗の伝達を増やし、偽の音に惑わされないよう将を叱咤した。

その報告を聞いた張飛は鼻を鳴らした。

「敵も賢くなるもんだ」

孔明は頷く。

「賢くなった敵ほど、次の一手が読みやすい場合もあります」

俺は曹操の対策を聞き、むしろ安心した。

敵が火薬だけを恐れなくなれば、無用な混乱で民が巻き込まれる危険も減る。

だがこちらも立ち止まれない。

工房では携帯できる小型の防護柵を試作し、兵の腕に負担がかからない形へ改めた。

大きな兵器を作るより、壊れたものを直せる構造にした。

親方は「また地味な仕事だ」と笑った。

炊事場では別の試みを始めた。

長い行軍で冷たい食事しか取れない兵のため、焼いた穀物と豆を混ぜた携行食を用意する。

味は素朴だが、湿気を避ければ持ち歩きやすい。

兵たちに食べてもらうと、「水が欲しくなる」「硬すぎる」と遠慮のない意見が返った。

俺はそれを全部書き留めた。

食事は作り手の満足ではなく、食べる兵の力になって初めて成功だ。

曹操の新しい訓練の話を聞いた夜、俺は一度だけ恐ろしくなった。

こちらが強くなれば敵も強くなる。

いつまで勝てるのか。

孔明は俺の不安を見抜いたように言った。

「明日の敵を過小評価しないことが、今日の勝利を守ります」

龐統は「それでも勝ちましょう。敵が賢いほど、勝った時の値打ちも増します」と笑った。

二人の違う言葉が、同じ場所で俺の背を支えた。

曹操が火薬を再現しようとしているという報告を、俺は工房の床で聞いた。

職人は怯えたが、孔明は「敵が学ぶのは当然」と言った。

問題は火薬の秘密を守ることだけではない。

雨に濡れた箱を運んでしまった兵が叱責を恐れ、黙っていたことが分かった。

俺はその兵を呼び、失敗を報告すれば罰しないと約束したうえで保管方法を改めた。

龐統は「敵は我らの道具を写せても、失敗を隠さず直す習慣までは写せまい」と笑う。

翌日、荷車の軸を統一寸法に揃える試験が始まった。

音の大きな兵器より、故障をすぐ直せる車の方が、長い戦いでは頼もしかった。

朝の点検で、荷車の交換部品の扱いをめぐって小さな言い争いが起きた。

雨に濡れた伝令は曹操軍の火薬対策の経験から譲らず、別の兵も自分の理屈を持っていた。

曹操の兵は爆音に身を伏せなくなった。

試し撃ちを見た若い工兵が「もう役に立たないんですか」と聞いた。

俺は首を振った。

「道具が読まれたなら、使い方を変える」

だが、その答えを口にするまで、少し時間がかかった。

孔明は曹操軍の新しい訓練を逆手に取る策を立てた。

「轟音に動かぬなら、音を使わず動かしましょう」

龐統は「相手が勇敢になったのなら、勇敢さを利用します」と答えた。

二人の軍師は、火薬を戦場の中心から外した。

敵が最も警戒しているものを、あえて使わない。

俺は新しい補給表を見せた。

「ならば兵器の運搬を減らし、食料を増やせます」

孔明は微笑んだ。

曹操軍の先遣隊が進んだ夜、劉備軍は静かに陣を移した。

敵は轟音を待ったが、何も起きない。

朝になって気づけば、関羽が渡河地点を押さえ、張飛が高地を取っていた。

敵は勇敢に前進したまま、退路を失った。

曹操の対策は無意味ではなかった。

ただ、孔明はその対策を知ったうえで別の戦いを選んだ。

俺は思った。

兵器の進歩だけが、戦の進歩ではないのだ。

敵の対策を知った工房では、職人たちが新しい兵器を競うように提案した。

俺はその熱意を嬉しく思いながらも、まず安全に運べるか、修理できるか、使い手が理解できるかを尋ねた。

答えられない案は保留にした。

親方は「お前は夢を壊す」と苦笑したが、すぐに「だからこそ形になる」と続けた。

俺は試作品を急がせず、実際に扱う兵の意見を聞く日を決めた。

龐統は「新兵器がなくても勝てる策を考えました」と言い、孔明は「新兵器があるからこそ、使わない選択ができます」と答えた。

二人の言葉は矛盾していない。

俺たちの強さは一つの道具ではなく、いくつもの選択肢を持つことにある。

俺は筆を置き、次の行軍のために携行食を配る班へ向かった。

試作した共通車軸は、最初の試験で外れた。

職人は寸法を揃えたはずだと悔しがったが、俺は荷車ごとに穴の摩耗が違うことに気づいた。

新品だけを揃えても意味がない。

古い車に合わせるための薄い木片と固定具を追加すると、ようやく車輪が回った。

孔明はその様子を見て「敵は火薬を写すでしょう。しかし我らは、壊れた車を直す速さで先へ行けます」と言った。

俺は翌日、曹操の対策について現場の者から話を聞いた。

作戦図の上では整って見えたことも、実際には小さな不都合がいくつもあった。

誰かが道を間違え、誰かが荷を落とし、誰かが食事を後回しにしていた。

俺は一人ずつ理由を尋ね、怒る前に仕組みを確かめた。

失敗した人間を叱れば、その日は静かになる。

だが次から失敗が報告されなくなる。

それでは軍は強くならない。

兵の一人が「こんな細かい話まで聞くんですか」と不思議そうにした。

俺は答えた。

「細かいことが積み重なって、最後に大きな差になるんだ」

俺が荷車の交換部品の数を数えていると、雨に濡れた伝令が戻ってきた。

曹操軍の火薬対策では大将の号令より、足元の泥や手の冷たさが厄介だったという。

車軸を交換できるようにした試作車を、職人が二台並べた。

片方の車輪を外してもう片方へ移すと、張飛は「敵の車輪も奪えば使えるのか」と笑った。

職人は即座に「寸法が違えば無理です」と返した。

孔明はそのやり取りを聞き、規格をそろえる仕事が火薬より長く戦を支えると見抜いた。

曹操軍が火薬の音に慣れ始めたという知らせに、俺は少し安堵した。

音だけで敵を退かせる戦は、いつか終わる。

その時に何が残るかが本当の勝負だ。

工房で試していたのは、荷車の車軸を共通の寸法に揃えることだった。

戦場で一本折れても、別の車から部品を移せる。

職人は「新しい武器より地味だ」と笑ったが、龐統は「敵が音を恐れなくなっても、腹は減りますからね」と返した。

孔明は新しい地図に補給線を引き直した。

曹操が学んだなら、こちらも学び続けなければならない。

ずぶ濡れの伝令は、火に当たる前に伝言を言い切った。

張飛が毛布を投げると、ようやく肩の力を抜いた。

曹操軍の火薬対策で見た光景がまだ頭から離れないのだろう。

俺は荷車の交換部品を脇に置き、温かい飲み物を差し出した。

何か言うべきか迷ったが、相手が自分から話し始めるまで待つことにした。

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