表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生したら三国乱世だった件  作者: レモンティー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/49

第三章:飯がまずい

劉備軍に加わって数日。

転生者が最初に気づいたのは、戦でも訓練でもなかった。

「……これ、食事か?」

木椀に入った粥。

いや、粥というには薄すぎる。

水に、わずかに穀物が浮いているだけだ。

一口食べる。

(まずい)

即答だった。

味の問題ではない。

“栄養として成立していない”。

周囲の兵士は普通に食べている。

誰も不満を言わない。

むしろ「今日はまだマシだ」とさえ言う。

(これが日常か……)

転生者は静かに理解する。

この軍は、戦う前から消耗している。

夜営の火のそば。

兵士たちは疲れ切った顔で座っている。

だが、その疲労は戦闘のものではない。

“日常の蓄積”だ。

(これ、戦場に行く前に削れてるな)

頭の中で計算が走る。

・栄養不足

・塩分不足

・慢性的なエネルギー欠乏

(勝てる軍じゃない)

そのとき、張飛が横に座る。

「おい、孤児」

「……はい」

「飯、まずいか?」

直球だった。

転生者は少し迷ってから答える。

「まずいというより……足りてません」

張飛は笑う。

「同じだろ」

だが、その目は笑っていない。

その夜。

劉備が焚き火の前で静かに言う。

「兵たちの顔色が悪いな」

転生者は一歩前に出る。

「少し、お時間よろしいでしょうか」

劉備が顔を上げる。

「なんだ」

転生者は答える。

「食事が原因です」

一瞬、沈黙。

劉備は焚き火を見つめたまま言う。

「戦の話ではないのか?」

転生者は首を振る。

「戦より前に、飯で負けています」

張飛が眉をひそめる。

「飯で負けるだと?」

転生者は続ける。

「人は空腹では戦えません」

「正確には、“戦っても勝てません”」

空気が少し重くなる。

この時代の常識からすれば、奇妙な発言だ。

だが劉備は笑わない。

ただ静かに聞いている。

「……どうすればいい?」

その一言は、問いではなく“許可”だった。

転生者は少し息を吸う。

(ここだな)

「まず、粥を濃くします」

「次に、塩の配分を統一します」

「あと——保存方法を変えれば、無駄が減ります」

張飛が鼻で笑う。

「それで戦に勝てるのか?」

転生者は即答する。

「勝率は上がります」

「それだけで十分です」

沈黙。

そして劉備が言う。

「やってみろ」

その瞬間だった。

この軍の“基礎”がまた一つ変わることが決まる。


■小さな改革

数日後。

粥は少しだけ濃くなった。

塩の量が均一になった。

保存された食料の廃棄が減った。

変化は小さい。

だが兵士たちの反応は早かった。

「……なんか、最近疲れにくいな」

「腹が減りにくい気がする」

まだ誰も気づいていない。

これは戦力強化ではない。

“持久力の底上げ”だということに。

転生者は焚き火を見ながら思う。

(この世界、剣より先に飯だな)

遠くで軍の足音がする。

まだ戦は始まっていない。

だが確実に——

この軍は“別物”になり始めていた。

そして、その静かな変化の中で——

俺の人生は“巻き込まれる側”から、“選ぶ側”へと変わっていく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ