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ようこそ! メリヴェール王立探偵事務所へ  作者: 恵良陸引
Episode 1 ようこそ!

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7/9

Episode 1 ようこそ!(その7)

 『カーター魔法石店』の周囲は、日が暮れるとほとんど真っ暗になってしまった。このあたりは酒場など夜に営業している店がなく、ほとんど住宅もない。どの建物も明かりが灯っていないのだ。必要がないからか魔法灯もなく、遠くからの街の明かりでかろうじて暗闇からまぬがれていた。


 まったくひと気はなかったが、誰ひとりいないわけでもなかった。何者かが通りの陰から姿を現し、『カーター魔法石店』に近づいてきた。手ぶらではなく、大きな二輪の荷車を引っ張っていた。行商人が使うような、ひとも載せられるほど大きなものだ。


 その人物は扉の前に立ち止まると、小さな光が手元できらめいた。どうもここを開ける鍵を手にしているらしい。


 その人物は、静かに扉を開くとそっとなかへ入った。室内が狭いことを知っているのか、荷車は店には入れず、入り口に置いままにしている。


 室内に入るとランプの明かりを灯した。狭い室内に、ランプの明かりが棚や作業台に並ぶ物たちの影を踊らせる。


 その人物は迷うことなくひとつの棚の前に立った。身をかがめると棚の下に潜らせていたワゴンを引っ張り出す。ヨアヒムが納品して空になったガラスのトレイがランプの明かりを受けて金色に輝いた。


 しかし、目的のものはワゴンの上になかったらしい。その人物はワゴンを奥へ押しやると、棚の下にもぐり込んだ。ガタガタと音をさせると、間もなく一枚の板を引っ張り出していた。棚の裏にある壁板を外したのだ。


 その後も一枚、また一枚と外し続け、やがて、ワゴンの大きさと同じぐらいの広さの板を取り除いてしまった。


 その人物はランプを持ち直して奥を照らした。ランプの明かりは、奥にうずくまっている誰かの姿を浮かび上がらせた。顔をうつむかせているので人相はうかがえない。その人物はうずくまっている者に手を伸ばしたが……。


 その手は急に伸びた手につかまれた。うずくまっている者がつかんだのだ。


 「な、なんだ?」

 つかまれた人物から狼狽の声があがる。「ま、まさか、もう屍霊グールになっちまったのか?」

 懸命にふりほどくと、棚の下から飛び出した。そのまま振り返ることなく店からも飛び出す。


 すると、その人物の足もとが急に明るくなった。その人物を中心に円形の文様が浮かび上がったのだ。魔法を知る者であれば、それが魔法陣であるとわかるだろう。


 「『脱力の陣』!」

 大きな声が道いっぱいに響く。まだ幼さを感じる、少女の声だ。


 魔法陣の光が強くなる。すると、陣の中心にいる人物はがくりとひざをつき、そのまま道に倒れこんだ。

 「ち、力が入らない……」

 倒れた人物から声がもれた。それは若い男の声だった。


 街灯がないはずの通りに明かりが灯りだした。いくつもの簡易魔法灯が運び込まれていて、それらが明かりを灯したのだ。間もなく、あたりは光で満たされた。


 倒れた男はまだ立ち上がらない。いや、立ち上がることができないのだ。


 「現場を押さえました」

 店からひとりの人物が現れて、倒れている男を見下ろした。それはレトだった。

 倒れている男はこの場から逃れようと、なおもがいていた。立ち上がることもできない状況では、それはむなしい抵抗ですらなかった。


 「あなたを、オウヤ・カーター氏殺害の容疑で逮捕します」


 レトから決定的な宣告を受けたのは、デキータ・アニデーシだった。

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