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その後の2人は

 面食い令嬢、50回目の破局から数日が経った。


「メイア、俺のこと好きですか?」

「うん。好き。大好き」

「俺もです。メイアの事がこの世の何よりも大切で、メイアの傍にいられることが俺のなによりの幸せです」


 甘えるようなことを言いながら、私を後ろから抱きしめてくるブルーノ。抱きしめる力は加減されているとはいえ、強い。全然動けない。


「教室でイチャイチャしないでくれる? バカップル共」


 不機嫌そうに私たちを睨むヴェロニカ。


「いやぁ、やっぱり学園名物異色カップルは流石だね。尊敬するよ」


 ニコニコしているが、相変わらず言葉に裏を感じて背筋が寒くなるカルロ。


 全く違う反応をする2人から見られていることへの羞恥はもうない。これを数日続けていればそうもなる。


 学園一のブサイクのモテ期。そこから面食い令嬢の大胆な再告白。それらは学園中で格好の話のネタとなった。当事者としては恥ずかしい限りである。


 結果的に私たちは交際継続。良好な恋人関係を築いていくことになった。


 ただ、破局の傷がよっぽど深かったようで、ブルーノは毎日こうやって私に愛の確認をしてくる。逃げは許さない、というように抱きしめられて、ひたすら愛を請われ、愛を囁かれている。


 そのやり取りへの羞恥と比べれば、2人からの視線への羞恥は軽いもの。すっかり慣れてしまった。それが良いことなのかは判断に困るところだ。


「そういえば、あの子とは話しをしたの?」

「あの子?」

「ブルーノ様に擦り寄っていたあの美少女」

「あぁ、アイリさん」

「そんな名前だったのね」

「うん。偶然会って話をしたよ」


 空前絶後の後輩美少女――アイリさんと廊下ですれ違ったのは昨日のこと。なんでも私も話をしたくてタイミングを見計らっていたらしいが、ブルーノに阻止されていた、と憎々しそうに語っていた。


「謝られたよ」

「何に対して?」

「ブルーノを略奪しようとしてたことについて」


 思い出すのは、寂しげに笑いながら話すアイリさんの姿。


『私、こんな外見なのでブルーノ様も簡単に靡いてくれると思ってました。でも違った。あの人は外見とかではなく、貴女を見ていた。羨ましい限りですよ。……私もいつの間にかこの世界の価値観に染まっていたみたいですね。本当になりたい自分を押し込めて、無理やり合わせて。変わりたいな……ってすみません! 変な話をして。これからブルーノ様には関わりません。恋以外にしたいことも出来たので。お幸せになってくださいね』


 彼女にも事情があったみたいだった。それに深入りすることはしなかったけど、アイリさんもアイリさんの望む幸せを掴めればいいと思う。


「……あまり、他の人の話をしないでください」


 私のお腹に回された腕の締めつけが強くなる。グッと押されたせいでお腹が圧迫されて苦しい。放課後なのでお昼ご飯はほぼほぼ消化されて胃には無いと思うが、何かが口から出てきそうだ。


「ご、ごめん……もう、しないから……少し緩めて……」

「あ! す、すみません」


 すぐに力を緩めてくれたおかげで事なきを得た。今後はもっと発言に気をつけよう。そんなことを毎日思っている気もする。


「……面倒なのに捕まったわね」

「面倒?」

「えぇ、カルロみたいに面倒じゃない」

「まぁ、否定できないね。僕とブルーノくんは似ている部分があるし」

「似て……?」


 いろいろな点を比較するが、似ている部分がさっぱり思いつかない。顔は似ても似つかないし、体型も全然違う。性格もブルーノの持つ優しさをカルロが誰にでも振りまくところを見たことがない。


「気づいていないなら、それでもいいと思うよ」


 誤魔化された気がする。本人はこれ以上答えてくれないだろう。


「お二人共、余計なことは言わないでください」


 表情は見えないが、多分少し拗ねている表情を浮かべている。それなりに長い付き合いになったので簡単に想像ついた。


 今は分からない二人の類似点も、もしかしたらこれから共に過ごしていくうちに見つかるのかもしれない。人に聞くよりは自分で考えながら過ごした方が楽しい。


 まだ彼の知らない部分は沢山あり、少しづつ真っ白を埋めていく。そんな日々を想像するだけで胸が踊る。


 まだまだ続くブルーノとの時間。その時間の多くが幸福で満たされていることを願いながら、私はブルーノに体を預けるのだった。

ここで終わりです。読んでくださりありがとうございました。

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