第71話:「揺らぎの共鳴」
【廃都グラウンドゼロ・塔の内部】
塔の中、崩れかけた階段を昇るミナの足取りは、迷いを含んでいた。
だがその背に浮かぶ紅い紋章が、彼女の選択を語っていた。
イズナは背を向け、虚空を見つめていた。
ミナ「……イズナ」
イズナ「“進化”ってね、本当は、ただの“痛みの積み重ね”かもしれない」
振り返るイズナの瞳は、以前よりも人間らしく見えた。
ミナ「それでも……あなたは変われる。私たちは、まだ──」
直後、塔全体が震える。
壁を突き破り現れたのは、黒い瘴気に包まれた異形の存在。
???「おしゃべりは終わりか?」
その声は、かつての研究員・“オリジンの右腕”だった男のものだった。
だが今や、その姿は完全な融合体──かつての面影を失っていた。
融合体「共鳴体反応、開始する」
イズナの身体が激しく脈打ち、血が再び光を放つ。
紅い紋章がミナと連動し、空気が歪む。
イズナ「やめろ……それは、私たちの意志じゃない!」
だが、融合体はその言葉を無視し、彼女たちの共鳴を利用しようとする。
【遠隔地・監視衛星基地】
オリジンのモニターに映し出される、揺らぐイズナとミナの映像。
オリジン「“意思”か。“感情”か。ふふ、だから人間は愛おしい。
破壊の寸前でこそ、最も美しく輝く──」
その隣で、黒いマントの男が静かに手を翳す。
???「始めるぞ。“共鳴の核”を回収するために」
【塔・最上階】
イズナ「ミナ……“共鳴”が制御できない。逃げて──」
ミナ「逃げない。あなたがくれた“進化”は、痛みじゃない」
ミナが手を伸ばすと、紅い光が花のように広がり、空間が反転する。
塔の天井が崩れ、夜空が姿を見せる。
そのとき、イズナの頬にまた一滴の涙。
だがそれは、悲しみではなく──希望の証だった。
***
次回予告
第72話:「記憶の器」
暴走する“共鳴”が開いた空間の先で、ミナたちは失われた記憶の断片と対峙する。
そして、オリジンの正体に迫る真実が、ゆっくりと開示される──