第70話:「33号の記録」
【回想/極秘研究施設・旧区画】
白いガウンの男たちの中、無機質なベッドに寝かされた少女。
ナンバリングされた腕輪には──No.33。
名はまだない。ただの“サンプル”。
研究員A「33号、感情反応値に異常あり。廃棄申請を──」
所長「待て。それは“進化の兆し”かもしれん」
そう言った男の目には、まるで“所有物”を見るような光があった。
***
【現在・廃都グラウンドゼロ】
イズナは廃墟に立つ塔の上から、焼け落ちた街を見下ろしていた。
彼女の目の前に現れるクロたち。
クロ「……ようやく会えたな。お前が、“イズナ”か」
イズナ「おかえり、クロ。君はまだ“人間”でいたいの?」
ミナ「イズナ、私……」
イズナ「ミナ、君は選べる。“血の進化”か、“人としての終焉”か──」
***
【研究所跡・地下アーカイブ】
ナナが回収した記録端末を解析する。
映像ログには、まだ幼いイズナの映像。
無機質な部屋の中、涙も流せず、ただ言われたことを繰り返す姿。
ナナ「彼女……“感情のプログラム”を後天的に学ばされたのね」
ナギ「感情を“持たされた”。なら……本当の彼女は、どこに?」
ナナ「きっと、“記録”の中じゃなく、いま目の前にいる子の中にいる。
でも……それを見つけるのは、あの子自身しかできない」
***
【ミナとイズナ】
ミナ「どうして、私を助けたの……?」
イズナ「きっと、あの時の私は、まだ“誰かでいたかった”んだ。
“自分は怪物じゃない”って、誰かに言って欲しかった」
ミナ「それじゃ、今のあなたは……?」
イズナ「もう、感情はいらない。
進化に必要なのは、“痛みを超える意志”だけ──そう思ってた。でも……」
イズナの瞳が揺れる。
***
【遠方・モニタールーム】
オリジン「33号が“揺らいでいる”? ふふ……いい兆候だ。
“人間に戻ろうとする意志”ほど、美しく愚かなものはない」
隣の影──黒いマントを羽織った新たな敵が笑う。
???「では、“共鳴者”の抹消を?」
オリジン「いや……“融合”させろ。“人間性ごと取り込めばいい”」
***
【ラストシーン】
イズナの血が、風に溶けるように揺らぎ、ミナに触れる。
血液が反応し、ミナの背に紅い光の紋章が浮かぶ。
イズナ「君が決めるんだ。進化を、どう使うか──」
ミナ「私は……まだ、人でいたい」
その言葉に、イズナの頬を一筋の涙が滑る。
──それは“感情”だった。
次回予告
第71話:「揺らぎの共鳴」
イズナとミナの共鳴が、かつてない進化を生む。
だがその裏で、“融合体”が動き出す──