第67話:「静寂を越えて」
【研究施設・外縁部】
数日ぶりの青空が、瓦礫の隙間から見えた。
大破した旧都市圏にて、クロたちは小休止を取っていた。
ミナ「イズナ、調子はどう?」
イズナ(白髪の少女)は静かに頷く。
「……うん。前より、心が軽い気がする。ありがとう、ミナ」
ミナは微笑む。「仲間でしょ?」
【ナナとナギの会話】
ナナ「イズナの脳内構造……いや、精神領域は“共振核”のように機能してる。
彼女を通じて、Zウイルスの“中枢ネットワーク”にアクセスできるかもしれない」
ナギ「つまり、ウイルスそのものを“遮断”したり、“制御”したり……?」
ナナ「理論上は可能よ。だけど、問題が一つある」
「彼女の命が、“鍵”そのものになってしまう」
***
【夕刻/ミナとイズナ】
二人は小高い丘の上で風に吹かれていた。
イズナ「私、みんなみたいに戦えない。怖いし、痛いのも嫌だし……」
ミナ「私もそうだったよ。
でも、ある日気づいたの。誰かのために戦うって、怖いけど──
それ以上に“守りたい気持ち”が強かった」
イズナ「……ミナは、強いね」
ミナ「違うよ。弱いまま、進んでるだけ」
その言葉に、イズナの瞳が少しだけ揺れた。
***
【クロの異変】
その夜、クロの身体に異変が起きる。
硬化アーマーが出現せず、逆に血が蒸発するように消えていく。
クロ「チッ……なんだこれは……?」
ナナ「アーマー化に“過負荷”が出てる。
使いすぎで、血液中の自己再生因子が壊れてるわ」
ミナ「じゃあ、このままじゃ──」
ナナ「クロはもう、“通常の進化者”じゃない。
彼の体が、次の段階に入ろうとしてるのかも」
***
【その頃・北方廃都】
吹雪の中、異形の存在が立ち上がる。
それは人の形をしていた──だが、皮膚は青白く、
両腕は剣のように変異し、背からは脊髄のような触手が蠢いていた。
???「……ようやく、目覚めたか。
次の“鍵”は、イズナか……面白い」
その男の目は、人間ではない“二重螺旋”の光を宿していた。
──最初の進化体、目覚める。
次回予告
第68話:「進化する者たち」
クロの血に異常が発生し、ミナの体にも兆しが現れる。
“選ばれた者たち”が次々と“第二進化”へ突入していくなか、
“オリジン”の手が、イズナに迫る──