第65話:「第三の進化」
【警告レベル:ブラック】
未確認のZ進化体、接近中。
“それ”は──従来のウイルス応答形態とも異なる。
既存のプロファイルにも、適応アルゴリズムにも該当しない。
それは、完全なる「異質」。
そして、その足音が、静かに響く。
【クロ】
「なに……あれ……」
最初に気づいたのは、クロだった。
一瞬、視界の端に“靄”のようなものが見えた。
それは形を持たず、だが意志だけが確かに感じられた。
【ミナ】
「待って、あれ……人?」
靄の中から、少女のシルエットが現れる。
見た目は10代半ばの少女。だが、背中には触手でも翼でもない、“煙のような影”が揺らめいていた。
その少女は、地面にそっと足を下ろすと、口を開いた。
「みんな……うるさいの。静かにしてくれない?」
その声は、静かで柔らかく、だが確実に、ゾッとする寒気を孕んでいた。
【ナギ】
「誰だ……あいつ、感染者か? それとも……」
「Z進化体。だが、分類不能。おそらく“第3系統”……!」
ナナの分析が追いつかない。
だが、その少女の血中構成は驚くべき数値を示していた。
**“ウイルスと共存していない”。
むしろ、ウイルスそのものが彼女の中で“休眠”している。
【少女】
「わたしは“イズナ”。
お母さんが作った。わたしを……戦わせるために」
***
【イグザクト vs プロトゼロ】
両者の戦いは一時停止した。
二体の進化体が、まるで本能的に“彼女”の存在を警戒したからだ。
イグザクト「……お前は、鍵か」
プロトゼロ「ソノ器──超エラー領域。生物学ノ限界ヲ逸脱」
だがイズナはただ、寂しそうに笑った。
「静かにしてくれるなら、戦わなくてもいいのに」
***
【ミナの視点】
あの少女は、敵じゃない。
けど、味方でもない。
彼女の存在は、“終末の加速”のようだった。
そして、クロが気づく。
イズナの足元に、赤黒い“影”が広がっていることに。
「……ナナ! あれ、ウイルスが……広がってる!」
ナナ「違う……あれは、“自己展開型の記憶汚染領域”!」
***
【エンディング】
イズナが呟く。
「みんな、進化したかったんでしょ?
じゃあ──わたしの中に、入ってきて」
その瞬間、空間がねじれた。
黒い花が咲くように、現実が侵食される。
次回予告
第66話:「イズナの中の世界」
少女の中に広がる“静寂の領域”。
クロたちは、意識ごと引き込まれる。
そこには、**世界の“真実”**が眠っていた──。