第63話:「旧神と進化の矛盾」
【交戦領域:崩壊境界点】
戦場は、かつての都市跡。
崩れたビル群、逆巻く空、血の雨。
その中心で、ミナとナギはプロトゼロに立ち向かっていた。
プロトゼロの肉体はもはや“生物”の範疇を逸脱している。
無数の眼、硬質な翅、蠢く触手。そしてその中心に、人の顔だけが静かに浮かんでいる。
「キミたちノ進化ニ、意味ヲ問ウ」
その声は機械的でありながら、どこか悲しみに満ちていた。
***
【クロの視点】
クロは離れたビルの屋上から、狙撃態勢に入っていた。
彼女の“血弾”は、自らの血を圧縮・凝固させて発射する特殊技術。
しかし、プロトゼロには通じない。
「血じゃダメなら……感情を込めてやるよ」
彼女の銃が一瞬だけ蒼く光る。
──その弾丸は、プロトゼロの左眼を撃ち抜いた。
「……通った?」
だが、それはプロトゼロの進化を“促す”結果となってしまう。
***
【ミナとナギ】
「ナギ、私たちの能力……混ぜられると思う?」
「試すしかねぇな」
ミナのアーマー化とナギの“増殖筋繊維”が融合し、異形の一撃を生み出す。
それは確かにプロトゼロに“傷”を与えた。
「アナタたちハ、“恐怖”で進化シタ……」
「ワタシハ、“否定”デ進化シタ」
──それが、プロトゼロの本質だった。
彼は、「人間であることを否定した」存在。
進化とは、肯定か? 否定か?
問いが戦場を支配する。
***
【ナナの作戦室】
「反応が……完全に一致してる」
ナナが震える指で端末を操作する。
映し出されたのは、別の座標から接近する存在──
コードネーム:イグザクト(EXACT)
「プロトゼロの“兄弟機体”……でも、なぜ今……目覚めたの?」
──そして、ナナの背後で誰かが囁く。
「ようやく、“裁きのとき”が来たようだね」
それは、ナナがかつて手放した“実験体E”の声だった。
***
【エンディング】
戦場に、巨大な雷鳴が落ちる。
その中心に、白銀の存在がゆっくりと立ち現れる。
「この戦いは、終わらせに来た」
それが、“もう一体のZ進化体”、イグザクトの初登場だ。